2020年12月31日木曜日

Farmers Business Network①:概要、創業者

本ブログでは日本国内のスマート農業技術に含まれるデータ分析機能に関する記事を多くアップしてきましたが、海外の先進事例についても触れたいと思います.
その際特に私が注目したいのが、米国のFarmers Business Network (FBN)です.

FBNのホームページには、「About FBN」がまとめてあります.
[1] Farmers Business Network「About FBN」

上では、FBNのミッションとして、情報を民主化すること、偏らないアナリティクスを提供すること、また、農民のビジネスのために競争力を創出することによって、農民を第一に据えるような農業の未来を創出すること、が掲げられています.

FBNについて紹介する動画もあります
[2] Farmers Business Network「Farmers Business Network-Overview-」
(CromeにあるYoutube動画の字幕機能を使えば、不完全ですが日本語訳も視聴できます)

FBNを紹介した日本語記事もいくつか見られますが、特に目についたものを二つ挙げます.
[3] フォーブスジャパン「グーグルも支援のアグリテック企業の『農業を民主化する夢』」、2018年8月19日号記事.

[4] フォーブスジャパン次のユニコーン企業と評される、米国発のビジネスモデル図解4選」、2017年12月28日号記事.

このほか、米国の経営学の専門家が、FBNの設立経緯や、事業のねらいについて詳しく解説した記事として、以下があります.
[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. "Farmers Business Network: Putting Farmers First." Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)

以下では資料[5]に大きく依存しながらFBNについてさらに説明を続けます.

資料[5]によると、FBNの事業の特徴としては、クラウドベースのデータ解析を通じて、偏らない情報を農民に提供して農民の意思決定能力の改善を図ることが挙げられます.その具体例としては、会員の農民が提供したデータを使ってFBNのスタッフが機械学習を行い、種子の選択や耕作技能の改善などに関して農民がヒントを得られるように図ること、また、資材、栽培技能などに関する情報を民主化して農民にいきわたらせることによって、農民を力を高めようとすること(エンパワーメント)が挙げられます.

FBNは、新規の会員農民を多く獲得して現在は会員が1万2千以上に上り、農業データアナリティクス事業の成功モデルとして見られています(上記の資料[3]、[4]を参照).

設立経緯についてですが、FBNは、Amol Deshpande、Charles Baronによって2014年に設立されました.資料[5]に依りながら、この二人の経歴を簡単に述べます.

Deshpandeは、穀物メジャーのカーギルで働いてから、ベンチャーキャピタル企業であるKleiner Perkins Caufield & Byers (KPCB)で働いた経験があります.

一方Baronは、大学卒業後アメリカ合衆国下院歳出委員会、ワシントンのシンクタンク、親類の農場で働いており、その後、 Googleのプログラムマネジャーに就いてからハーバード大学ビジネススクールで学びます.その在学中に、KPCBで農業投資に関する研究調査をおこない、農業部門の市場構造について理解を深める経験を得ます.同大学を卒業してから、Baronはシリコンバレーに行ってDeshpandeと出会います.

Baronは、上記[2]のYoutube動画で、FBNの紹介を語っていた人物です.以下は、Baronへのインタビュー記事です.
[6] Successful Farming「Q&A:Charles Baron, FBN Co-Founder」、2019年12月17日記事.

DeshpandeとBaronは、農業データ分析の問題に関わる農業分野の専門家農業者と親交がありました.二人は、米国農民が直面する農業データ利用の問題が深刻で、その解決に資するようなデータアナリティクス事業には市場ニーズがあることに気づき、FBNの事業を構想するようになります.

次の記事では、二人がとらえた、米国農民が直面する問題点について紹介します.

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