ラベル スマート農業技術の一般論 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル スマート農業技術の一般論 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年3月11日木曜日

Bainbridge (1983)「自動化の皮肉 (Ironies of Automation)」

このブログでも以前から紹介していますが、農作業を自動化(自働化)させることを謳い文句にしたスマート農業技術が近年多く現れるようになりました。

農業に限らず、作業の自動化にともなって人間にどのような影響が及ぶか、人間にどのような対処が求められるか、人間とコンピュータの協働はいかにあるべきか、こうした問題を40年近く前に考えて答えを提示しようとした論文があります。以下の論文です。

Bainbridge, L. (1983) Ironies of Automation, in G. Johannsen, and J.E. Rijnsdorp, eds., Analysis, Design and Evaluation of Man–Machine Systems, Pergamon: 129-135.
https://doi.org/10.1016/B978-0-08-029348-6.50026-9

タイトルが「自動化の皮肉 (Ironies of Automation)」で、生産工程を自動化しても最初に期待していたほど状況は楽になりませんよ、人間の負担はもっと増えるかもしれませんよ、もっとこういう対応も考えておかなければ駄目ですよ、、、と警告を与えるような趣旨の論文です。
Wikipediaにも解説があります。

Bainbridgeは女性の認知心理学者で、上の論文の執筆当時はUniversity College London所属でした。
執筆時期は1980年代前半で、PCがやっと出回り始めた頃です。
当時、農業にICTを活用する発想もほとんど見えてない時代で、この論文では農業での自動化(自働化)について何も述べていません。
それでも、私がこの論文を読んだ感想として、現在農業へのICT・自働化導入を考える際に注意すべき点について多く示唆が得られるように感じられました。
上のWikipedia記事によると、Bainbridge (1983)に関する論文引用件数は次第に増えて膨大にのぼるそうです
そこで、ざっとですがこの論文の趣旨を紹介させていただきたいと思います。

コンピュータなど使ってあるシステムの自動化を進める際、そのシステムに関わる人間にいろいろな役割、仕事が残されます。
Bainbridge (1983)は、このときの人間の役割、仕事について以下のように整理します。
彼女は、システムの自動化を進めるときのオペレータに残される仕事として、
①自動化されたシステムが正しく作動しているかをモニターすること
②そのシステムが正しく作動していないときに事態に対処すること
を挙げます。

Bainbridge (1983)では、まず、①が実際に円滑に行えるか?が考察されます。
①が円滑に行えるためには、システムが正しく作動しているかを人間が適切に判断できることが必要です。これが実際すんなりうまくいくでしょうか?

システムの作動状況について単調なモニタリングが延々続くと、オペレータの注意が散漫になって、システムが正しく作動していないことを見落としやすくなることが考えられます。また、オペレータが自働化されたシステムに長い間(数か月間、数年間)仕事を任せていると、その判断力・勘が鈍ってしまい、システムが正しく作動していないことを見極められなくなる可能性も考えられます。特に、自動化処理を進めるコンピュータの判断が複雑化しているときほど、その判断が適切かを人間が完全に見極めることは困難化します。

こうした懸念への対応策としては、まず、オペレータに状況を記録・報告させて注意を怠らないように促すことが考えられます。しかし、その対応策をとった時でも、記録を取る行為自体が機械的作業になってオペレータが事態をよく観察しないままになる恐れがあります。

このほか、システムが誤作動していることを別の機械で検知してアラームをオペレータに与えることも対応策として考えられます。しかし、異常の検知に手間取って、そのアラームが出てからでは対応が手遅れになることも考えられます。また、異常事態の発生が確定する以前にアラームを出して早めに強く注意を促そうとすると、今度はオペレータがアラームの意味をさほど信用しなくなること(いわゆるオオカミ少年効果)も考えられます。

次に、Bainbridge (1983)では、②が実際に円滑に行えるか?が考察されます。
②に関しては、システムが正しく制御されていないことが判明した場合に、マニュアル制御に切り替えることが一般的でしょうが、その際にマニュアル制御をおこなう技能が担当オペレータに確保されているかどうかが問題になります。
ここでオペレータにとってマニュアル制御の経験がない、あるいは、マニュアル制御の経験はあるものの長い間実際には行っていないとすると、オペレータにとって、制御がうまくいかない原因を適切に把握して回復策を講じることが難しくなりやすいと予想されます。

こうした懸念への対応策としては、起こりうる事態を想定して組み込んだシミュレーション訓練を担当オペレータに受けてもらい、その訓練を通じてオペレータのマニュアル制御での対応能力を高めることが挙げられます。事態が刻一刻と変化する状況を扱えるような動的シミュレーターがこの訓練にはふさわしいと考えられます。
しかし、そのときでも未知、想定外の事態はシミュレーターでは扱いきれないという問題が残ります(10年前に福島第一原子力発電所内でもこうなっていたのかと福島県出身の私は思い返してしまいます)。

以上のような考察から、①、②の対応で起こりうる諸問題の発生・悪化を未然に食い止めようとすると、システムの自動化を進める前よりも高い能力や重い負担が、人間であるオペレータに求められてくるとも考えられます。

もともとは人間を楽にしようとして自動化したのに、結局は自動化で人間の負担を前よりももっと重くしなればならなくなるかもしれない、、、

というのがBainbridge (1983) の「自動化の皮肉」が言わんとするところです。

こうしてオペレータである人間に重い負担を求める形で自動化を進めなければならないとなると、オペレータにはストレスが多くかかり、仕事への意欲が下がってしまうことも懸念されます。

ではこうした事態を避けられるような何か良い解決策はないのでしょうか。

コンピュータが仕事に進出してくるとき人間とコンピュータの間のあるべき関係としては、両者間で分業を進めること、つまり、単純なマニュアル作業はコンピュータに任せて自動化し、人間はより高度な仕事を集中的に担うべきだという主張がしばしば出されます。
しかし、Bainbridge (1983) は、このような分業を考えるだけでは「自動化の皮肉」現象への対応策としては不十分であることを述べます。

Bainbridge (1983) は、「自動化の皮肉」現象への対応策として、人間とコンピュータの役割をそのように分けることではなく、コンピュータが人間の技能形成や就業意欲を支えられるように、両者の役割を適切に統合すること (integration) を提案しています。

Bainbridge (1983) が考えている望ましい人間とコンピュータの統合化の形態は、コンピュータが人間が扱う仕事の種類や仕事の忙しさをリアルタイムで把握して、オペレータの能力の高低や時間ストレス(急を要するか)に適切に応じながら、洗練されたディスプレイの案内表示を通じてオペレータの仕事を支援する、というものです。

Bainbridge (1983)は、航空機の操縦ではパイロットが同時にいくつもの仕事をこなさなければならないとき自動操縦に切り替え、こなすべき仕事が減ったらマニュアル操縦に切り替えるようにしていたことを、この引き合いに出します。彼女は、こうした人間とコンピュータの関係を一般の生産管理システムでも実現できないかと構想していたようです。

生産管理システムでコンピュータがオペレータに指導や指示を出しすぎると、オペレータが生産管理システムに起こりうる諸問題の構造について理解し対処能力を身につける機会が失われてしまいます。このため、Bainbridge (1983)は、人間にとって仕事の負担が重い状況などに限りつつコンピュータが人間を支援するという形で両者を統合できないかと構想していました。 

こうした支援システムの実現のためには、先述のように、コンピュータが人間が扱う仕事の種類や仕事の忙しさをリアルタイムで把握できることが必要になります。このシステムは、論文が書かれた当時はまだ構想できていなかったようで、Bainbridge (1983)の論文では具体的に述べられていません。しかし、現在は多くの管理工程において、タッチパネルほか、アイカメラ、生体センサ、チャットボット、その他AI搭載の機器類を使ってこの支援システムを作ることは可能になってきていると思われます。

このほか、Bainbridge (1983)は、上記の支援システムがうまく機能するためには、コンピュータがどの仕事をいかに扱うことができるのかについて、人間があらかじめよく把握しておくことが必要であることを強調しています。それができていないと、人間がコンピュータを頼りにしすぎて「あてが外れた」となりやすいためです。Bainbridge (1983)が提唱する「統合」ではここが急所になりやすいかもしれません。 

私が乗っている某メーカーの自動車にも、高速道路でハンドル、アクセル操作を支援する機能が備わっています。ボタン一つで支援機能の作動が始まり、運転者がブレーキペダルをちょっとでも踏むと支援機能は解除されるようになっています。また、ハンドル操作が数分間行われていないとハンドル操作を行うように警告音が出るのでハンドルを取り回そうという気にさせられます。以上は、人間に運転への注意を呼び掛けつつ人間とコンピュータの間で運転が円滑に切り替えられるようにと、自動車メーカーなりに配慮した結果なのでしょう。これもBainbridge (1983)が構想した統合化されたシステムに該当してくると思われました。彼女の構想に沿うような支援システムの例は他にもすぐ見つかるでしょうね。

(話が少しそれましたが)まとめますと、Bainbridge (1983)は、「自動化の皮肉」現象を指摘して、その対処として人間の能力、意欲の維持のためにコンピュータを活用して両者の機能を統合することを提案した先駆的論文として、その意義・貢献を高く評価できるでしょう。

論文読後の感想としては、スマート農業技術が導入されると農民が楽になるように喧伝されますが、やはり、Bainbridge (1983) の言う「自動化の皮肉」現象により、スマート農業技術を導入した農民がかえって苦労することにならないのかによく注意する必要があると痛感しました。
また、それを避けられるように農民とコンピュータの役割の統合をいかに進めるべきかについて、スマート農業技術の開発研究、普及に携わる方々がよく注意を払ってほしいと思いました。
そのためにもBainbridge (1983) の論文エッセンスは日本の農学研究者の間にもぜひ知れ渡ってほしいと思います。    

2020年10月29日木曜日

スマート農業を進める際、情報処理のニーズと能力が合っているか?

 スマート農業技術を導入する際、多くの場合では、センサ機器から大量のデータが生成されるので、そのデータの活用をいかに進めるかが生産管理上の課題に浮かび上がりやすくなります。

 経営組織論の文献を調べますと、企業などの経営組織にとって、情報処理に対するニーズと情報処理能力を適合させる必要があることが、ガルブレイス(1973)で論じられています。当然、それらがうまく適合しないことによって、経営組織の業績や成果に対して負の影響が及びやすくなります

 私は、このブログで、施設園芸でのスマート農業の導入事例について紹介する記事をいくつか書きました。このうち、「施設イチゴ栽培での環境モニタリングシステムの導入事例」では、環境モニタリングシステムを採用した農業者が、栽培環境データに関する分析のニーズ、処理能力を上手く適合させていたことを確かめています。

 これに対して、「施設花卉栽培での環境モニタリングシステムの導入事例」では、環境モニタリングシステムを採用した農業者が、温度管理に関するデータ分析ではニーズ、処理能力を適合させられたものの、電照管理やCO2、飽差の管理に関するデータ分析ではそれらを適合させられない状況に置かれてしまいました。

 これらの事例より、栽培環境データ分析に関する農業者のニーズと処理能力は、管理対象項目(温度,電照、CO2,飽差等)や、統計解析に関する彼らの学習経験や、既往の栽培管理方針等に左右されてそれぞれ決まり、両者が適合しない状況が生じ得ることが確かめられます。また、後者の事例のようにその不適合によって環境モニタリングシステムの利用効果に対する農業者の評価が低められる場合があることが示唆されます。

 こうした分析結果より、施設園芸での環境モニタリングシステムの普及を図る改良普及機関にとっては、生産者への聞き取りを通じて、管理対象項目別に、様々なデータ分析に関するニーズ、処理能力を生産者がどのように備えているか、両者をいかに適合させられるかについて注意深く検討する必要があると考えられます。

引用文献:
ジョン・ケネス・ガルブレイス(1973)『横断組織の設計』(梅津祐良訳)ダイヤモンド社.

スマート農業技術に含まれるデータ分析機能 

 農業者がスマート農業技術を使おうとする際に、その機器類から収集されるデータをどう分析して利用したいかが課題になります。そのデータの分析機能をよく理解することが、スマート農業技術の採用効果を高める上で重要になると考えられます。

 ただし、スマート農業技術のデータ分析機能の内容は、専門知識がないと複雑でとらえにくくなってしまうでしょう。そこで、スマート農業技術のデータ分析機能をわかりやすくとらえるようにすることも、スマート農業技術に含まれるデータ分析機能の理解を深める上でとても重要になると考えられます。

 以下の論文、Nolet(2018)は、スマート農業技術の発展がどのように進むかを考察する際に、スマート農業技術に備わるデータ分析機能の整理を行いました。

 Nolet, S. (2018) Seeds of Success: Advancing Digital Agriculture from Point Solutions to Platform, The United States Studies Center at the University of Sidney 

 この論文では、スマート農業技術に備わるデータ分析機能は、以下の四つの段階に分かれて、1から4へと向かって発展することを主張しました

  1. 記述的・診断的分析descriptive/diagnostic analytics):農業生産の履歴データを管理して,過去に何が起こっていたかを把握する分析を意味する。
  2. リアルタイム分析real-time analytics):農業生産で現在何が起こっているかをリアルタイムに把握する分析を意味する。
  3. 予測的分析predictive analytics):農業生産に関する過去や現在のデータを用いて,将来の農業生産に関して予測を行う分析を意味する。
  4. 処方的分析prescriptive analytics):過去や現在の農業生産に関するデータを用いて今後農業者が何をすべきかを示す分析を意味する。
Nolet(2018)の7ページに出てくる図表を、和訳すると以下のようになります。レベルごとにその目的、具体例が示されています。

  
 記述的・診断的分析の段階であれば、機器類からデータは収集されますが、それを使ってどうしたらいいか、今後どうなるかなどを知ることは利用者に任されます。リアルタイム分析の段階に入ると、データを収集しつつ、そのデータの内容が異常事態などに該当していないかなどの検知も機器類によって行われるようになりますので、一歩進んだことになります。さらに、予測的分析の段階に入れば、収集したデータを集計分析するなどして今後何が起こりうるかを知らせてくれる機能も付くことになりますので、もう一歩進んだことになります。最後の処方的分析の段階では、機器サービスから「今後の事態予測を踏まえて何をすべきか」が示されるわけですから、さらにもう一歩進んだことになります。
 
 スマート農業にも課題(ニーズ)に応じて様々な種類があるということは、別の記事「スマート農業技術の分類と選択」で述べています。ここでは特に、スマート農業技術にどのようなデータ分析機能が含まれているかに着目しても、その整理が可能であることを強調したいです。
 
 農業者がスマート農業技術を使おうとする際、多くの場合でその機器類から収集されるデータをどう利用したいかも課題になりますので、まずその技術に備わるデータ分析機能は、上の区分のどれに該当するのかを慎重に見極めておくことが必要になると考えられます。

 Nolet(2018)では、上のデータ分析機能が様々なスマート農業技術にどのように該当するかを詳しく示すことはしていません。私の場合、香川県の施設園芸でのスマート農業技術の普及に関心がありましたので、施設園芸向けのスマート農業技術に上の整理区分がどのように該当するかを確かめたいと思いました。ここでは、農林水産省が示した、国内の施設園芸向けスマート農業技術のカタログ:
に対して、上の整理区分を当てはめてみたいと思います。

このカタログをよく読んでみますと、国内の施設園芸向けスマート農業技術のデータ分析機能が以下のように整理できると考えられます。

①記述的・診断的分析:栽培施設に設置された各種センサから栽培環境のデータを収集した上で、その保存データを端末機器で閲覧して栽培環境の履歴を確認したり、栽培環境が過去に作物生育に与えた影響について簡単な検討を行ったりする。該当例(この分析機能を備えた機器の例)としては、ウォーターセル株式会社の「アグリノート」がある。

②リアルタイム分析:栽培環境の現状を生産者が端末機器で随時確認できる。その計測値が事前に設定した範囲から逸脱したとき、生産者が警報通知を受け取れる場合もある。該当例には、株式会社四国総研の「ハッピィマインダー」がある。

③予測的分析:収集された栽培環境データ、生産管理に関するデータ、作物生育状況のデータ等を統計解析することによって、生産者が収穫適期や収量、秀品率等を予測できる。該当例としては、㈱PSソリューションズの「e-kakashi」がある。

④処方的分析:上と同様のデータ解析や最適化問題の分析によって、栽培管理形態に関する処方(何をすべきか)を導出し、場合によってはその実行を機械使用で自動化する。該当例としては、㈱ルートレック・ネットワークの「ゼロアグリ」がある。

国内で提供される施設園芸向けスマート農業技術の場合、2010年代前半から①、②の分析機能のみを備えた機器の種類が大きく増えて、2010年代後半より③、④の分析機能を備えた機器が少しずつ現れています。一般に、①、②のデータ分析に比べて③、④のデータ分析では、その遂行のために、栽培環境・生産管理に関してより豊富なデータ収集や、より高度なデータ処理能力・統計解析能力が求められてきますから、③、④の分析機能を提供できる機器の開発や普及は、①、②よりも遅れてくるわけです。

施設園芸をおこなう農業者がスマート農業技術を使おうとする際、技術に備わるデータ分析機能が上の区分のどれに該当するのか、その機能を使ってどのようなデータ活用を進めたいかを慎重に見極めておくことをお勧めしたいです。

2020年10月25日日曜日

スマート農業技術の分類と選択

 政府は、「スマート農業」を、先端技術と農業技術を融合させる技術として位置づけています。ここでの先端技術とは、IoT、ロボット、ビッグデータ、AIに代表される技術です。このとらえ方について詳しくは、以下の資料の6ページ目に説明されています。
 
 しかし、これだけではスマート農業の具体イメージがややわかりにくいかと思われます。松下秀介氏「経営情報利活用とICT技術」(農業情報学会編『新スマート農業』農林統計出版、2019年、pp. 212-213に掲載)の説明によると、農業経営でのニーズに応じて、スマート農業の技術は以下の四つのタイプに分類が可能です。

1.「農業経営で省力化、大規模化を進めたい」というニーズに対応した技術
 この例としては、以下が挙げられます。
・モニタリング:センサやカメラによる生産状況の監視
・マッピング:端末画面の地図上で栽培環境や生産状況を表示して生産管理に利用
・クラウドシステム:センサや端末から収集されるデータをクラウド上で管理
・生産管理 IT システム:端末・アプリで比較的容易に生産管理を進められるシステム

2.「農作業の軽労化、快適化を進めたい」というニーズに対応した技術
 この例としては、以下が挙げられます。
・GPSガイダンス:GPS から農機 操作に関して自動的にガイダンスが行われる
・自動走行:農機が自動で動く(GPS、AIを活用)
・収量計測コンバイン:コンバインを走行させると同時に収量を自動計測
・ロボット代替:人力に替わってロボットが農作業

3.「農産物生産の安定化・高品質化を進めたい」というニーズに対応した技術
 この例としては、以下が挙げられます。
・気象予測
・病害虫診断
・生育診断
・センシング
・精密化
これらの導入によって栽培管理の精密化、高位平準化、最適化が期待されます。

4.「農業技術に関する知の継承・保護を進めたい」というニーズに対応した技術
 この例としては、以下が挙げられます。
・匠(たくみ)の技を形式知化(ここで、「形式知化」とは、言葉や構造で説明できるようにすることを意味します)、
・AI(人工知能)による学習支援
これらの導入によって効率的に担い手が育成されることが期待されます。

 さらに技術の細かい種類ごとに、どのような性能があり、農業者のどのようなニーズを満たせるのか、などを知りたい場合は、農林水産省HP内で紹介されている以下のカタログが参考になります。
 
 このカタログをざっと見渡していきますと、この分野にあまり詳しくない人から見たら、スマート農業の関連機材・サービスの種類が見分けられないほど多種多様にあることを思い知らされ、困惑するのではないかと予想されます。

 現時点ではスマート農業についてよく知らないが、将来的に使いこなせるようになれたらという方は、まずスマート農業の特徴や仕組みを広く浅くでもとりあえず勉強しておくべきでしょう。こうした勉強に適したスマート農業入門書とも言えるような書籍も最近出回り始めましたので読むことをお勧めしたいです。ただし、そうした書籍の中には、ITベンダー、メーカーの言い分、宣伝文句をそのまま載せて、農業者が本当に使いこなしやすく感じるかどうか、農業者にとって費用対効果で見合うのかなどを詳しく追究しない記述も散見されますので、読み手としては内容が信じるに値するかについて予断を持たず慎重に判断すべきと思います。
 その後、自分のニーズに合いそうな機材サービスの候補を選び出し、そこからさらに機材サービスの性能や価格を見渡して、自分のニーズに合致しそうか、自分が使いこなせるか、設備導入費、ランニングコストが高くつきすぎないか、などを見極める必要が出てくるかと思います。
 ちなみに、上で挙げた農林水産省HPにあるカタログの説明には、

「※スマート農業技術カタログは、現在開発・販売されているスマート農業技術について、農業現場に広く知っていただくことを目的としたものであり、技術の効果等を農林水産省が確認・認定しているものではありません。各技術の詳細については、各技術の「問合せ先」にお願いします。」

と書いてあります。農林水産省にしてもカタログの内容の妥当性を保証しているわけではなく、農業者に対してその妥当性を能動的に(自ら動いて)判断するように促す立場です。
 こうした事情より、スマート農業について知らない人にとってそれを理解して使いこなせるまでの道のりが長く感じられるかもしれません。この過程を突破することを難しく感じる農業者が多いとすると、農業者の間でのスマート農業に対するイメージ・親近感の改善、スマート農業の普及にも支障をきたす恐れが懸念されてしまいます。
 
 農業者としては自分一人だけでスマート農業技術の導入を進めるのは心配でしょうし、行政の改良普及機関、営農指導員などにも相談するほうが無難かと思います。ただし、その際にも農業者自身で上記のようにある程度勉強して予備知識を蓄えておかないと、スマート農業技術に関する専門的な説明や記述が理解できなくて、指導機関との間でうまく話を進められない恐れが高いと思われます。  

卒業生の課題研究「大規模酪農経営における働き方改革に関する考察」 

 当研究室における 本年3月の 卒業生、中村将之さんは、「 大規模酪農経営における働き方改革に関する考察」をテーマに卒論研究(課題研究)を進めました。   その卒論研究の要旨 について以下に抜粋して紹介します。    要旨: 近年の日本では農業における若い世代の流入不足と定着率の...