2021年1月28日木曜日

学生調査実習⑤:ふりかえり(キウイフルーツの生産・流通のDXに関して)

  1月27日の事後演習より、Orchard & Technologyの末澤さんからの講演内容に関するふりかえりを進めます.

 事後演習で学生から挙がった反応を見ますと、「ゼスプリのキウイのCMは知っていた.それと絡めて今回改めてNZのの日本市場攻略について驚いた」という感想が挙がっていました.NZに留学した経験のある学生は、NZ国民がキウイをよく食べるという印象を持っていたそうで、その背景(NZの生産能力の高さ)を思い知ったということでした.

 私としては、まず、キウイ市場におけるNZ産と国産の関係が気になりました.

 日園連から出版されている雑誌『果実日本』ではこれまでキウイに関する特集号が何度か組まれたことがあります(2006年12月号、2014年12月号、2019年7月号).80年代からNZ産キウイが日本に進出して日本でキウイの需要が開拓されるようになったこと、北半球と南半球の違いで日本の冬・春はNZ産の端境期にあたり、国産がその時期に需要拡大の追い風に乗って供給を増やせるようになったこと、がそこで指摘されています.こうした局面を見るとNZ産は国産と補完的のようでもあります.

 他方で、NZの収穫時期はその年の気候によって変化があり、国産の出荷時期に入ってもNZ産が遅くまで輸出され、国産がそれに対抗できない場合もあることが指摘されています.この一面を見れば、NZ産は国産と代替的となります.

 どうやらNZ産と国産のキウイには、需要拡大のような長期的側面を見れば補完的だが、その年の気候変動の影響のような短期的側面を見れば代替的になりうる、という一見変わった関係があるようです.この状況で日本はどのようなキウイ戦略を取るべきかが、末澤さんの講演に直結するテーマになりますが、これを経済学的に分析できたらと思いました.

 このほか私が気になったのは、キウイ生産・流通のDXに伴う、生産管理の権限配分の変化についてです.

 末澤さんの構想する事業では、キウイ生産・流通のDXを促進する観点から、キウイの生産管理を、気象・栽培情報の収集・分析を通じて従来のキウイ生産よりももっと集権的に進めることを意図している、と私には解釈されました.これは、下記の記事にある「アグリコンシェルジュサービス」から指示が次々に出されて、統一ブランドで出荷する生産者に、そうした指示に対応する責務のようなものが課されると予想されるからです.
 ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号

 組織の意思決定権限を集権的にするか分権的にするかというテーマは、組織の経済学では重要なテーマで、多くの論説がこれまで著されています.こうした論説を、末澤さんが構想する事業状況にあてはめた場合に言えることを考えてみます.

 統一ブランドの形成に向けて生産者が組織を作り、その組織マネージャーがそのメンバーたる多数の生産者に多く指示を出す場合を考えると、マネージャー自身が生産者の栽培環境の変化を逐一把握できなければ、生産者の環境に対応した指示を出すことに失敗してコストが発生します(不適応コスト).

 このほか、マネージャーが生産者の栽培環境を正しく把握することができたとしても、生産者にその指示がうまく伝わらないために、生産者がその指示を実行し損ねて、例えば、ブランド価値の毀損などの形でコストを発生させることが考えられます(調整失敗コスト).これがよく起こるかどうかは、マネージャーと生産者の間の意思伝達の費用、正確さなどに依存します.

 組織の経済学の分析結果に従えば、こうした状況で大きな不適応コストが発生するときほど、マネージャーが生産管理をコントロールするよりも、現場の生産者に管理を任せる方が効率的になりやすいことが指摘できます.これは、現場をよく知らない人間が管理することのリスク、コストがより強く感じられてくるからです.

 また、マネージャーと生産者の間の意思伝達の費用が高くつき、意思伝達の正確さが確保されにくいときほど、上記の調整失敗コストの発生も増えてくるため、マネージャーは生産者に生産管理の権限を任せて、マネージャーからの指示、マネージャー・生産者間の意思伝達自体を少なく抑えてしまう方が効率的になりやすい、ということも組織の経済学の分析結果から指摘できます.

※ここでいう組織の経済学の文献とは、具体的には以下です.
Dessein, W., and T. Santos (2006) "Adaptive Organizations", Journal of Political Economy 114: pp. 956-995. 

Bolton, P., and M. Dewatripont (2013) "Authority in Organizations: A Survey", in: R. Gibbons, and J. Roberts eds., Handbook of Organizational Economics, Princeton University Press: pp. 342-372.  

 もしもNZのキウイのように栽培管理の専門家(コンサルタント)が多く存在して、キウイ生産組織のマネージャーがその専門家に多数の栽培現場の確認、多数の生産者との調整にあたらせることができるのならば、上記のような不適応コスト、調整失敗コストは少なく抑えることが可能で、上記の理論予測の逆の状況、つまり、生産者に代わってマネージャーが生産管理をコントロールする状況が選ばれて成立しやすいと予想されます.
 
 日本で農業生産・流通のDXにおいてICTを駆使したデータ蓄積・分析能力が進展するとしても、やはりこうした専門家の存在が果たしうる役割は大きく残ると考えられます.以前にこのブログで紹介しましたが、カルビーでは、フィールドマンが栽培現場に送られ、ICTも同時に駆使して馬鈴薯の栽培管理をコントロールする体制が採られていました.
カルビー「農業の持続可能性向上」

 これをモデルにして、キウイの場合でも、専門的知見を備えた人とICTを適切に組み合わせて栽培管理をコントロールできる体制が望ましいのではないかと考えられます.末澤さんの構想される事業でもこうした点が意識されると、その実現可能性はより高まるのではないかと思われました.

学生調査実習④:ふりかえり(熟練農業者の技能継承サービスに関して)

 生産コース実験のうち1月27日の事後演習では、1月14日の講演内容を踏まえた事後演習をおこないました.

 まず、キーウェアソリューションズによる熟練農業者の技能継承サービスについて、学生から挙がった感想を紹介しますと、VRによる剪定の習得システムを評価する声が多くあがりました.「果樹の剪定作業をしたことがあるが、切ってはいけない枝を剪定してめちゃくちゃ怒られたことがある.VRでの剪定学習があったら助かる」「農業の現場でVRをもっと導入したらいい」という意見が出ていました.

 また、佐賀のトレーニングファームも評価が高く、佐賀のトレーニングファームを訪問したいという意見も出ていました.トレーニングファームで基礎から教えてもらえるというのが若者目線で見ても頼もしく感じられるようです.

 学生にはキーウェアソリューションズの取り組みについて全般的に評価が高かったことが伺えました.

 私の方で、キーウェアソリューションズのリンゴVR剪定について検索してみたところ、以下の記事にあたりました.

東奥日報「リンゴ産業最前線 スマート農業に活路」2020年3月17日号
(記事の途中からは会員登録した人のみに公開)

 この記事には、若手でリンゴ栽培に研究熱心な森⼭さんという方が、リンゴのVR剪定習得システムについて、「時間も空間も⾶び越えている」と⾆を巻いたとのエピソードが載っています.昨年2⽉に弘前市で開かれた「りんご産業イノベーションセミナー」でリンゴのVR剪定習得システムが公開され、⼤きな反響を呼んだともあります.弘前市役所のリンゴ課の担当者からも評価が高いそうです.

 香川県でも果樹の適地があり、剪定技術が重要になりますので、私としても、香川に適した剪定技術の習得システムは導入できないかをよく検討する必要があると感じました.地元の自治体やJAの職員の方々にも検討を呼びかけてみたいと思いました. 

 このほか、佐賀のトレーニングファームに関する記事を検索したところ、以下にあたりました.

第67回佐賀県農政審議会(2020年12月24日開催)会議録

この中に出ている委員発言を引用します.

トレーニングファームについては、きゅうりの1期生が就農してほぼ1年経つが、1 年目から県内トップクラスの収量をあげた者もいて非常に驚いている。 トレーニングファームを考えたとき、我々は、苗屋さんだと思う。今後、苗を育て仕上げていく中で、どのようにサポートしていくかが今からの大きな課題だと思う。 卒業生達は1億円、2億円を売り上げるという夢を持って頑張っている。それを達成 するには、また新たなサポートが必要だと思うので考慮いただきたい。 

 太字は私(武藤)が付けました.就農1年目で県内トップクラスの収量という成果には、読んだ私もとても驚かされました.

 前に紹介しました下記の記事によりますと、トレーニングファームでの研修生は、1期生から4期生までで16名とのことです.
マイナビ農業「【佐賀】 農業のイメージが変わる!? 肥沃な土壌&人の温かみが自慢。模擬経営や手厚い補助制度で就農を支援!」2021年1月14日号

 トレーニングファームの研修システムをかなり充実させた分だけ、少数精鋭型の育成にならざるを得なかったのかとも思います.それでも、トレーニングファームではe-learningの教材が多いので、教材を研修生に提供する際の限界費用は比較的低く抑えられそうです.追加の研修・育成費用をある程度少なく抑えながら研修生、新規就農者を増やしていくという道筋が十分考えられそうです.

 香川県では施設園芸の衰退傾向が顕著になっていますので、やはり自治体やJAがこうしたトレーニングファームの導入についても検討してみてはどうかと強く感じました.

 以上のような最先端の熟練技能者の技能継承サービスは、社会的な反響もあって、農業関係者からのニーズも生まれそうです.今後その社会実装も期待できると考えてよいのではないでしょうか.

学生調査実習③:キウイフルーツ生産・流通のDX(Orchard & Technology様による)

 1月14日の講演内容に関する説明の続きです.

 1月14日の調査実習の後半では、Orchard & Technologyの末澤克彦さんから、キウイフルーツ生産・流通で日本が置かれた現状、そこをDX(デジタルトランスフォーメーション)でどのように改善しうるかについて、講演をいただきました.Orchard & Technologyという会社の概要については、そのHPをご覧いただければと思います.
末澤さんが代表取締役を務めている、キウイフルーツ生産・流通のコンサルティング等に係る会社です.

 前に紹介した以下の記事で、末澤さんがキウイの現状を述べていましたが、それについて今回はさらに詳しいお話を聞くことができました.
ITメディア「(前編)キウイの収穫量・時期、AIがピタリと当てます──日本の農業をデータで改革、ある農家の野望」2019年10月16日号
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news001.html

 末澤さんのお話によると、近年キウイの国内消費量が大きく伸びる一方で、国産キウイ産地はその波に乗れず、NZ産が市場を席捲しています(春から秋にかけてNZ産が日本のキウイ市場の96~98%のシェア、2018年のNZ産キウイ輸入量は約10万トン).
 また、労働時間当たりキウイ生産量で見てNZは日本の約5倍、栽培面積当たりキウイ生産量で見てNZは日本の約2.7倍という格差がみられます.

 末澤さんは、NZがこうした優位な状況を確立した理由として以下を挙げられました.

 ①NZではキウイ栽培技術の標準化、客観化が進んでいる.対照的に日本では果樹の栽培技術の模範としては、他人が真似しにくいような高い難易度の技術がイメージされやすい.

 ②NZのキウイ生産ではコントラクター企業が広く展開している.そこでは高品質キウイ生産に向けたモニタリング、栽培管理の改善指導を行う企業も存在して、その指導サービスが普及している.対照的に日本は家族経営の枠内(他人をできるだけ雇わない)でキウイ生産を行う. 

 ③NZではキウイ栽培が適地で行われる.対照的に日本ではミカン栽培の不適地で消極的にキウイを栽培する. 

 ④NZではキウイの一元的マーケティングが進み(Zespriへの統一)、キウイのコモディティ化を防ぐガバナンスが確立している.対照的に日本では県単位、産地ごとに小規模ブランドが乱立して、産地がお互いに疲弊しかねない市場構造になっている.

 こうした状況を踏まえ、日本のキウイ生産・流通がNZにもっと対抗できるためには、選果情報等の管理や連携が必要で、そこでキウイ生産でのDX化が求められてくると、末澤さんは考えているそうです.

 末澤さんとしては、Orchard & Technologyの事業として、オリジナルの優良キウイ品種の栽培権利を農家に貸与して、それを用いる農家に対してはオンラインで栽培指導をおこなうことを構想されています.この指導は、下記の記事にありますように、機械学習を用いた「開花日、肥大、収量、品質、収穫時期」等に関する予測サービスや、栽培環境データの閲覧・分析サービスを農家に提供するという形をとるものです.このサービスシステムの構築では、キーウェアソリューションズの久保さんが大きく貢献されたそうです.

ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号

 Orchard & Technologyとしては、農家の販売収入からロイヤリティを払ってもらって、事業を成立させたいとのことでした.すでにこの事業が動き出しているそうです.

学生調査実習②:熟練農業者の技能継承サービス(キーウェアソリューションズ様による)

 1月14日の調査実習での講演内容について本記事②と次の記事③で説明します.

 まず調査実習の前半では、キーウェアソリューションズの久保さん、山根さんから、キーウェアソリューションズが取り組む農業分野のサービスについて説明をいただきました.その内容を要約して述べます.

 近年農業従事者の高齢化、農業後継者の不足から、熟練農業者の技能がどんどん失われそうな状況にあります.熟練農業者の技は言葉で言い表しにくく、どこが作業のポイントなのか農業の初心者からは見えにくくなっていることで、熟練農業者の技能が伝わりにくくなっていると考えられます.その改善に向けて、キーウェアソリューションズでは熟練農業者の技能継承を支援するサービスを展開しているそうです.キーウェアソリューションズのHPにそのサービスの概要が載っています.

 最近でのその具体的な取り組み事例としては以下があります.

 取り組み事例1:VRによるリンゴ剪定技術継承

 青森県弘前市のリンゴ栽培では、高品質のりんごの安定的生産のため、高精度の剪定技術の習得を重視してきました.しかし、剪定を圃場で実際におこなって学習する機会が限られ、また、ベテランの農業者が剪定作業をしている様子が新規就農者にはとらえにくくなるという問題がありました.そこで、キーウェアソリューションズは、リンゴ剪定技術を新規就農者がVR(ヴァーチャルリアリティ)で学習するシステムを構築したとのことです.

 具体的には、リンゴの樹・枝の3Dデータを作成して、そのデータをヘッドマウントディスプレイから視聴できるようにして剪定を学習するというシステムだそうです.これについて以下のような解説記事があります.

青森県「青森りんご剪定技術を「仮想現実の中に」 700万本記憶する手法の確立」https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/attach/pdf/dream4-5.pdf

慶応義塾大学社会・地域連携室「VR技術によるりんご剪定学習支援システムによる地域産業の振興と人材育成」

 このVRの学習システムに入った人は、仮想のリンゴ畑を見て回り剪定のシミュレーションを体験できます.VRでリンゴの樹を上から見下ろせる点などが剪定の学習には有用と評価されているそうです.

 取り組み事例2:匠の技伝承システムによるキュウリ栽培技術継承

 佐賀県では最近、トレーニングファームが設置され、研修生が自分でキュウリなどを育てながら2年間で栽培、経営のノウハウを習得するというシステムが導入されています.この紹介記事として以下があります.

マイナビ農業「【佐賀】 農業のイメージが変わる!? 肥沃な土壌&人の温かみが自慢。模擬経営や手厚い補助制度で就農を支援!」2021年1月14日号
https://agri.mynavi.jp/2020_09_30_132699/

この記事の中に、佐賀県トレーニングファームの研修システムについて以下のような説明があります.
研修では、キュウリ栽培の基礎から段取り、栽培中の観察、天候に応じた複合環境制御装置の操作方法などを習得。これまで経験や勘に頼っていた栽培管理をデータ化して適性な対応を行なうことで、収量・売上金額ともに部会の平均値を上回るなど、研修生にとって大きな自信となる結果が得られています。
 こうした研修をおこなうには充実した学びの体制づくりが必要ですが、そこにキーウェアソリューションズが大きく関わっています.トレーニングファームに入った就農希望者は、栽培に関する基本的な考えと手法の理解(マニュアル)を学ぶだけでなく、熟練農業者と比べて自分が状況判断力でどこが劣っているかを厳しくチェックしてもらい、そこをどのように克服するかについても綿密な指導を受けることができます.キーウェアソリューションズでは、熟練農業者が重視する状況判断の対象を抽出する、学習コンテンツ用データを収集・整理する、基本知識テスト・問題解説の教材を作成するといった面で、このトレーニングファームの研修システムを支えているとのことです.

 上記のようにICTを駆使して熟練農業者の技能継承サービスを展開するという考えは、以下の記事や著書でも述べられています.その社会実装でキーウェアソリューションズが活躍されてきたということが今回の講演でよく伺えました.

島津秀雄氏「農業分野におけるICT活用の可能性」『学術の動向』2016年5月号

神成淳司氏「農業ICTの最新動向」『情報処理』58(9),pp. 818-822, 2017年.
https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=182917&file_id=1&file_no=1

神成淳司氏『ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業』日経BPP社,2017年.
https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/258870/
(ただし、ここでのAIは、Artificial Inteligenceの意味でなく、Agri-Infoscienceの略)

学生調査実習①:概要

 香川大学農学部では、学生は2年次後期から3年次前期まで5つあるコースのどれかに分属する体制を取っています.5つあるコースのうち、生物生産科学コースには、作物、畜産、農業気象、農業経済、果樹、花卉、蔬菜などの研究室が集まっています.2020年度後期は生物生産科学コースに学生37名が分属中です.

 学生が生物生産科学コースに分属すると、平日の午後3限目、4限目の大半は、生物生産科学コース向けの実験(略称:生産コース実験)と農場実習に充てられることになります.

 今年度の後期では、この生産コース実験の枠のうち3回分が、私の担当(農業経済分野)の調査実習に振り当てられました.対象学生は2年次後半です.

 以前、私は香川大学全学共通科目で「スマート農業の可能性を考える」という講義を担当した際、授業の教材を調べているうちに以下の文献にあたりました.

ITメディア「(前編)キウイの収穫量・時期、AIがピタリと当てます──日本の農業をデータで改革、ある農家の野望」2019年10月16日号  https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news001.html

ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号

 今思い起こすとなんとも刺激的なタイトルが並んでいます.記事に登場する末澤克彦さんは香川県在住ですし、これはいったいどのような取り組みなのか?と私は興味を持ってきました.学生も関心を持ってくれるだろうと期待して、今回の調査実習では、末澤克彦さんに電話で調査実習へのご協力を依頼しました.するとご快諾をいただき、上の記事に登場しているキーウェアソリューションズ株式会社の久保康太郎さんと一緒に、生産コース実験の調査実習の枠内で、取り組み内容について講演して頂ける運びとなりました.この度はお二人のご厚意に心より感謝したいと思います.

 この講演が1月14日に行われましたが、その前(昨年12月16日)に準備として「事前演習」を行いました.また、講演の実施後の1月27日に「事後演習」として、講演内容の振り返りや教室での集団討論を行いました.「事前演習」と「事後演習」には末澤さん、久保さんは参加されず、私と学生とのやり取りで進められました.

 「事前演習」では、上記の記事のおおよその内容、そのほか、機械学習とはどのようなものか、MicrosoftのAzureでは機械学習についてどのように使いやすいサービスが提供されているか等を私から概略的に学生に解説しました.機械学習の概要については、総務省が作成した以下の教材を用いて説明しました.

総務省「ICTスキル総合習得教材、人工知能と機械学習」

 この事前演習で学生から質問や関心事項を出してもらい、それを取りまとめて末澤さん、久保さんにお伝えして、本番(1月14日)の講演内容について調整していただくという流れを取りました.

 1月14日の調査実習では、大学入学共通テストの実施準備のため香川大学で対面授業に制限がかかったので、学生は調査実習にオンラインで参加することを余儀なくされました.この日、末澤さんは香川大学農学部に来訪されて私の研究室から学生向けのオンライン講演を行いました.キーウェアソリューションズの久保さんは東京よりオンラインで学生向けにお話していただきました.

 コロナ禍以前、調査実習というと、私は農業の現場に携わる方から対面で聞き取りを行うことを当然視していました.コロナ禍がなかったら、今回のように、東京在住のIT専門家にオンラインで学生向けに講演していただくことなど、まったく思いもよりませんでした.

卒業生の課題研究「大規模酪農経営における働き方改革に関する考察」 

 当研究室における 本年3月の 卒業生、中村将之さんは、「 大規模酪農経営における働き方改革に関する考察」をテーマに卒論研究(課題研究)を進めました。   その卒論研究の要旨 について以下に抜粋して紹介します。    要旨: 近年の日本では農業における若い世代の流入不足と定着率の...