tag:blogger.com,1999:blog-71213414391245746502024-03-13T00:41:44.759-07:00香川大学農学部武藤研究室(農業経済学研究室)農業経済学に関する研究、教育、社会活動について発信・交流を目指しています武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.comBlogger29125tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-45274116311999698692021-05-21T00:52:00.000-07:002021-05-21T00:52:03.673-07:00卒業生の課題研究「大規模酪農経営における働き方改革に関する考察」 <p style="text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;"> 当研究室における</span><span style="text-indent: 14.6667px;">本年3月の</span><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;">卒業生、中村将之さんは、「</span><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;">大規模酪農経営における働き方改革に関する考察」をテーマに卒論研究(課題研究)を進めました。</span></p><p style="text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;"> <b>その卒論研究の要旨</b>について以下に抜粋して紹介します。 </span></p><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;"> <b>要旨:</b>近年の日本では農業における若い世代の流入不足と定着率の低さが課題になっています。</span><span lang="EN-US" style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;">2019</span><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;">年に働き方改革法案が施行されましたが、農業においては生物を相手にするという性質上、全ての農業経営者がこれに取り組めているわけではありません。この現状は、これからの担い手となりえる新規就農者を受け入れ育てていく上で懸念すべき事態だと思われます。</span><div><div style="text-indent: 14.6667px;"><br /></div><span style="font-family: inherit; text-indent: 11pt;"> 本研究では、四国地方にある大規模酪農経営体(仮称:A酪農)において、経営者の立場から働き方改革を進める際にどのような問題に直面しやすいか、また、従業員から見て就業環境がどのように捉えられ、その評価が彼らの就業意欲にどのように影響を与えているかについて分析を行います。そして、これらの分析を通して、A酪農での働き方改革の進め方について考察します。</span></div><div><div style="text-indent: 14.6667px;"><br /></div><span style="font-family: inherit;"> 第1</span><span style="font-family: inherit;">章では、A酪農の経営概況について説明します。A酪農では経営規模拡大を積極的に進め、昨年調査時点で従業員や実習生の採用が大規模に上っていることなどを</span><span style="font-family: inherit;">説明します</span><span style="font-family: inherit;">。</span></div><div><span style="font-family: inherit;"><br /></span></div><div><span style="font-family: inherit;"> 第2章では、A酪農の現場責任者から見た、従業員管理の状況に関する聞き取り結果について述べます。A酪農では、規模拡大を積極的に進めるに際して、後継者となりうる若い人たちが入社できる環境づくりを重視してきました。具体的には休日</span><span style="font-family: inherit;">を徐々に増やすなどです。一方、</span>A酪農では、<span style="font-family: inherit;">下の世代の教育の不十分さと職場内のコミュニケーションの不足になお悩まされています。経営に関する情報や指示が上から下に人を介すごとに、伝言ゲームのように肝心な部分が抜け落ちることが散見されているそうです。</span></div><div><br /><span style="font-family: inherit;"> 第3章では、A酪農の従業員に対して様々な就業条件・環境についてアンケート調査を行った結果から、統計解析を通じて導かれる結果について述べます。A酪農の従業員に対して就業満足度や就業環境について</span><span lang="EN-US" style="font-family: inherit;">6</span><span style="font-family: inherit;">段階で評価してもらい、その回答結果を得ました(有効回答22件)。その結果を用いて、A酪農の従業員の就業満足度や長期就業意欲に対して影響する要因について線形回帰分析と、順序ロジット分析を行いました。この分析結果より、A酪農では、従業員どうしで意思疎通がよくなされていると考える従業員ほど、また、休日が適度に確保されている従業員ほど、さらに、経営方針が従業員の間に理解され徹底されていると考える従業員ほど、A酪農での就業に対する満足度を高めて、A酪農に長く勤めたいとより強く考える傾向があることが確かめられました。言い換えると、A酪農の従業員の間には</span></div><div><span style="font-family: inherit;"> <b>従業員間の意思疎通、休日確保、経営方針の確認・徹底に対する高い評価→就業満足度、長期就業意欲の改善</b></span></div><div>という因果関係があることが示唆されています。有効回答が22件でしたので、この結果が頑健かは議論の余地がありますが、決定係数で見た説明力は高くなっていました。<br /><div style="text-align: left; text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit;"> </span></div><div style="text-align: left; text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit;"><span> 第4章では、A酪農で働き方改革をどのように進めるべきかについて考察します。上記統計解析の結果より、A酪農で従業員の満足度や就業意欲を高められるように働き方改革を進めていく上で、(1)従業員間の連絡・情報共有、(2)休日確保の体制、(3)経営方針の徹底と確認、が特に重視されるべきだと考えられます。<br /></span><span> (1)</span>従業員間の連絡・情報共有に関する<span>具体策としては、若い世代が上の世代に相談・質問しやすい環境を作り、これまでに上がった質問事項は</span><span lang="EN-US">SNS</span><span>などでリスト化することが挙げられます。</span></span></div><div style="text-align: left; text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit;"><span> (2)</span>休日確保の体制に関する<span>具体策としては、外国人実習生をより多く導入し仕事の分担を進めることで休日を確保しやすくすることが挙げられます。</span></span></div><div style="text-align: left; text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit;"><span> 最後に、(3)</span>経営方針の徹底と確認に関する<span>具体策としては、始業時に全員で業務計画を確認したり、経営方針を全社員が共有する会合(社長との座談会を含む)を定期的に開いたりすることが挙げられます。</span></span></div><div style="text-align: left; text-indent: 0px;"><span style="font-family: inherit;"> 以上のように、大規模酪農経営における従業員の就業意識の調査結果から、働き方改革の進め方について検討を行った点が、本研究の成果と貢献に挙げられます。</span></div>
</div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-6909896715201066782021-05-16T00:57:00.001-07:002021-05-16T00:57:13.270-07:00卒業生の課題研究「スマート農業の技術実証の成果に関する考察」<p></p><div style="text-align: justify;"> 当研究室における本年3月の卒業生、倉本大樹さんは、香川県外のある地域を対象にしてスマート農業の技術実証の成果に関する卒論研究(課題研究)をおこないました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 以下では、<b>この卒論研究の要旨</b>を抜粋して紹介します。 </div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> <b>要旨</b>:近年、我が国では「スマート農業」が農業の課題を解決するものとして注目されています。しかし、現状ではその採用の実態が見えにくく、実際にスマート農業が生産者に有益で農業生産の課題解決につながるものかどうかは検証が待たれています。本研究では、全国に先駆けてスマート農業を用いた特産品の栽培を実証プロジェクトを進めているA県B市において、スマート農業技術の導入状況、導入の成果に関して、地元の農業改良普及センターから聞き取り調査を行いました。そして、この聞き取り調査の結果と収集資料に依拠しながら、スマート農業技術の有用性や限界、その普及上の課題について考察します。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 第1章では、A県B市の農業生産の概況、スマート農業技術の導入経緯について説明します。B市は全国的に有名なブランド農産物の産地ですが、農業の担い手不足が深刻になってきたため、平成30年度から特産物を対象に4種類のスマート農業技術の実証が行われるようになったことなどを説明します。この4種類とは、1)人工知能を使って圃場の害虫被害の兆候を検知し、その兆候が現れた地点に限定してピンポイント的にドローン農薬散布をおこなう技術、2)山の芋栽培への土壌水分センシングの活用、3)EXCELに基づいた簡易な営農管理システム、4)水田の水管理センサー、です。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 第2章では、B市において、人工知能を使って圃場の害虫被害の兆候を検知し、その兆候が現れた地点に限定してピンポイント的にドローン農薬散布を行う、という実証プロジェクトがいかに進められ、どのような成果が得られたかを説明します。B市の一部の水田作において上記のような人工知能を利用した農薬散布の実証プロジェクトが導入されましたが、聞き取りより、ピンポイント農薬散布を実現するという当初期待した効果は得られていないことが判明しました。</div><div style="text-align: justify;"> B市で採用された人工知能による害虫発生検知では、検知対象の害虫がほぼ一種類に限られるという非常に厳しい制約がありました。B市の実証圃場の耕作者は、実証プロジェクトが開始されてからようやくその制約に気づきます。このほか、実証プロジェクトを行ってみると、日照条件によっては害虫発生を誤検知する場合も多くあることにも気づいたそうです。B市ではこれらの問題が無視できないと考えてこの技術を継続採用することを断念し、代わって、ドローンによって水田を全面農薬散布することを選ぶに至ったそうです。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 第3章では、B市において山の芋栽培に土壌水分センシング技術がいかに導入され、どのような成果が得られたかを説明します。今回の実証プロジェクトでB市では山の芋栽培に土壌水分センシングが行われ、重要な夏場の水管理を効率化できるという手応えが耕作者に得られるようになりました。しかし、現在の土壌水分センシング機器は自分たちにとって不必要な機能も備え、機器が高価に感じられているそうです。土壌水分センシング機器の低コスト化が進めば、その利用者が増えることで山の芋生育と土壌水分の関係に関するデータが多く得られるようになります。このとき、そのデータ解析によって山の芋栽培での水管理の効率化が一層進められることも考えられます。今後このようにセンシングの普及とデータ活用が進むことがB市では期待されているそうです。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 第4章では、B市において、EXCELに基づいた簡易な営農管理システムがいかに導入され、どのような成果が得られたかを説明します。B市では、EXCELに依拠した簡易な営農管理システムが多数の生産者の水田作ですでに利用されています。この営農管理システムを通じて生産状況を「見える化」できること、従業員どうしで栽培管理状況の情報共有がしやすくなることがなどが、利用者にその導入メリットとして感じられています。他方で、この営農管理システムにバグが多く、端末上でデータが閲覧しにくい場合があることなどが、その問題点として意識されているそうです。ただし、システムの利用料金が低廉で農業者には導入しやすいため、今後その利用者が増えながらシステムが改善されていくことも期待されています。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 第5章では、B市における水田センサーの実証に関する聞き取り結果について述べます。同市では今回の実証プロジェクトの一つとして水田センサーが一部圃場で導入されました。しかし、水田センサーを導入しても、耕作者が稲の生育状況を確認するためには水田の見回りが欠かせません。水田の見回りをおこなうとなると、その際に生育状況の確認だけでなくついでに水田の用水管理(取水口の昇降)をおこなったとしても耕作者にとっては大きな負担増にはなりません。これより、B市では、水田センサーに頼って水管理を進めるよりも、水田の見回りの際に生育状況の確認と用水管理をまとめて行う方が費用対効果の面で優れる、という判断に至ったそうです。こうして、B市では今回の実証プロジェクトでいったん水田センサーを導入しましたが、すぐにその利用中止が決定されたそうです。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 第6章では、以上の結果をふまえて、スマート農業技術を今後活用する上で関係者が特に意識すべき点を考察します。</div><div style="text-align: justify;"> 今回の実証成果を振り返って見ますと、土壌水分センシングと、EXCELに依拠した簡易な営農管理システムについては、生産現場に比較的によく適合していることが耕作者にも認識され、今後その普及により地元の農業生産を改善することが期待されていることが伺えました。これらでは低コスト化や性能改善を追求しながら現場で普及を促すことが今後求められるでしょう。</div><div style="text-align: justify;"> 他方で、今回の実証において、人工知能を使って害虫被害を検知してドローン農薬散布するという技術や、水田センサーを導入した農業者からは、それらの導入について良い評価が得られませんでした。これらの性能や導入効果の限界は、事前に普及機関がよく見定めておくべきだったと考えられます。</div><div style="text-align: justify;"> 今後は、スマート農業技術の種類ごとに技術の効果を関係者が事前にできるだけよく見極め、費用対効果をより高める形で技術を取捨選択しつつ採用していくことが求められると考えられます。</div><p></p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-37014958312049357142021-05-16T00:57:00.000-07:002021-05-16T00:57:03.315-07:00卒業生の課題研究「五名地区の活性化におけるジビエ活用に関する考察」<p style="text-align: justify;"><span style="text-align: justify;"> 当研究室における本年3月の卒業生、</span><span style="font-family: inherit;">田中彪士</span><span style="text-align: justify;">さんは、</span>「五名地区の活性化におけるジビエ活用に関する考察」というテーマで<span style="text-align: justify;">卒論研究(課題研究)をおこないました。五名地区は、香川県東かがわ市の南部に位置し、過疎地域活性化に向けた取り組みで全国表彰を何度か受けたことがある地域です。一昨年には「ポツンと一軒家」というTV番組にも取り上げられました。</span></p><div style="text-align: justify;"> 以下では、<b>この卒論研究の要旨</b>を抜粋して紹介します。 </div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> <b>要旨</b>:現代日本の農山村では少子高齢化・人口減少などへの対処が大きな課題になっています。香川県東かがわ市五名地区は、全国過疎地域自立促進連盟会長賞を受賞するなど、農山村活性化への取り組みでは全国的な優良事例として評されています。五名地区での活性化の動きは2018年に「(新)五名ふるさとの家」が設立される前後からジビエへの取り組みを中心に変化を遂げてきています。本研究では、近年、五名地区でどのように地域活性化が進んでいるかを、ジビエを中心に考察します。地域活性化に向けた取り組みのうち特に、五名地区のジビエの経済的利用がいかに発展を遂げているかについて、「(新)五名ふるさとの家」の運営者を対象にした聞き取りから検討を進めます。</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"> 本研究の第2章では、まず、五名地区の様々な取り組み内容を整理して、小田切徳美氏『農山村は消滅しない』第Ⅱ章(岩波書店、2014年)で提唱されている地域づくりのフレームワークにそれらがいかに当てはまるかを説明します。</div><div style="text-align: justify;"> 五名地区では1985年より白鳥林友会による森林管理活動が始まり、2000年代半ばからは(旧)五名ふるさとの家、五色の里が設立されて消費者へのジビエの提供が始まりました。 ジビエの核にした地域活性化の動きが進み出し、2010年代半ばに五名活性化協議会が設立され、そこでの住民間の議論にもとづき、2018年には(新)五名ふるさとの家が開設されました。(新)五名ふるさとの家は、安価で高品質なジビエ料理の提供と産直により高い集客力を持つに至っています。</div><div style="text-align: justify;"> 本研究では、2000年代から上記活動を通じて五名地区の住民が地元に誇りを持つようになり、小田切(2014)が言う「暮らしのものさしづくり」「主体づくり」の形成がそこで進んでいたことを指摘します。また、五名地区活性化協議会の活動を通じて住民間の議論、コミュニティ活動が進んだり、空き家提供などで生活条件の整備が進んだことから、小田切(2014)が言う「暮らしの仕組みづくり」「場づくり」が五名地区で形成されたことを指摘します。最後に、五名地区では森林資源、ジビエの経済的価値が追求されることで、小田切(2014)が言う「カネとその循環づくり」「持続条件づくり」が形成されたことを指摘します。こうして近年における五名地区の活性化の動きが、全体として、小田切(2014)の提唱する地域づくりのフレームワークに適合していたことを説明します。この最後の「カネとその循環づくり」については特に重要と思われますので、第3章以降で調査結果にもとづき詳しく説明します。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 本研究の第3章では、五名地区の近年のジビエ取り組みに関する調査結果について述べます。(新)五名ふるさとの家の店主のA氏は、香川県外出身で東日本大震災のボランティア経験を経た後に、2016年に知人の紹介で五名地区に移住しました。その後2年間、五名地区で林業研修生に就き、そこでの取り組みなどが評価され、五名活性化協議会によって(新)五名ふるさとの家の店主を任され、ジビエ料理提供にあたるようになりました。</div><div style="text-align: justify;"> 「五名里山を守る会」によって間伐など森林保全が取り組まれている五名地区の一部地域では、イノシシ、シカの餌となる木の実が豊富に備わり、それを食べたイノシシ、シカの肉質が周辺地域で捕獲されるものに比べて良くなっています。A氏ほか五名地区の狩猟グループは、こうした好条件の地域でイノシシ、シカを(銃ではなく)箱ワナで捕獲し、捕獲後には素早く血抜き、解体処理を済ませます。A氏らは、これらの解体処理を一貫して効率よく行うことで、五名地区で提供されるジビエの味を大きく高めることができていると評価しています。</div><div style="text-align: justify;"> A氏は(新)五名ふるさとの家でのジビエ調理に携わっていますが、五名地区に移住する前には沖縄で野生豚の料理提供を行った経験がありました。A氏は、そうした経験から、優れたジビエ調理技術を蓄え、肉の部位ごとに付加価値の違いに留意して、各種食材や販売商品向けに肉を巧みに使い分けることができています。</div><div style="text-align: justify;"> このほか、五名地区に住む何人かの女性は、(新)五名ふるさとの家に自家製野菜を提供したり、そこでの皿洗い、A氏の育児を自発的に手伝ってくれたりしています。こうしてA氏がジビエ提供に打ち込めるためのバックアップ体制が確保されています。</div><div style="text-align: justify;"> こうした取り組み、体制のおかげで、(新)五名ふるさとの家では絶品に感じられるようなジビエ料理を安価に提供することが可能になっています。そして、その集客力が高位安定し、上で述べた五名地区の「カネとその循環づくり」「持続条件づくり」の形成に大きく寄与していることが伺えました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 本研究の第4章では、今後の五名地区の活性化に関する展望について述べます。五名地区への来訪者、ファンを今後広げようとした時、SNSの活用を今よりも進めることが課題に挙げられます。また、五名地区への移住希望者に提供できる空き家を確保して五名地区への移住促進につなげていくことも重要な課題に挙げられます(現在は五名地区への移住希望者が多くて、提供できる空き家が不足しています。移住希望者は空き家の順番待ちの状態)。</div><div style="text-align: justify;"> 他の過疎地域でも、五名地区のように、森林資源の保全管理とイノシシ・シカの捕獲解体処理を効果的に進めることで、森林資源とジビエの経済的利用を補完的に発展させられる可能性が考えられます。ただし、こうした取り組みを進める際には地域住民間の協力も欠かせなくなり、その協力形成のフレームワークを考える際には、小田切(2014)の提唱する地域づくりのフレームワークが参考になると考えられます。五名地区のように丁寧な仕事と少ない人手の中での工夫や協力を編み出す体制を設けることが、その活性化取り組みの大きなヒントになると考えられます。</div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-83949088839365892242021-03-11T02:10:00.038-08:002021-03-23T09:21:30.409-07:00Bainbridge (1983)「自動化の皮肉 (Ironies of Automation)」<p><span style="font-family: inherit;"><span lang="EN-US" style="text-indent: -9pt;">このブログでも以前から紹介していますが、農作業を自動化(自働化)させることを謳い文句にしたスマート農業技術が近年多く現れるようになりました。</span></span></p><p><span style="font-family: inherit;"><span lang="EN-US" style="text-indent: -9pt;">農業に限らず、作業の自動化にともなって人間にどのような影響が及ぶか、人間にどのような対処が求められるか、人間とコンピュータの協働はいかにあるべきか、こうした問題を40年近く前に考えて答えを提示しようとした論文があります。以下の論文です。</span></span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: inherit;"><span lang="EN-US" style="text-indent: -9pt;">Bainbridge, L. (1983)</span><span lang="EN-US" style="text-indent: -9pt;"> </span><span lang="EN-US" style="text-indent: -9pt;">Ironies of Automation,
in G. Johannsen, and J.E. Rijnsdorp, eds., <i>Analysis, Design and Evaluation
of Man–Machine Systems</i>, Pergamon: 129-135.<br /></span></span><a href="https://doi.org/10.1016/B978-0-08-029348-6.50026-9" style="font-family: inherit; text-indent: -9pt;">https://doi.org/10.1016/B978-0-08-029348-6.50026-9</a></div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"><b>タイトルが「自動化の皮肉 (Ironies of Automation)」</b>で、生産工程を自動化しても最初に期待していたほど状況は楽になりませんよ、人間の負担はもっと増えるかもしれませんよ、もっとこういう対応も考えておかなければ駄目ですよ、、、と警告を与えるような趣旨の論文です。</div><div style="text-align: left;"><div>Wikipediaにも解説があります。</div><div><a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Ironies_of_Automation">https://en.wikipedia.org/wiki/Ironies_of_Automation</a></div><div><br /></div><div>Bainbridgeは女性の認知心理学者で、上の論文の執筆当時はUniversity College London<span style="background-color: white;">所属でした。</span></div><div>執筆時期は1980年代前半で、PCがやっと出回り始めた頃です。</div><div>当時、農業にICTを活用する発想もほとんど見えてない時代で、この論文では農業での自動化(自働化)について何も述べていません。</div></div><div style="text-align: left;">それでも、私がこの論文を読んだ感想として、現在農業へのICT・自働化導入を考える際に注意すべき点について多く示唆が得られるように感じられました。</div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white;">上のWikipedia記事によると、</span><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)に関する論文</span>引用件数は次第に増えて膨大にのぼるそうです<span style="background-color: white;">。</span></div><div style="text-align: left;">そこで、ざっとですがこの論文の趣旨を紹介させていただきたいと思います。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;">コンピュータなど使ってあるシステムの自動化を進める際、そのシステムに関わる人間にいろいろな役割、仕事が残されます。</div><div style="text-align: left;"><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)は、</span>このときの人間の役割、仕事について以下のように整理します。</div><div style="text-align: left;">彼女は、システムの自動化を進めるときのオペレータに残される仕事として、</div><div style="text-align: left;"><b>①自動化されたシステムが正しく作動しているかをモニターすること</b></div><div style="text-align: left;"><b>②そのシステムが正しく作動していないときに事態に対処すること</b></div><div style="text-align: left;">を挙げます。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)では、</span>まず、<b>①が実際に円滑に行えるか?</b>が考察されます。<br />①が円滑に行えるためには、システムが正しく作動しているかを人間が適切に判断できることが必要です。これが実際すんなりうまくいくでしょうか?</div><p>システムの作動状況について単調なモニタリングが延々続くと、オペレータの注意が散漫になって、システムが正しく作動していないことを見落としやすくなることが考えられます。また、オペレータが自働化されたシステムに長い間(数か月間、数年間)仕事を任せていると、その判断力・勘が鈍ってしまい、システムが正しく作動していないことを見極められなくなる可能性も考えられます。特に、自動化処理を進めるコンピュータの判断が複雑化しているときほど、その判断が適切かを人間が完全に見極めることは困難化します。</p><p>こうした懸念への対応策としては、まず、オペレータに状況を記録・報告させて注意を怠らないように促すことが考えられます。しかし、その対応策をとった時でも、記録を取る行為自体が機械的作業になってオペレータが事態をよく観察しないままになる恐れがあります。</p><p>このほか、システムが誤作動していることを別の機械で検知してアラームをオペレータに与えることも対応策として考えられます。しかし、異常の検知に手間取って、そのアラームが出てからでは対応が手遅れになることも考えられます。また、異常事態の発生が確定する以前にアラームを出して早めに強く注意を促そうとすると、今度はオペレータがアラームの意味をさほど信用しなくなること(いわゆるオオカミ少年効果)も考えられます。</p><div style="text-align: left;">次に、<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)では、</span><b>②が実際に円滑に行えるか?</b>が考察されます。</div><div style="text-align: left;">②に関しては、システムが正しく制御されていないことが判明した場合に、マニュアル制御に切り替えることが一般的でしょうが、その際にマニュアル制御をおこなう技能が担当オペレータに確保されているかどうかが問題になります。</div><div style="text-align: left;">ここでオペレータにとってマニュアル制御の経験がない、あるいは、マニュアル制御の経験はあるものの長い間実際には行っていないとすると、オペレータにとって、制御がうまくいかない原因を適切に把握して回復策を講じることが難しくなりやすいと予想されます。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;">こうした懸念への対応策としては、起こりうる事態を想定して組み込んだシミュレーション訓練を担当オペレータに受けてもらい、その訓練を通じてオペレータのマニュアル制御での対応能力を高めることが挙げられます。事態が刻一刻と変化する状況を扱えるような動的シミュレーターがこの訓練にはふさわしいと考えられます。<br />しかし、そのときでも未知、想定外の事態はシミュレーターでは扱いきれないという問題が残ります(10年前に福島第一原子力発電所内でもこうなっていたのかと福島県出身の私は思い返してしまいます)。</div><p>以上のような考察から、<b>①、②の対応で起こりうる諸問題の発生・悪化を未然に食い止めようとすると、システムの自動化を進める前よりも高い能力や重い負担が、人間であるオペレータに求められてくるとも考えられます。</b></p><p><b>もともとは人間を楽にしようとして自動化したのに、結局は自動化で人間の負担を前よりももっと重くしなればならなくなるかもしれない、、、</b></p><p><b>というのが</b><span style="text-indent: -12px;"><b>Bainbridge (1983) の</b></span><b>「自動化の皮肉」が言わんとするところです。</b></p><p>こうしてオペレータである人間に重い負担を求める形で自動化を進めなければならないとなると、オペレータにはストレスが多くかかり、仕事への意欲が下がってしまうことも懸念されます。</p><p>ではこうした事態を避けられるような何か良い解決策はないのでしょうか。</p><div style="text-align: left;">コンピュータが仕事に進出してくるとき人間とコンピュータの間のあるべき関係としては、両者間で分業を進めること、つまり、<b>単純なマニュアル作業はコンピュータに任せて自動化し、人間はより高度な仕事を集中的に担うべきだという主張がしばしば出されます。<br /></b><b>しかし、<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983) は、このような</span>分業を考えるだけでは「自動化の皮肉」現象への対応策としては不十分であることを述べます。</b></div><p><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983) は、「自動化</span>の皮肉」現象への対応策として、人間とコンピュータの役割をそのように分けることではなく、<b>コンピュータが人間の技能形成や就業意欲を支えられるように、</b><b>両者の役割を適切に統合すること (integration) </b>を提案しています。</p><p><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983) が考えている</span><span style="text-indent: -12px;">望ましい人間と</span>コンピュータの統合化の形態は、<b>コンピュータが人間が扱う仕事の種類や仕事の忙しさをリアルタイムで把握して、オペレータの能力の高低や時間ストレス(急を要するか)に適切に応じながら、洗練されたディスプレイの案内表示を通じてオペレータの仕事を支援する</b>、というものです。</p><p><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)は、航空機の</span>操縦ではパイロットが同時にいくつもの仕事をこなさなければならないとき自動操縦に切り替え、こなすべき仕事が減ったらマニュアル操縦に切り替えるようにしていたことを、この引き合いに出します。彼女は、こうした人間とコンピュータの関係を一般の生産管理システムでも実現できないかと構想していたようです。</p><p>生産管理システムでコンピュータがオペレータに指導や指示を出しすぎると、オペレータが生産管理システムに起こりうる諸問題の構造について理解し対処能力を身につける機会が失われてしまいます。このため、<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)は、<b>人間にとって</b></span><b>仕事の負担が重い状況などに限りつつコンピュータが人間を支援するという形で両者を統合できないか</b>と構想していました。 </p><p>こうした支援システムの実現のためには、先述のように、コンピュータが人間が扱う仕事の種類や仕事の忙しさをリアルタイムで把握できることが必要になります。このシステムは、論文が書かれた当時はまだ構想できていなかったようで、<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)の論文では具体的に述べられていません。しかし</span>、現在は多くの管理工程において、タッチパネルほか、アイカメラ、生体センサ、チャットボット、その他AI搭載の機器類を使ってこの支援システムを作ることは可能になってきていると思われます。</p><p>このほか、<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)は、上記の支援システムがうまく機能するためには、</span>コンピュータがどの仕事をいかに扱うことができるのかについて、人間があらかじめよく把握しておくことが必要であることを強調しています。それができていないと、人間がコンピュータを頼りにしすぎて「あてが外れた」となりやすいためです。<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)が提唱する</span>「統合」ではここが急所になりやすいかもしれません。 </p><p>私が乗っている某メーカーの自動車にも、高速道路でハンドル、アクセル操作を支援する機能が備わっています。ボタン一つで支援機能の作動が始まり、運転者がブレーキペダルをちょっとでも踏むと支援機能は解除されるようになっています。また、ハンドル操作が数分間行われていないとハンドル操作を行うように警告音が出るのでハンドルを取り回そうという気にさせられます。以上は、人間に運転への注意を呼び掛けつつ人間とコンピュータの間で運転が円滑に切り替えられるようにと、自動車メーカーなりに配慮した結果なのでしょう。これも<span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983)が構想した統合化されたシステムに該当してくると思われました。彼女</span><span style="text-indent: -12px;">の構想に沿うような支援システムの例は他にもすぐ見つかるでしょうね。</span></p><p><span style="text-indent: -12px;">(話が少しそれましたが)まとめますと、Bainbridge (1983)は、「自動化の皮肉」現象を指摘して、その対処として人間の能力、意欲の維持のためにコンピュータを活用して両者の機能を統合することを提案した先駆的論文として、その意義・貢献を高く評価できるでしょう。</span></p><div style="text-align: left;"><span style="text-indent: -12px;">論文読後の感想としては、スマート農業技術が導入されると農民が楽になるように喧伝されますが、やはり、</span><b><span style="text-indent: -12px;">Bainbridge (1983) の言う</span><span style="text-indent: -12px;">「自動化の皮肉」現象により、</span><span style="text-indent: -12px;">スマート農業技術を導入した農民</span></b><span style="text-indent: -12px;"><b>がかえって苦労することにならないのかによく注意する必要がある</b>と痛感しました。</span></div><div style="text-align: left;"><span style="text-indent: -12px;">また、<b>それを避けられるように農民とコンピュータの役割の統合をいかに進めるべきかについて、スマート農業技術の開発研究、普及に携わる方々がよく注意を払ってほしい</b>と思いました。<br /></span><span style="text-indent: -12px;">そのためにも</span><span style="text-indent: -12px;"><b>Bainbridge (1983) の</b></span><b style="text-indent: -12px;">論文エッセンスは日本の農学研究者の間にもぜひ知れ渡ってほしい</b><span style="text-indent: -12px;">と思います。</span><span style="text-indent: -12px;"> </span></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-75752676987117903002021-02-26T03:36:00.029-08:002021-02-26T04:31:18.633-08:00農学部における統計学教育<p>香川大学農学部ではこれまで、他大学の先生に「生物統計学」の非常勤講師をお願いしてきましたが、コストカットもあって令和3年度から農学部所属の教員数名で「生物統計学」を担当することになりました。私もその担当に加わることになりました。</p><div style="text-align: left;">担当教員どうしで打ち合わせ会議があり、講義内容の打ち合わせ、分担、シラバス作成へと進みました。私の主な担当テーマは、<br />①統計的推測の基本的な考え方<br />②標準正規分布、カイ二乗分布、t分布、F分布の基本性質の解説<br />③代表的な区間推定(上記の分布関数を使って行えるもの;母集団が正規分布に従うときのその母平均、母分散に関する)<br />④代表的な仮説検定:z検定、t検定、ウェルチ検定、F検定、カイ二乗検定<br />です。他の先生が、実験計画法、分散分析、回帰分析などを担当して講義されます。</div><p>従来の香川大学農学部の統計学教育の状況について農学部教員に意見を尋ねるアンケート調査が行われていて、その結果によると、従来の農学部の統計学教育に満足しかねる教員が多くいました。現状を改善せよという声が強いので、期待に応える講義をしなければと責任を感じます。</p><p><span style="background-color: white; color: #222222;">昔は統計は大学入試でめったに出題されないから高校の授業で省略されることが多かったかもしれません。今は高校数学で統計は早い段階に取り扱われ、本年から始まった共通テストでは早速出題対象になりました。学生にとっては統計学を受け入れる余地は昔よりは大きくなったのかなと思います。</span></p><p><span style="background-color: white; color: #222222;">正規分布の基本特性、また、一般の正規分布に従う確率変数を標準正規分布に従う変数に変換する方法(標準化)については、以前から高校数学の範囲になっています。</span><span style="background-color: white; color: #222222;">また、母集団が正規分布に従い、その</span><span style="background-color: white; color: #222222;">母分散が既知という条件の下で、標本平均の値を使いながら母平均について区間推定する方法(標準正規分布を使用)も、以前から高校数学の範囲内になっています。</span></p><p><span style="background-color: white; color: #222222;">今回の生物統計学の講義の際には、</span><span style="background-color: white; color: #222222;">学生にはまずこのあたりを思い出してほしいです。思い出してもらえれば、</span><span style="background-color: white; color: #222222;">私が</span><span style="background-color: white; color: #222222;">「では母分散が未知だったら</span><span style="background-color: white; color: #222222;">どうやって母平均を区間推定するのか?」と話を振ったとき、話に食いついてもらえるだろうと期待しています。</span></p><p><span style="background-color: white; color: #222222;">学生へのアピールの方法としては、</span></p><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #222222;">①</span><span style="background-color: white; color: #222222;">母分散が未知の場合に</span><span style="background-color: white; color: #222222;">母分散の代わり不偏分散を使うことを考えてみよう</span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #222222;">②不偏分散に関わる分布を知っておこう→カイ二乗分布、F分布の登場<br /></span><span style="background-color: white; color: #222222;">③</span><span style="background-color: white; color: #222222;">標本平均を使いながら母平均について区間推定する際、</span><span style="background-color: white; color: #222222;">母標準偏差(σ)の代わりに</span><span style="background-color: white; color: #222222;">不偏</span><span style="background-color: white; color: #222222;">標準偏差を使ったらどうなるか→</span><span style="background-color: white; color: #222222;">標準正規分布に代わって</span><span style="background-color: white; color: #222222;">t分布の登場</span></div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"><span style="color: #222222;"><span style="background-color: white;">といった形で数珠つなぎ的に不偏分散、基礎的な分布(</span></span><span style="background-color: white; color: #222222;">カイ二乗分布、F分布、t分布)に注意を向けてもらえるように誘導したいと考えています。学生が</span><span style="background-color: white; color: #222222;">これらの分布に</span><span style="background-color: white; color: #222222;">イメージを持てるようになれば、代表的な</span><span style="background-color: white; color: #222222;">区間推定、仮説検定の話題に入れる準備もできてくると期待されます。</span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #222222;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="color: #222222;">全体的に、数式の羅列で講義したら学生が修学意欲を喪失する可能性が高いでしょうから、図解も積極的に入れたいと思います。例えば中心極限定理については、標本サイズが大きくなるにつれて標本平均の分布が母平均の周りに集中してくることを描いたイメージ図であっさり説明したいと思います。(私は、小針</span><span style="color: #222222;">晛宏先生の『確率・統計入門』(岩波書店)で中心極限定理を学びましたが、この教科書では中心極限定理の証明完成までにかなりの頁数を費やしていました。私が出席していた京大教養部の</span><span style="color: #222222;">「数理統計学」の授業では、担当の</span><span style="color: #222222;">先生がその証明を板書で説明しようとしていたことが思い出されます)。</span></div><div style="text-align: left;"><span style="color: #222222;"><br /></span></div><div style="text-align: left;">また、私の担当テーマの区間推定、仮説検定はEXCELの「データ分析」機能の範囲内なので、EXCELの画面を見せながら、区間推定や仮説検定をEXCEL上で実際にどのように行えるかを解説したいと思います。EXCELの画面に出てくる検定結果も、理論的な説明内容と照らし合わせて学生が円滑に読み取れるようになってもらえれば、と期待しています。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;">EXCELだけでは物足りない学生も出るでしょうが、幸い、今回の講義では他の先生がRの操作方法を解説しつつ他のテーマを講義されますので、お任せします。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;">将来的には農学部内でRが使い勝手が良いと思う学生がポツポツ現れるようになって、農学部内で統計分析の研究が少しは流行ってもらえたらと勝手に期待しています。私は別の授業でRコマンダー、R-Studioを紹介するなどしてその手助けをできればと思います。このほか、今回の講義で扱うような古典的な統計学の限界について指摘する研究が出て、代わりにベイズ統計学に期待する流れも徐々に出てきていますので、将来、別の授業でベイズ統計学について紹介できればと考えています。久保拓弥氏『データ解析のための統計モデリング入門』(岩波書店)は、香川大学農学部でも授業で取り扱うニーズはあるのではないかと見ています。</div><div style="text-align: left;"><br /></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-73979819237494286802021-01-28T22:58:00.067-08:002021-02-10T01:02:52.975-08:00学生調査実習⑤:ふりかえり(キウイフルーツの生産・流通のDXに関して)<p style="text-align: justify;"> 1月27日の事後演習より、Orchard & Technologyの末澤さんからの講演内容に関するふりかえりを進めます.</p><p style="text-align: justify;"> 事後演習で学生から挙がった反応を見ますと、「ゼスプリのキウイの<span style="letter-spacing: 0.8px; text-indent: 8px;"><span style="font-family: inherit;">CMは知っていた.それと絡めて今回改めて</span></span>NZのの日本市場攻略について驚いた」という感想が挙がっていました.NZに留学した経験のある学生は、NZ国民がキウイをよく食べるという印象を持っていたそうで、その背景(NZの生産能力の高さ)を思い知ったということでした.</p><p style="text-align: justify;"> 私としては、まず、キウイ市場におけるNZ産と国産の関係が気になりました.</p><p style="text-align: justify;"> 日園連から出版されている雑誌『果実日本』ではこれまでキウイに関する特集号が何度か組まれたことがあります(2006年12月号、2014年12月号、2019年7月号).80年代からNZ産キウイが日本に進出して日本でキウイの需要が開拓されるようになったこと、北半球と南半球の違いで日本の冬・春はNZ産の端境期にあたり、国産がその時期に需要拡大の追い風に乗って供給を増やせるようになったこと、がそこで指摘されています.こうした局面を見るとNZ産は国産と補完的のようでもあります.</p><p style="text-align: justify;"> 他方で、NZの収穫時期はその年の気候によって変化があり、国産の出荷時期に入ってもNZ産が遅くまで輸出され、国産がそれに対抗できない場合もあることが指摘されています.この一面を見れば、NZ産は国産と代替的となります.</p><p style="text-align: justify;"> どうやらNZ産と国産のキウイには、需要拡大のような長期的側面を見れば補完的だが、その年の気候変動の影響のような短期的側面を見れば代替的になりうる、という一見変わった関係があるようです.この状況で日本はどのようなキウイ戦略を取るべきかが、末澤さんの講演に直結するテーマになりますが、これを経済学的に分析できたらと思いました.</p><p style="text-align: justify;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;"> このほか私が気になったのは、</span><span style="background-color: white;">キウイ生産・流通のDXに伴う、生産管理の権限配分の変化についてです.</span></p><div style="text-align: justify;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;"> 末澤さんの構想する事業では、キウイ生産・流通のDXを促進する観点から、キウイの生産管理を、気象・栽培情報の収集・分析を通じて従来のキウイ生産よりももっと集権的に進めることを意図している、と私には解釈されました.これは、下記の記事にある「アグリコンシェルジュサービス」から指示が次々に出されて、統一ブランドで出荷する生産者に、そうした指示に対応する責務のようなものが課されると予想されるからです.</span></div><div style="text-align: justify;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;"> ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号</span></div><div style="text-align: justify;"><a href="https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news002.html">https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news002.html</a></div><p style="text-align: justify;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;"> 組織の意思決定権限を集権的にするか分権的にするかというテーマは、組織の経済学では重要なテーマで、多くの論説がこれまで著されています.こうした論説を、末澤さんが構想する事業状況にあてはめた場合に言えることを考えてみます.</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="background-color: white;"> 統一ブランドの形成に向けて生産者が組織を作り、その組織マネージャーがそのメンバーたる多数の生産者に多く指示を出す場合を考えると、マネージャー自身が生産者の</span><span style="background-color: white; font-family: inherit;">栽培環境の変化を逐一把握できなければ、生産者の環境に対応した指示を出すことに失敗してコストが発生します(不適応コスト).</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;"> このほか、マネージャーが生産者の栽培環境を正しく把握することができたとしても、</span><span style="background-color: white; font-family: inherit;">生産者にその指示がうまく伝わらないために、生産者がその指示を実行し損ねて、例えば、ブランド価値の毀損などの形でコストを発生させることが考えられます(調整失敗コスト).これがよく起こるかどうかは、マネージャーと生産者の間の意思伝達の費用、正確さなどに依存します.</span></p><p style="text-align: justify;"> 組織の経済学の分析結果に従えば、こうした状況で大きな不適応コストが発生するときほど、マネージャーが生産管理をコントロールするよりも、現場の生産者に管理を任せる方が効率的になりやすいことが指摘できます.これは、現場をよく知らない人間が管理することのリスク、コストがより強く感じられてくるからです.</p><p style="text-align: justify;"> また、マネージャーと生産者の間の意思伝達の費用が高くつき、意思伝達の正確さが確保されにくいときほど、上記の調整失敗コストの発生も増えてくるため、マネージャーは生産者に生産管理の権限を任せて、マネージャーからの指示、マネージャー・生産者間の意思伝達自体を少なく抑えてしまう方が効率的になりやすい、ということも組織の経済学の分析結果から指摘できます.</p><div style="text-align: justify;">※ここでいう組織の経済学の文献とは、具体的には以下です.</div><div style="text-align: justify;">Dessein, W., and T. Santos (2006) "Adaptive Organizations", Journal of Political Economy 114: pp. 956-995. </div><div style="text-align: justify;"><a href="https://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/508031">https://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/508031</a></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;">Bolton, P., and M. Dewatripont (2013) "Authority in Organizations: A Survey", in: R. Gibbons, and J. Roberts eds., Handbook of Organizational Economics, Princeton University Press: pp. 342-372. <span face="Arial, sans-serif" style="color: #333333;"><span style="background-color: white; font-size: 11.869px;"> </span></span></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> もしもNZのキウイのように栽培管理の専門家(コンサルタント)が多く存在して、キウイ生産組織のマネージャーがその専門家に多数の栽培現場の確認、多数の生産者との調整にあたらせることができるのならば、上記のような不適応コスト、調整失敗コストは少なく抑えることが可能で、上記の理論予測の逆の状況、つまり、生産者に代わってマネージャーが生産管理をコントロールする状況が選ばれて成立しやすいと予想されます.</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"> 日本で農業生産・流通のDXにおいてICTを駆使したデータ蓄積・分析能力が進展するとしても、やはりこうした専門家の存在が果たしうる役割は大きく残ると考えられます.以前にこのブログで紹介しましたが、カルビーでは、フィールドマンが栽培現場に送られ、ICTも同時に駆使して馬鈴薯の栽培管理をコントロールする体制が採られていました.</div><div style="text-align: justify;">カルビー「農業の持続可能性向上」</div><div style="text-align: justify;"><a href="https://www.calbee.co.jp/csr/value/agriculture.php">https://www.calbee.co.jp/csr/value/agriculture.php</a></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> これをモデルにして、キウイの場合でも、専門的知見を備えた人とICTを適切に組み合わせて栽培管理をコントロールできる体制が望ましいのではないかと考えられます.末澤さんの構想される事業でもこうした点が意識されると、その実現可能性はより高まるのではないかと思われました.</div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-89889923599614874812021-01-28T22:56:00.001-08:002021-02-10T01:05:48.599-08:00学生調査実習④:ふりかえり(熟練農業者の技能継承サービスに関して)<p> 生産コース実験のうち1月27日の事後演習では、1月14日の講演内容を踏まえた事後演習をおこないました.</p><div style="text-align: left;"> まず、キーウェアソリューションズによる熟練農業者の技能継承サービスについて、学生から挙がった感想を紹介しますと、VRによる剪定の習得システムを評価する声が多くあがりました.「果樹の剪定作業をしたことがあるが、切ってはいけない枝を剪定してめちゃくちゃ怒られたことがある.VRでの剪定学習があったら助かる」「農業の現場でVRをもっと導入したらいい」という意見が出ていました.</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"> また、佐賀のトレーニングファームも評価が高く、佐賀のトレーニングファームを訪問したいという意見も出ていました.トレーニングファームで基礎から教えてもらえるというのが若者目線で見ても頼もしく感じられるようです.</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"> 学生にはキーウェアソリューションズの取り組みについて全般的に評価が高かったことが伺えました.</div><p> 私の方で、キーウェアソリューションズのリンゴVR剪定について検索してみたところ、以下の記事にあたりました.</p><div style="text-align: left;">東奥日報「リンゴ産業最前線 スマート農業に活路」2020年3月17日号</div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.toonippo.co.jp/articles/-/327056">https://www.toonippo.co.jp/articles/-/327056</a></div><div style="text-align: left;">(記事の途中からは会員登録した人のみに公開)</div><p> この記事には、若手でリンゴ栽培に研究熱心な森⼭さんという方が、リンゴのVR剪定習得システムについて、「時間も空間も⾶び越えている」と⾆を巻いたとのエピソードが載っています.昨年2⽉に弘前市で開かれた「りんご産業イノベーションセミナー」でリンゴのVR剪定習得システムが公開され、⼤きな反響を呼んだともあります.弘前市役所のリンゴ課の担当者からも評価が高いそうです.</p><p> 香川県でも果樹の適地があり、剪定技術が重要になりますので、私としても、香川に適した剪定技術の習得システムは導入できないかをよく検討する必要があると感じました.地元の自治体やJAの職員の方々にも検討を呼びかけてみたいと思いました. </p><p> このほか、佐賀のトレーニングファームに関する記事を検索したところ、以下にあたりました.</p><div style="text-align: left;">第67回佐賀県農政審議会(2020年12月24日開催)会議録</div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00378794/3_78794_190502_up_c88oken2.pdf">https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00378794/3_78794_190502_up_c88oken2.pdf</a></div><p>この中に出ている委員発言を引用します.</p><p></p><blockquote style="text-align: justify;"><b>トレーニングファームについては、きゅうりの1期生が就農してほぼ1年経つが、1
年目から県内トップクラスの収量をあげた者もいて非常に驚いている。</b>
トレーニングファームを考えたとき、我々は、苗屋さんだと思う。今後、苗を育て仕上げていく中で、どのようにサポートしていくかが今からの大きな課題だと思う。
卒業生達は1億円、2億円を売り上げるという夢を持って頑張っている。それを達成
するには、また新たなサポートが必要だと思うので考慮いただきたい。 </blockquote><p> 太字は私(武藤)が付けました.就農1年目で県内トップクラスの収量という成果には、読んだ私もとても驚かされました.</p><div style="text-align: left;"> 前に紹介しました下記の記事によりますと、トレーニングファームでの研修生は、1期生から4期生までで16名とのことです.</div><div style="text-align: left;">マイナビ農業「【佐賀】 農業のイメージが変わる!? 肥沃な土壌&人の温かみが自慢。模擬経営や手厚い補助制度で就農を支援!」2021年1月14日号</div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.blogger.com/blog/post/edit/7121341439124574650/8988992359961487481#">https://agri.mynavi.jp/2020_09_30_132699/</a></div><p> トレーニングファームの研修システムをかなり充実させた分だけ、少数精鋭型の育成にならざるを得なかったのかとも思います.それでも、トレーニングファームではe-learningの教材が多いので、教材を研修生に提供する際の限界費用は比較的低く抑えられそうです.追加の研修・育成費用をある程度少なく抑えながら研修生、新規就農者を増やしていくという道筋が十分考えられそうです.</p><p> 香川県では施設園芸の衰退傾向が顕著になっていますので、やはり自治体やJAがこうしたトレーニングファームの導入についても検討してみてはどうかと強く感じました.</p><p> 以上のような最先端の熟練技能者の技能継承サービスは、社会的な反響もあって、農業関係者からのニーズも生まれそうです.今後その社会実装も期待できると考えてよいのではないでしょうか.</p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-46302186934520287962021-01-28T22:54:00.005-08:002021-01-28T23:03:09.285-08:00学生調査実習③:キウイフルーツ生産・流通のDX(Orchard & Technology様による) 1月14日の講演内容に関する説明の続きです.<div><br /></div><div> 1月14日の調査実習の後半では、Orchard & Technologyの末澤克彦さんから、キウイフルーツ生産・流通で日本が置かれた現状、そこをDX(デジタルトランスフォーメーション)でどのように改善しうるかについて、講演をいただきました.Orchard & Technologyという会社の概要については、そのHPをご覧いただければと思います.<div><div><a href="https://orchard-technology.com/">https://orchard-technology.com/</a></div><div>末澤さんが代表取締役を務めている、キウイフルーツ生産・流通のコンサルティング等に係る会社です.</div><div><br /></div><div> 前に紹介した以下の記事で、末澤さんがキウイの現状を述べていましたが、それについて今回はさらに詳しいお話を聞くことができました.</div><div>ITメディア「(前編)キウイの収穫量・時期、AIがピタリと当てます──日本の農業をデータで改革、ある農家の野望」2019年10月16日号<br /><a href="https://www.blogger.com/blog/post/edit/7121341439124574650/1575520080273355168#">https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news001.html</a><br /><div><br /></div><div> 末澤さんのお話によると、近年キウイの国内消費量が大きく伸びる一方で、国産キウイ産地はその波に乗れず、NZ産が市場を席捲しています(春から秋にかけてNZ産が日本のキウイ市場の96~98%のシェア、2018年のNZ産キウイ輸入量は約10万トン).</div><div> また、労働時間当たりキウイ生産量で見てNZは日本の約5倍、栽培面積当たりキウイ生産量で見てNZは日本の約2.7倍という格差がみられます.</div><div><br /></div><div> 末澤さんは、NZがこうした優位な状況を確立した理由として以下を挙げられました.</div><div><br /></div><div><div> ①NZではキウイ栽培技術の標準化、客観化が進んでいる.対照的に日本では果樹の栽培技術の模範としては、他人が真似しにくいような高い難易度の技術がイメージされやすい.</div><div><br /> ②NZのキウイ生産ではコントラクター企業が広く展開している.そこでは高品質キウイ生産に向けたモニタリング、栽培管理の改善指導を行う企業も存在して、その指導サービスが普及している.対照的に日本は家族経営の枠内(他人をできるだけ雇わない)でキウイ生産を行う. <br /><br /></div><div> ③NZではキウイ栽培が適地で行われる.対照的に日本ではミカン栽培の不適地で消極的にキウイを栽培する. <br /><br /></div><div> ④NZではキウイの一元的マーケティングが進み(Zespriへの統一)、キウイのコモディティ化を防ぐガバナンスが確立している.対照的に日本では県単位、産地ごとに小規模ブランドが乱立して、産地がお互いに疲弊しかねない市場構造になっている.</div><div><br /></div><div> こうした状況を踏まえ、日本のキウイ生産・流通がNZにもっと対抗できるためには、選果情報等の管理や連携が必要で、そこでキウイ生産でのDX化が求められてくると、末澤さんは考えているそうです.</div><div><br /></div><div> 末澤さんとしては、Orchard & Technologyの事業として、オリジナルの優良キウイ品種の栽培権利を農家に貸与して、それを用いる農家に対してはオンラインで栽培指導をおこなうことを構想されています.この指導は、下記の記事にありますように、機械学習を用いた「開花日、肥大、収量、品質、収穫時期」等に関する予測サービスや、栽培環境データの閲覧・分析サービスを農家に提供するという形をとるものです.このサービスシステムの構築では、キーウェアソリューションズの久保さんが大きく貢献されたそうです.</div><div><br /></div><div><div><span style="background-color: white; font-family: inherit;">ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号</span></div><div><a href="https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news002.html">https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news002.html</a></div></div><div><br /></div><div> Orchard & Technologyとしては、農家の販売収入からロイヤリティを払ってもらって、事業を成立させたいとのことでした.すでにこの事業が動き出しているそうです.</div></div></div></div></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-10240669817366050282021-01-28T22:53:00.006-08:002021-02-10T01:08:14.683-08:00学生調査実習②:熟練農業者の技能継承サービス(キーウェアソリューションズ様による) 1月14日の調査実習での講演内容について本記事②と次の記事③で説明します.<div><br /></div><div> まず調査実習の前半では、キーウェアソリューションズの久保さん、山根さんから、キーウェアソリューションズが取り組む農業分野のサービスについて説明をいただきました.その内容を要約して述べます.</div><div><div><br /><div><div> 近年農業従事者の高齢化、農業後継者の不足から、熟練農業者の技能がどんどん失われそうな状況にあります.熟練農業者の技は言葉で言い表しにくく、どこが作業のポイントなのか農業の初心者からは見えにくくなっていることで、熟練農業者の技能が伝わりにくくなっていると考えられます.その改善に向けて、キーウェアソリューションズでは熟練農業者の技能継承を支援するサービスを展開しているそうです.キーウェアソリューションズのHPにそのサービスの概要が載っています.</div><div><a href="https://www.blogger.com/#">https://www.keyware.co.jp/products_solution/search/agriculture/ogal-ai.html</a></div><div><br /></div><div> 最近でのその具体的な取り組み事例としては以下があります.</div><div><br /></div><div><b> 取り組み事例1:VRによるリンゴ剪定技術継承</b></div><div><b><br /></b><div> 青森県弘前市のリンゴ栽培では、高品質のりんごの安定的生産のため、高精度の剪定技術の習得を重視してきました.しかし、剪定を圃場で実際におこなって学習する機会が限られ、また、ベテランの農業者が剪定作業をしている様子が新規就農者にはとらえにくくなるという問題がありました.そこで、キーウェアソリューションズは、リンゴ剪定技術を新規就農者がVR(ヴァーチャルリアリティ)で学習するシステムを構築したとのことです.</div><div><br /></div><div> 具体的には、リンゴの樹・枝の3Dデータを作成して、そのデータをヘッドマウントディスプレイから視聴できるようにして剪定を学習するというシステムだそうです.これについて以下のような解説記事があります.</div><div><br /></div><div>青森県「青森りんご剪定技術を「仮想現実の中に」 700万本記憶する手法の確立」<a href="https://www.blogger.com/#">https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/attach/pdf/dream4-5.pdf</a></div><div><br /></div><div>慶応義塾大学社会・地域連携室「VR技術によるりんご剪定学習支援システムによる地域産業の振興と人材育成」</div><div><a href="https://www.blogger.com/#">http://www.community.keio.ac.jp/social/aomori/01.html</a></div><div><br /></div><div><div> このVRの学習システムに入った人は、仮想のリンゴ畑を見て回り剪定のシミュレーションを体験できます.VRでリンゴの樹を上から見下ろせる点などが剪定の学習には有用と評価されているそうです.</div><br /></div><div><b> 取り組み事例2:匠の技伝承システムによるキュウリ栽培技術継承</b></div><div><b><br /></b> 佐賀県では最近、トレーニングファームが設置され、研修生が自分でキュウリなどを育てながら2年間で栽培、経営のノウハウを習得するというシステムが導入されています.この紹介記事として以下があります.<br /></div><div><br /></div><div>マイナビ農業「【佐賀】 農業のイメージが変わる!? 肥沃な土壌&人の温かみが自慢。模擬経営や手厚い補助制度で就農を支援!」2021年1月14日号<br /><a href="https://www.blogger.com/blog/post/edit/7121341439124574650/8988992359961487481#">https://agri.mynavi.jp/2020_09_30_132699/</a><br /><br /></div><div>この記事の中に、佐賀県トレーニングファームの研修システムについて以下のような説明があります.<br /><blockquote>研修では、キュウリ栽培の基礎から段取り、栽培中の観察、天候に応じた複合環境制御装置の操作方法などを習得。これまで経験や勘に頼っていた栽培管理をデータ化して適性な対応を行なうことで、収量・売上金額ともに部会の平均値を上回るなど、研修生にとって大きな自信となる結果が得られています。</blockquote> こうした研修をおこなうには充実した学びの体制づくりが必要ですが、そこにキーウェアソリューションズが大きく関わっています.トレーニングファームに入った就農希望者は、栽培に関する基本的な考えと手法の理解(マニュアル)を学ぶだけでなく、熟練農業者と比べて自分が状況判断力でどこが劣っているかを厳しくチェックしてもらい、そこをどのように克服するかについても綿密な指導を受けることができます.キーウェアソリューションズでは、熟練農業者が重視する状況判断の対象を抽出する、学習コンテンツ用データを収集・整理する、基本知識テスト・問題解説の教材を作成するといった面で、このトレーニングファームの研修システムを支えているとのことです.</div><div><br /></div><div> 上記のようにICTを駆使して熟練農業者の技能継承サービスを展開するという考えは、以下の記事や著書でも述べられています.その社会実装でキーウェアソリューションズが活躍されてきたということが今回の講演でよく伺えました.</div><div><br /></div><div><div>島津秀雄氏「農業分野におけるICT活用の可能性」『学術の動向』2016年5月号</div><div><a href="https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/21/5/21_5_66/_pdf/-char/ja">https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/21/5/21_5_66/_pdf/-char/ja</a></div><div><br /></div><div>神成淳司氏「農業ICTの最新動向」『情報処理』58(9),pp. 818-822, 2017年.<br /><a href="https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=182917&file_id=1&file_no=1">https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=182917&file_id=1&file_no=1</a></div></div><div><br />神成淳司氏『ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業』日経BPP社,2017年.<br /><a href="https://www.blogger.com/#">https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/258870/</a></div><div>(ただし、ここでのAIは、Artificial Inteligenceの意味でなく、Agri-Infoscienceの略)</div><div><br /></div></div></div></div></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-15755200802733551682021-01-28T22:52:00.000-08:002021-01-28T22:52:13.849-08:00学生調査実習①:概要<p style="text-align: left;"> 香川大学農学部では、学生は2年次後期から3年次前期まで5つあるコースのどれかに分属する体制を取っています.5つあるコースのうち、生物生産科学コースには、作物、畜産、農業気象、農業経済、果樹、花卉、蔬菜などの研究室が集まっています.2020年度後期は生物生産科学コースに学生37名が分属中です.</p><p style="text-align: left;"> 学生が生物生産科学コースに分属すると、平日の午後3限目、4限目の大半は、生物生産科学コース向けの実験(略称:生産コース実験)と農場実習に充てられることになります.</p><p style="text-align: left;"> 今年度の後期では、この生産コース実験の枠のうち3回分が、私の担当(農業経済分野)の調査実習に振り当てられました.対象学生は2年次後半です.</p><p style="text-align: left;"> 以前、私は香川大学全学共通科目で「スマート農業の可能性を考える」という講義を担当した際、授業の教材を調べているうちに以下の文献にあたりました.</p><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white;">ITメディア「(前編)</span><span style="background-color: white;"><span style="font-family: arial;">キウイの収穫量・時期、AIがピタリと当てます──日本の農業をデータで改革、ある農家の野望」</span></span><span style="background-color: white;">2019年10月16日号 </span><a href="https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news001.html">https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news001.html</a></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; font-family: inherit;">ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号</span></div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news002.html">https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news002.html</a></div><p style="text-align: left;"> 今思い起こすとなんとも刺激的なタイトルが並んでいます.記事に登場する末澤克彦さんは香川県在住ですし、これはいったいどのような取り組みなのか?と私は興味を持ってきました.学生も関心を持ってくれるだろうと期待して、今回の調査実習では、末澤克彦さんに電話で調査実習へのご協力を依頼しました.するとご快諾をいただき、上の記事に登場しているキーウェアソリューションズ株式会社の久保康太郎さんと一緒に、生産コース実験の調査実習の枠内で、取り組み内容について講演して頂ける運びとなりました.この度はお二人のご厚意に心より感謝したいと思います.</p><p style="text-align: left;"> この講演が1月14日に行われましたが、その前(昨年12月16日)に準備として「事前演習」を行いました.また、講演の実施後の1月27日に「事後演習」として、講演内容の振り返りや教室での集団討論を行いました.「事前演習」と「事後演習」には末澤さん、久保さんは参加されず、私と学生とのやり取りで進められました.</p><p style="text-align: left;"> 「事前演習」では、上記の記事のおおよその内容、そのほか、機械学習とはどのようなものか、MicrosoftのAzureでは機械学習についてどのように使いやすいサービスが提供されているか等を私から概略的に学生に解説しました.機械学習の概要については、総務省が作成した以下の教材を用いて説明しました.</p><div style="text-align: left;">総務省「ICTスキル総合習得教材、人工知能と機械学習」</div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_3_5.pdf">https://www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_3_5.pdf</a></div><p style="text-align: left;"> この事前演習で学生から質問や関心事項を出してもらい、それを取りまとめて末澤さん、久保さんにお伝えして、本番(1月14日)の講演内容について調整していただくという流れを取りました.</p><p style="text-align: left;"> 1月14日の調査実習では、大学入学共通テストの実施準備のため香川大学で対面授業に制限がかかったので、学生は調査実習にオンラインで参加することを余儀なくされました.この日、末澤さんは香川大学農学部に来訪されて私の研究室から学生向けのオンライン講演を行いました.キーウェアソリューションズの久保さんは東京よりオンラインで学生向けにお話していただきました.</p><p style="text-align: left;"> コロナ禍以前、調査実習というと、私は農業の現場に携わる方から対面で聞き取りを行うことを当然視していました.コロナ禍がなかったら、今回のように、東京在住のIT専門家にオンラインで学生向けに講演していただくことなど、まったく思いもよりませんでした.</p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-33506936189717845412020-12-31T00:39:00.003-08:002020-12-31T01:04:57.566-08:00Farmers Business Network⑦:日本への示唆<p><span style="font-family: arial;">記事「Farmers Business Network⑥」からの続きです.</span></p><p><span style="font-family: arial;"><b>FBNの事業内容を参考にして日本で農業データアナリティクス事業をいかに進められるかを考えます. </b></span></p><p><span style="font-family: arial;">日本の農家の間でも生産管理上のデータを収集・送信・管理するための機器類・アプリの導入がすでに始まっていますが、FBNのように様々なデータを統合・蓄積できる段階には至っていません.</span><span style="font-family: arial;"><b>記事③で述べるような</b></span><span style="font-family: arial;"><b>「データの統合・蓄積」は日本では遅れていることがすでに多くの論者から指摘されています.そこに危機感がもたれて、2019年にWAGRI(農業データ連携基盤)が立ち上げられました.</b>WAGRIの設立意図については、そのHPに明確に述べられています.</span></p><p><span style="background-color: white; font-family: arial; letter-spacing: 0.3px;"></span></p><blockquote><span style="font-family: arial;">「農業のICT化が進む中で、海外、国内も含めICTベンダーや農機メーカー等から多様なシステムが開発されています.全体では環境データや作物情報、生産計画・管理、技術ノウハウ、各種統計等、幅広い農業データがありますが、システム間の相互連携がほとんどなく、形式の違うデータが個々に存在している状態です.そのため、統一性を図り、データを生きた情報として活用できるようにすることが期待されています」</span></blockquote><p></p><p><span style="font-family: arial;">出所:[16] WAGRI「WAGRIとは」</span><a href="https://wagri.net/ja-jp/aboutwagri"><span style="font-family: arial;">https://wagri.net/ja-jp/aboutwagri</span></a></p><p><span style="font-family: arial;"><span>この意図が叶って、「データの統合・蓄積」が日本でも十分に進んで農業データが豊富に集まっているとすれば、現在の日本のICTを駆使して「</span></span><span style="font-family: arial;">価格.com」の農業版のような形で、</span><span style="font-family: arial;">記事④、⑤で取り上げた資材の選択支援、資材購買は行えるでしょう.日本でのネックはやはり</span><span style="font-family: arial;">「データの統合・蓄積」ではないかと考えられます.</span></p><p>FBNのように「農民第一主義」でWAGRIが設立されていれば、日本の農民の間でのWAGRIの印象もだいぶ変わったかもしれませんが、WAGRIの協議会メンバーはICTベンダー、企業が非常に多いですから、農民第一主義の理念が掲げられることはありませんでした.WAGRIの将来的なビジョン、効果もほとんど見通せない状況で、WAGRIに対する期待も日本の農民の間では依然としてほとんど高まっていません.</p><p>そもそも日本はスマート農業の発展の梃を企業に委ねる方針を採ってきましたので、WAGRIのようなデータ連携活用に向けた団体を作ろうにも必ず企業の利害を組み込まざるを得ません.政府は2010年前後から農業への企業参入、農業と異業種の融合を積極的に進めてきましたが、農業のICT普及、スマート化では思わぬところに陥穽があったと言えます.</p><p>こうような経緯を考えると、FBNの日本支社を作ってもらって、そこに<span style="font-family: arial;">「データの統合・蓄積」をお任せしたほうが、データ活用の観点からまだましではないかと私には思えてきます.FBNには米国だけでなく、カナダ、オーストラリアの農民も参加しています.これらの国とは日本は農業技術体系も大きく異なるので、すぐにFBNの様々なデータアナリティクス事業が日本に適用できるとは期待できません.しかし、GAFAがあっさり日本へ進出して成功を収め、日本人にそれなりに恩恵が感じられていることを考えると、FBNの日本進出もあっておかしくはないように私には思えます.FBNの趣旨を日本国内で広く説明したら、日本でのFBNの事業展開に参加して日本の農業を変えたいと考える若者も多く現れるのではないでしょうか.彼らがFBNの日本版システムを数年かけて作れてしまうのではないかと期待したくなります.</span></p><p><span style="font-family: arial;"><b>日本でFBNに近い事業を行うにも、設立主体、その理念について、農民の立場に十分寄り添えるのかどうかが重要な条件になってくるように私には思えてなりません.そこを見落としてWAGRIに期待するにも限界があるのではないかというのが私の見立てです.</b></span></p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-15227329817137579372020-12-31T00:38:00.003-08:002020-12-31T15:48:47.869-08:00Farmers Business Network⑥:FBNにとっての課題<div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">記事「Farmer Business Network⑤」からの続きです.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">資料[5]に依拠して、</span><b><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">FBNにとっての課題について</span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">説明します.</span></b></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;">[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. </span><a class="ext" href="http://store.hbr.org/product/farmers-business-network-putting-farmers-first/217025" rel="noopener noreferrer" style="color: #a41034; text-decoration-line: none;" target="_blank">"Farmers Business Network: Putting Farmers First."</a><span style="color: #181818;"> Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)</span></span></div><p><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">これまでの記事では、種子、その他の栽培条件が収量や収支に与える影響、経営改善の手段に関する農民の判断に資するようなデータアナリティクス・サービスがFBNによっていかに提供されているかを述べました.これ以外に、</span></span><span style="font-family: arial;">収量の決まり方を予測する分析サービスや、収量改善に向けた栽培管理手段を農民に勧めるレコメンデーションサービスも行うことがFBNにとって考えられますが、FBNは設立当初にこうしたサービスを行わない方針を採りました.</span></p><p><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">この理由の第一は、様々な栽培環境にも適用できるような汎用的な収量</span><span style="font-family: arial;">予測モデルが存在しないので、FBNが収量予測サービスや栽培管理のレコメンデーションサービスを提供するにしても、農民の不満が必ず出てしまうことでした.第二に</span></span><span style="font-family: arial;">、もしも農民の不満がなるべく出にくいような精度の高い予測サービス、レコメンデーションサービスを行おうとすれば、FBN側のスタッフや設備で多大な負担が要り、農民に相当高額の加入料を求めなければならなくなります.その結果、FBNに参加する農民の数が限られ、これまでの記事で述べたような膨大な農業データに依拠したデータアナリティクスのサービス事業を成立させることが困難になると考えられます.</span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">ただし、一切の判断を農民任せにするのも不親切でしょう.上記の方針は文献[5]が書かれた2016年当時のもので、現在では、FBNの栽培専門家が、希望する農民に対して、生産データを追跡してアドバイスする事業も展開されているようです.その内容は以下のFBNのホームページでの説明から知ることができます.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[14] Farmers Business Network「Farm & Team Operations」</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.fbn.com/analytics/farm-team-operations">https://www.fbn.com/analytics/farm-team-operations</a></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">2015年にFBNは農業とビッグデータに関する会議を主催し、そこに多数の農民が参加して農民の間でFBNの認知度を高めるのに成功し、その後、事業拡大が大きく進みました.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">2020年時点で</span><span style="font-family: arial;">会員数が1万2千まで増えて資本増強も進んでいることが以下の</span><span style="font-family: arial;">記事で紹介されています.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[15] Bloomberg「<span style="background-color: white; font-weight: inherit; letter-spacing: -0.025em;">Farmers Business Network Raises Funds at $1.75 Billion Valuation」、2020年8月3日記事. </span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-08-03/farmers-business-network-raises-funds-at-1-75-billion-valuation">https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-08-03/farmers-business-network-raises-funds-at-1-75-billion-valuation</a></span></div><p><span style="font-family: arial;">資料[5]によると、2016年当時、FBNは事業展開に関する課題として以下を挙げていました.</span></p><p><span style="font-family: arial;">1) 季節性:農繁期に農民がFBNによるデータアナリティクスのサービスを利用しにくくなるので、FBNが効果を発揮にしにくくなります.</span></p><p><span style="font-family: arial;">2) FBNのチームに参加する人材の確保:FBNが求める人材としては、企業家的で、技術に精通している、FBNのミッションを伝えられるなど、条件が厳しくなってしまいます. </span></p><p><span style="font-family: arial;">3) FBNへの参加料金額は経営規模によらない一律でいいのか:面積が広い農民であれば少しの知識、情報でも莫大な利益を得られますから、彼らに課す料金を高めてもいいようにも思えます.しかし料金引き上げは「農民第一主義」に反し、FBNの評判を傷つけるかもしれません.</span></p><p><span style="font-family: arial;">4) </span><span style="font-family: arial;">FBNは農民にアドバイスすべきか、それとも情報提供にとどまるべきか.</span><span style="font-family: arial;">FBNは</span><span style="font-family: arial;">農民に奉仕できる経路をいくつも持ちます.具体的には、データサイエンティスト</span><span style="font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">コンサルタント</span><span style="font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">仲介業者</span><span style="font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">金融業者</span><span style="font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">交渉家などの役割を備えますが、様々な役割をどう折り合いをつけるのかが問題になります.</span></p><p><span style="font-family: arial;">これまでのFBNに関する記述内容を全体的に振り返りますと、FBNは米国農業の問題点を鋭く突いて、高邁な理念を掲げてからユニークな事業を展開していることがわかります.</span><span style="font-family: arial;">農民第一主義</span><span style="font-family: arial;">の使命を果たすために</span><span style="font-family: arial;">いかにあるべきかを根底に据えて事業に取り組むことから、FBNは今後も発展することが期待されるのではないでしょうか.</span></p><p><span style="font-family: arial;">以上でFBNの紹介を終わります.</span></p><p><span style="font-family: arial;">FBNが日本の農業データ活用、スマート農業にどのような示唆を与えるのかについて、次の記事⑦で簡単に考察したいと思います.</span></p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-91407459197591346932020-12-31T00:36:00.001-08:002020-12-31T01:00:11.973-08:00Farmers Business Network⑤:資材購買、融資、生産動向分析<p><span style="font-family: arial;">記事「Farmers Business Network④」からの続きです.</span></p><div><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">資料[5]に依拠して、</span><b><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">FBNのその他の事業について</span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">説明します.</span></b></div><div><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"><span style="color: #181818;">[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. </span><a class="ext" href="http://store.hbr.org/product/farmers-business-network-putting-farmers-first/217025" rel="noopener noreferrer" style="color: #a41034; text-decoration-line: none;" target="_blank">"Farmers Business Network: Putting Farmers First."</a><span style="color: #181818;"> Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)</span></span></div><div><br /></div><div><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">前の記事④で述べましたように、FBNに参加する農民は、</span><span style="font-family: arial;">種子や資材の実際の価値がどれほどかについて、また、</span><span style="font-family: arial;">種子・資材価格の差異、分布状況について知ることが可能になります.</span><span style="font-family: arial;">農民はこれらに基づいて資材調達の交渉を行えます.また、異なる種類の種子、資材を比較して収益改善につながるような種子、資材を選ぶことが可能になります.その購入の際に、<b>種子、農薬をFBN経由で購入できるようにするサービスが、FBNでは提供されています.</b></span></span></div><div><span style="font-family: arial;">FBNのホームページでの資材購入画面は以下です.</span></div><div><span style="font-family: arial;">[12] Farmers Business Network「Buy Inputs: Chemicals」</span></div><div><a href="https://www.fbn.com/direct/products" style="font-family: arial;">https://www.fbn.com/direct/products</a></div><div><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="font-family: arial;">FBN経由での資材購入の手続きは、農薬の場合、以下のようになります.</span></div><div><span style="font-family: arial;">1)FBNに参加している農民が、自分が必要とする農薬の種類をFBNに知らせる.</span></div><div><span style="font-family: arial;">2)FBNのスタッフが、農薬の販売店と提携して価格帯を分析し、最安値の製品を見つける.</span></div><div><span style="font-family: arial;">3)農民の農場へ直接にその農薬を届ける.</span></div><div><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="font-family: arial;"><span>ここでは<b>FBNは「fast, simple, and hassle free(速く、シンプルに、手間がかからない)」を掲げて、</b></span><b>農民を面倒で苦痛な交渉から解放するとしています.<span>FBNが取引ごとに徴収するマージンは少ないので、上記のようにして</span>農薬を安値で市場で調達できたとき、農薬購入費の節約分のほとんどが農民に還元されるそうです</b>.</span></div><div><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="font-family: arial;"><span>FBNは、農民が一般の販売店から購入した農薬の価格データを収集して、</span><span>その価格帯のデータを農民</span><span>に</span><span>提供します.</span><span>農民は</span><span>、</span><span>農薬の市場価格と</span><span>、</span><span>FBN経由で購入した場合の農薬価格とを比較した上で、農薬を購入できるようになります.</span>農民にとっては、FBNが提示する農薬価格よりも割高で不利な価格で一般の販売店から農薬を購入することは避けられます.<b>農民は、一般の販売店に対しても、FBN経由で購入する場合の価格を示して、もっと値下げするようにと交渉することも可能です.FBNが提示する農薬価格は、農民が一般販売店を相手に農薬価格を交渉する際のボトムラインとして機能し、農民が不利な農薬購入取引を迫られる可能性を大きく減らせます.この点でも、FBNでは資材価格の透明性確保が図られていると言えます.</b></span></div><div><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="font-family: arial;">2016年1月にFBNがこの購買事業を開始すると8週間で600万-700万ドルの購買があり、2016年の一年間で2500万ドルの購買に達する見込みとなりました.</span><span style="font-family: arial;">資材費の節約が顕著なので、</span><span style="font-family: arial;">会員農民からの支持が高いそうです.</span></div><div><br /></div><div><span style="font-family: arial;">あと二つだけFBNの事業を紹介したいと思います.</span></div><div><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="font-family: arial;">FBNは農民へのファイナンス事業を行っていますが、これは農民に融資をおこなう投資家を紹介するという仲介の形をとります.融資の金利は競争的水準に抑えて 過度に高い金利をとることはしないようにします.</span><span style="font-family: arial;">FBNのホームページでの融資事業の説明画面は以下です.</span></div><div><span style="font-family: arial;">[13] Farmers Business Network「Financing」</span></div><div><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.fbn.com/financing">https://www.fbn.com/financing</a></span></div><div><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div><span style="font-family: arial;">また、<b>FBNは、端末のショートメッセージサービス(SMS)を使って農民に頻繁にアンケート調査を行い、作付け進行、病害の恐れ等を尋ねています.その回答結果は</b></span><span style="font-family: arial;"><b>FBNが集計して、農民に直近の生産・栽培動向について情報提供します.</b></span><span style="font-family: arial;">従来、農民が、</span><span style="font-family: arial;">こうした直近の生産・栽培動向を知ろうとすると、ほとんど</span><span style="font-family: arial;">近隣の知り合いの農民から情報を受けるしかありませんでしたが、上記のFBNのサービスによって、広域に散らばる多数の会員農民から生産情報を提供してもらい、自分にとってよく知らなかった、真新しく思える情報に触れることも期待できます.</span><span style="font-family: arial;">農民にとってこのサービスも喜ばれているそうです.</span></div><p>以上でFBNのデータアナリティクス事業の説明は終わります.次の記事⑥で、FBNにとっての課題を、その次の記事⑦で日本にとっての示唆を述べたいと思います.</p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-6675469792624467992020-12-31T00:35:00.001-08:002020-12-31T01:00:00.071-08:00Farmers Business Network④:資材(主に種子)選択の支援<div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="background-color: white; color: #181818;">「Farmers Business Network③」からの続きです.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">資料[5]に依拠して、</span><b><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">FBNのデータアナリティクス事業のうち、資材(主に種子)の選択を支援するサービスの内容について</span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">説明します.</span></b></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="background-color: white; color: #181818;">[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. </span><a class="ext" href="http://store.hbr.org/product/farmers-business-network-putting-farmers-first/217025" rel="noopener noreferrer" style="background-color: white; color: #a41034; text-decoration-line: none;" target="_blank">"Farmers Business Network: Putting Farmers First."</a><span style="background-color: white; color: #181818;"> Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)</span></span></div><p><span style="font-family: arial;">FBNの設立時から数百の農民がFBNに加入したおかげで、収量、栽培条件など膨大で多種多様な農業データがFBNのデータベースに入るようになりました.</span></p><p><span style="font-family: arial;">FBNは</span><span style="font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">収量、資材投入量、土壌条件、耕作方法などのデータを農民が分析して、</span><span style="font-family: arial;">他の農場との間、特に自分と似た栽培環境を持った農場との間で、栽培状況を比較して、自分の</span><span style="font-family: arial;">栽培方法が良いかの判断材料に使ってもらえるように試みます. </span></p><p><span style="font-family: arial;">FBNによる「Seed Finder」というサービスでは、<b>すべての種子を対象にして、農民が種子ごとに収量、栽培条件(土壌、水利)などを指定して絞り込んで収量データを得ることを可能にしています.</b>例えば、</span><span style="font-family: arial;">品種を固定して、面積当たり窒素投入量、播種量、植え付け日、気温など様々な栽培条件に応じて収量がどのように変わるかを算出、グラフ化すると、参加農民はその品種に対応した栽培方法の改善手段について探ることが可能になります. </span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">実際の比較の説明・表示の様子は、以下のFBNのホームページでの「FBN Seed Finder」、「Benchmarking」「FBN Maps & Yield Analytics」というところから伺えます.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[10] Farmers Business Network「Seed & Agronomic Analytics」</span></div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.fbn.com/analytics/seed-agronomics"><span style="font-family: arial;">https://www.fbn.com/analytics/seed-agronomics</span></a></div><p><span style="font-family: arial;"><b>比較の際には、品種、肥料の種類、面積当たり播種量、栽培時期、土壌の条件などを細かく指定するなどして、自分の比較判断基準を自由に採れるようになっているため、例えば、農民が種子の違いの効果を見たいとき、種子以外の条件をうまく統制して自分の栽培条件に合わせたデータだけを抽出してその中だけで種子の違いの効果を見ればよいことになります.</b>これによって、種子の違いの効果を他の要因と混同してとらえてしまう恐れが相当減ります.統計学的なデータ解析では、関心のある要因(上記の例では種子の違い)の影響を見たいため、こうした条件の統制を行うことが重視されます.</span><span style="font-family: arial;">種子に限らず他の資材でも、それを選ぶかどうかで収益にどのような違いがみられるかを同じように分析できます.</span><span style="font-family: arial;">FBNでは、膨大なデータを収集した上で、農民がこうした条件の統制にもとづき特定の要因の影響分析をおこないやすくなるように、データ抽出処理、計算結果の表示機能に相当力を入れているようです.</span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><b>FBNに参加する農民は様々な投入量、収量、資材費のデータをFBNに提供するため、FBN側ではこのデータを使って農民ごとに生産費を計算することが可能になります.</b>上記の資料[10]のFBNによる事業紹介に掲載されている、「A Comprehensive Profit-Enhancing System」がこの計算に該当します.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">記事</span><span style="font-family: arial;">②で述べたように、従来は種子等の資材市場が地理的に分断され、農民は</span><span><span style="font-family: arial;">メーカーから提供される新しい種子、資材が自分に合っているかを見通せなくなりがちでした.</span></span><span style="font-family: arial;">種子メーカーの営業担当者が種子の優れた点を農民に強調して、農民は「</span><span style="font-family: arial;">勧められたから選ぶ」「ほかの</span><span style="font-family: arial;">農民が多数選んでいるから自分も選ぶ」</span><span style="font-family: arial;">という受け身の姿勢に陥りがちでした.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">これに対して、<b>FBNに参加すると、農民は、選んだ種子、資材の種類など</b></span><b><span style="font-family: arial;">栽培方法に応じて収量や生産費がどう変わるかについて情報が得られます</span><span style="font-family: arial;">.</span></b><span style="font-family: arial;"><b>農民は他地域との種子・資材価格の違い、それらの分布状況を知ることもできます.これらは、農民が</b></span><span style="font-family: arial;"><b>種子同士を比較して収益改善につながるような種子を選ぶことを可能にします.また、</b></span><span style="font-family: arial;"><b>農民が種子・資材を調達する際、価格交渉に資する材料にもなります.以上からFBNに参加する農民の資材・種子の選択・調達については、従来よりも透明性が飛躍的に高まってくる</b>と考えられるわけです.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">以上の点に関してFBNのホームページ上での説明は以下です.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span>[11] Farmers Business Network「Input Price Transparency」</span><a href="https://www.fbn.com/analytics/input-price-transparency">https://www.fbn.com/analytics/input-price-transparency</a></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">日本では「価格.com」などの商品レビューサイトは参加者も多く以前から多くの日本人に馴染み深いです.上記のFBNのサービスは、「価格.com」の農業版にたとえることも可能でしょう.</span></div><p><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">FBNによる主なデータアナリティクス事業は、上記と、前の記事</span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">③で述べた内容にほぼまとめられます</span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">.</span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">次の記事「Farmers Business Network⑤」では、そのほかのFBNの事業内容について説明します.</span></p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-4050064049117557462020-12-31T00:31:00.004-08:002020-12-31T00:59:50.410-08:00Farmers Business Network③:データの統合・蓄積<p><span style="font-family: arial;">「Farmers Business Network②」からの続きです.</span></p><p><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">資料[5]に依拠して、<b>FBNのデータアナリティクス事業のうちデータの統合・蓄積にかかわる部分について</b>説明します.</span></p><p><span style="font-family: arial;"><span style="background-color: white; color: #181818;">[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. </span><a class="ext" href="http://store.hbr.org/product/farmers-business-network-putting-farmers-first/217025" rel="noopener noreferrer" style="background-color: white; color: #a41034; text-decoration-line: none;" target="_blank">"Farmers Business Network: Putting Farmers First."</a><span style="background-color: white; color: #181818;"> Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)</span></span></p><p><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">記事②で述べたように、FBNの創設者二人(</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">DeshpandeとBaron)は、</span>米国農民が直面する重要な問題には、</span><span style="font-family: arial;">資材市場の寡占化、農業データアナリティクスの未整備、</span><span style="font-family: arial;">それに伴う農業者の資材の選択機会の制限などが挙げられる、と考えます.</span></p><p><span style="font-family: arial;">そこで、二人がFBNの事業を構想しますが、<b>その理念として、「Farmers First(農民第一主義)」を掲げます.</b>後で詳しく述べますが、FBNは、農民から農業データを収集した上でそれを使ってアナリティクス事業を行おうとします.</span><span style="font-family: arial;">従来から、農業データを求める資材企業が多くありましたが、資材を後で農民に売りつけたり</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、農産物を農民から買い付けたりするときの判断材料に使う</span><span style="font-family: arial;">ために農民から農業データを収集している、ととらえられるケースが多々見られました.<b>企業が農民をお金儲けの対象としてみなしてデータを収集しようとしていると農民が予想しているとしたら、農民は企業にデータを喜んで提供してくれるはずがありません.このため、</b></span><span style="font-family: arial;"><b>FBNは「農民第一主義」をモットーにして、農民の立場に十分に寄り添うことを名実ともに示しながら農民からデータ提供してもらうことを目指しました</b>.</span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">データアナリティクスに関するFBNの戦略の概要は、以下のようにまとめられます.</span></div><div style="text-align: left;"><b><span style="font-family: arial;">1) 農業データを農民から多種大量に収集して</span><span style="font-family: arial;">クリーニングする<span style="color: #181818;">.</span></span></b></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><b>2) 異なる精度のシステムからのデータを使いやすいインターフェースに統合する.</b></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><b>3) そうして統合・集計したデータ全体で洞察を得られるようにする.例えば</b></span><b><span style="color: #181818; font-family: arial;">、種子や土壌の種類ごとの栽培データを見て、農民が自分の土壌</span><span style="font-family: arial;">に合わせて収量が良い種子を選択しやすくする.また、農民が資材</span><span style="font-family: arial;">を選ぶ能力、資材メーカーとの</span><span style="font-family: arial;">価格交渉力を強められるようにする.</span></b></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">記事②でも触れましたが、</span><span style="font-family: arial;">従来から農民の農業データの活用機会は限られてきました.そうした状況を、上述の事業戦略で打開しようとしています.</span><span style="font-family: arial;">二人は、テストケース</span><span style="font-family: arial;">として、</span><span style="font-family: arial;">種子と収量の関係に関するデータ分析をおこない、その結果をレポートにまとめて、</span><span style="font-family: arial;">農民に対してこのレポートを購入するためにどれくらいの料金を支払う意思があるかを尋ねていました.そこで農民が平均千ドル程度の支払い意思があるという好結果が得られていました.</span></div><p><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">FBNの事業を実際に行うには、スタッフ雇用、機器設備投資で相当な事業資金が必要になります.FBNの創設者二人(</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">DeshpandeとBaron)は、上記のように「農民第一主義」を掲げるFBNの事業にもとづいてネットワークと情報サービスが整備されれば、</span></span><span style="font-family: arial;">農民がエンパワーされ</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">農業が変わるという点を、</span><span style="font-family: arial;">投資家にアピールします.さらに、上記のテストケースの結果として農民からのそれなりのサービス料金回収が見込まれることを示せたので、<b>投資家から事業への支持が得られて、二人は</b></span><span style="font-family: arial;"><b>資金獲得に成功します.</b></span><b><span style="font-family: arial;">2014年に二人は、</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">Kleiner Perkins Caufield & Byers (KPCB、</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">Deshpandeが以前勤務</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">)から</span><span style="font-family: arial;">450万ドル資金を受けてFBNの事業をスタートさせます.</span></b></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">FBNにおけるデータ利用の実際について見ていきます.<b>FBNの設立当初、農場の経営規模によらず加入する農民には一律500ドルの年間加入契約料を課すことにしました</b>(ただし、後に値上げされます).農民はFBNに加入すると、オンラインプラットフォームからデータをアップロードできます.</span><span style="font-family: arial;"><b>F</b></span><span style="font-family: arial;"><b>BNは、栽培データ、機械データに限らず、どのようなソースからのデータであっても受け付けるという方針を取ります</b>.</span><span style="font-family: arial;">FBNは、農業機械のデータ利用を進めるJohn Deere社との間でAPIの使用許可を得ます.<b>John Deere社のトラクターを持つ農民は</b></span><span style="color: #181818; font-family: arial;"><b>、</b></span><span style="font-family: arial;"><b>その機械のICTデータベースをFBNのプラットフォームにつなげれば、機械使用のデータも一緒に利用できるようになります</b>.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">F</span><span style="font-family: arial;">BNに所属するデータアナリストはこうして得られる様々な種類のデータをシステムに統合して価値を付与しつつ農民に提供していきます.</span><span style="font-family: arial;">この一環として、</span><span style="font-family: arial;">圃場ごとの栽培特性のマッピングがあります.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">以下はFBNのホームページでのデータの蓄積、統合、マッピングの概説です.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[9] Farmers Business Network「Data </span><span style="font-family: arial;">Storage, </span><span style="font-family: arial;">Integration & Security」 </span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.fbn.com/analytics/data-storage-integration">https://www.fbn.com/analytics/data-storage-integration</a></span></div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">FBNは、<b>農民の</b></span><span style="font-family: arial;"><b>データの保護にコミットメントしています.</b>特に、</span><span style="font-family: arial;">モンサントなどの大手資材メーカーにデータを売却しないことにコミットメントし、農民には自分がFBNに預けたデータの利用を中止させる権限が保証されています.また、会社(FBN)の所有者が変化しても、データ利用方法を変化させるに際しては、FBNに加入している農民の許可が要るとされています. </span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;"><b>FBNの中心的信条(central tenets)</b>は、以下の四点です.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">1) <b>透明性(transparency)</b></span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">2) <b>共有(sharing)</b></span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">3) <b>協働(collaboration)</b></span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">4) <b>知識の民主化(democratization of knowledge)</b></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">データを多くの農民から集めてまとめた上でその解析結果を農民が共同で使えるようにするという点では、「共有」「協働」が意識されていると言えるでしょう.また、マッピングのほか、FBNによるデータ提供の仕方は簡易、平明で農民にも扱いやすいため(この点については次の記事でもさらに詳しく説明)、その点では「知識の民主化」がよく意識されていると言えます.</span></span><span style="font-family: arial;">「透明性」については、それまで農民が農業資材企業の半ば言いなりになって、なぜその資材価格を受け入れなければならないのかが農民にとってわかりにくかったのですが、FBNが資材価格のデータを「見える化」してそれを解消しようとしている点に表れます(これも次の記事で説明します).</span><b style="font-family: arial;">こうした農業データアナリティクス事業の考え方は、日本のスマート農業の限界打破を考える上で非常に参考になります.</b></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="font-family: arial;">次の記事</span></span><span style="font-family: arial;">「Farmers Business Network④」</span><span style="font-family: arial;">では、FBNのデータアナリティクス事業の内容についてさらに紹介します. </span></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-75439653697903331652020-12-31T00:29:00.007-08:002020-12-31T00:58:25.310-08:00Farmers Business Network②:米国農民が直面する課題<div style="text-align: left;"><span><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">「Farmers Business Network①」からの続きです.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">資料[5]に依拠して、<b>米国農民が直面する課題を、FBNの創設者がどのようにとらえたか</b>を説明します.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. </span><a class="ext" href="http://store.hbr.org/product/farmers-business-network-putting-farmers-first/217025" rel="noopener noreferrer" style="background-color: white; color: #a41034; font-family: arial; text-decoration-line: none;" target="_blank">"Farmers Business Network: Putting Farmers First."</a><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"> Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)</span></div><p><span style="font-family: arial;"><span>資料[5]によると、米国では農業協同組合が3千程度あり、大半が共同販売をおこない、一部は農業コンサルタントをおこなっています.米国では</span><span><span>農業協同組合が広まっているにも関わらず</span></span><span style="color: #181818;">、<b>農業資材市場、農産物市場で</b></span><span><b>寡占化が進んでいます.</b></span></span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span>資料[5]が執筆された<b>2016年当時、</b></span><span><b>モンサントとデュポンで</b></span><span><b>トウモロコシ種子市場の7割を支配していました</b>.</span><span>他のブランドの多くがモンサントからライセンスを得て開発・供給されているため</span><span style="color: #181818;">、同市場における二社の実質的なシェアは</span><span>もっと高くなっていました.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">※注:</span><b><span style="font-family: arial;">モンサントは、2018年にドイツの</span><span style="font-family: arial;">バイエル</span><span style="font-family: arial;">社に買収され、</span><span style="font-family: arial;">デュポンは、2019年にダウ、パイオニアと統合して</span><span style="font-family: arial;">コルテバ・アグリサイエンス</span></b><span style="font-family: arial;"><b>社になっています</b>.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[7] 農業協同組合新聞(2018年6月18日)「バイエルによるモンサントの買収が完了」</span></div><div style="text-align: left;"><a href="https://www.jacom.or.jp/nouyaku/news/2018/06/180611-35464.php"><span style="font-family: arial;">https://www.jacom.or.jp/nouyaku/news/2018/06/180611-35464.php</span></a></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[8] 農業協同組合新聞(2019年7月19日)「</span><span face="メイリオ, Meiryo, "ヒラギノ角ゴ Pro", "Hiragino Kaku Gothic Pro", sans-serif">新生コルテバ・アグリサイエンスが今後の展開と事業を紹介」</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.jacom.or.jp/nouyaku/news/2019/07/190719-38657.php">https://www.jacom.or.jp/nouyaku/news/2019/07/190719-38657.php</a></span></div><p><span style="font-family: arial;">資料[5]は、米国の種子</span><span style="font-family: arial;">市場で寡占化が進んだ要因として、1985年に米国連邦最高裁で遺伝子組み換え(GM)種子の開発特許を認める判決が出されたこと、</span><span style="font-family: arial;">バイオテクノロジーの研究開発費が高いことを挙げています.これにより種子市場で参入障壁ができて寡占化へ進んだという説明です.</span></p><p><span style="font-family: arial;">前者の判決の効果は大きく、<b>米国では「</b></span><span style="font-family: arial;"><b>種子警察(seed police)」と揶揄されるほど</b></span><span style="font-family: arial;"><b>大手種子メーカーがGM種子の使用違反をチェックする体制を強化しています</b>.種子の保存、再販売、交配を禁止し、農村部で</span><span style="font-family: arial;">監視カメラを設置し、聞き込み調査をするなどして使用違反がないかを取り締まろうとしています.</span><span style="font-family: arial;">2013年にモンサントは種子の使用違反を訴える訴訟を142件も起こし、ほぼ半分で勝訴していました.</span></p><p><span style="font-family: arial;">農業資材市場で寡占化が進むのに並行して、大手種子・農薬メーカーが</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、資材の</span><span style="font-family: arial;">販売店、農業協同組合に対して、農業資材に関する農民の選択肢を制限するように誘導してきました.こうして</span><b><span style="font-family: arial;">農民にとっては</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、農業資材の</span><span style="font-family: arial;">取引に関する選択機会が制限される傾向も強まりました.</span></b></p><p><span style="font-family: arial;">モンサントはラウンドアップ耐性のGM種子を開発販売を近年強化してきました.この効果としては、それまでは雑草管理のために農民にとって耕起栽培が必要でしたが、ラウンドアップで雑草管理を済ませられるので不耕起栽培に置き換わり、農民が農作業負担を大きく減らせるようになったことが挙げられます.しかし、<b>ラウンドアップ耐性のGM種子を買うと一緒にラウンドアップも買う必要が生じます.米国の農民は大手種子・農薬メーカーに囲い込まれてそこに依存する傾向を強めて</b></span><span style="font-family: arial;"><b>資材費の負担を増やすようになってきました</b>.</span></p><p><span style="font-family: arial;">こ</span><span style="font-family: arial;">の取引では種子+ラウンドアップといった形で抱き合わせ販売が行われるので、<b>農民にとっては資材費の内訳(資材の種類ごとの本当の価格)がわかりにくくなるという問題も生じました.</b></span></p><p><span style="font-family: arial;">大手種子メーカーの提供する種子の種類は非常に多く</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、それぞれの</span><span style="font-family: arial;">特徴の違いが細かくなります.また、</span><span style="font-family: arial;">農業の生産環境、土壌、栽培管理方法は農場ごとに様々です.</span><span style="font-family: arial;">米国農民は地理的に分散して居住しているため、お互いに意見交換したり協調したりする機会が非常に限られてきました.</span><span style="font-family: arial;">農業資材に関しては消費者レポートに相当するものは米国でもありませんでした.</span><b><span style="font-family: arial;">各地で新しい農業資材がどのような効果を発揮しているか、それがどのような価格で取引されているかについて個々の農民が把握しにくくなり、農業</span><span style="font-family: arial;">資材市場が地域的に分断化される傾向がみられました.</span><span style="font-family: arial;">種子を選ぶ際に農民にはさまざまな種類の種子を比較する手段がないので、</span><span style="font-family: arial;">農民にとってはメーカーから提供される新しい種子が自分に合っているかどうかを見通せなくなりました.</span></b></p><p><span style="font-family: arial;">1990~2006年において農業資材の価格上昇率は、化学肥料で2.6%</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">化学農薬で3.5%</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">種子で4.0%でした.それが</span><span style="font-family: arial;">2006~2015年になると、価格上昇率は、化学肥料で8.1%</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">化学農薬で5.7%</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">種子で11.3%とかなり高まりました.</span><b><span style="font-family: arial;">上述のように取引の選択機会が制限され、資材の効果がよく見通せない</span><span style="font-family: arial;">状況で、こうした資材価格の高騰を受け入れてそれを買い続けなければならないという状況に米国農民は置かれます.</span></b></p><p><span style="font-family: arial;">FBNの創設者二人(</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">DeshpandeとBaron)</span><span style="font-family: arial;">は、<b>こうした状況の打開のため、まず、</b></span><b><span style="font-family: arial;">農業</span><span style="font-family: arial;">データを活用して、</span><span style="font-family: arial;">上述のように農民が資材の効果や価格をよく把握できない状況を解消しなければ</span></b><span style="font-family: arial;"><b>と考えます</b>.</span></p><p><span style="font-family: arial;">ところが、<b>彼らは、農場でのデータ分析を手伝っているうちに、従来の米国農業界の農業データ利用では以下のような問題が備わっていたことに気づきます.</b></span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span>1) 農場の収量</span><span style="color: #181818;">、</span><span>土壌</span><span style="color: #181818;">、</span><span>水分</span><span style="color: #181818;">、</span><span>窒素などのデータが政府から公開されるが、それがバラバラに利用されている.また、色別にマップ化されたデータだけしか利用できないことも多い.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span>2) 農業</span></span><span style="font-family: arial;">データの統合、相互利用ができない</span><span style="font-family: arial;">.</span></div><p><span style="font-family: arial;">3) 農民がほとんど自分の農場の過去のデータしか利用できていない.他の農場との比較検討ができないので、資材の種類ごとの使用効果を把握しにくい.(</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">このほかに、</span><span style="font-family: arial;">大学の圃場実験の結果や</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">、</span><span style="font-family: arial;">種子企業の実験結果も農民に利用されることはあるが、こうした実験の結果は企業に都合がいいように操作されている可能性が完全には否定できない).</span></p><p><span style="font-family: arial;"><span>4) 農業データの分析に要するソフトウェア</span><span style="color: #181818;">、</span><span>計算処理能力が個々の農民の能力を超えている.</span></span></p><p><span style="font-family: arial;"><span><b>このように問題だらけと思える状況ですが、彼らはそこから、農業データアナリティクス事業に対して農民からの潜在的なニーズが大きい、そのため新事業を起こす好機だと捉えます.そして、FBNの事業を着想するようになります.</b></span></span></p><p><span style="font-family: arial;">二人の青年が農業界のデータ利用の根本的問題に一気にメスを当てようと取り組み奮闘する経緯は、非常に興味深いものがありますね.</span></p><p><span style="font-family: arial;"><span style="background-color: white; color: #181818;">次の記事「Farmers Business Network③」では、二人がFBNの構想をどのように現実化していったかを見ていきます.</span></span></p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-13877343952919617682020-12-31T00:26:00.006-08:002020-12-31T00:59:13.400-08:00Farmers Business Network①:概要、創業者<div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><span style="background-color: white; color: #181818;">本ブログでは日本国内のスマート農業技術に含まれるデータ分析機能に関する記事を多くアップしてきましたが、</span><span style="background-color: white; color: #181818;">海外の先進事例についても触れたいと思います.</span></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><span style="background-color: white; color: #181818;">その際特に私が注目したいのが、</span></span><span style="background-color: white; color: #181818;">米国の<b>Farmers Business Network (FBN)</b>です.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">FBNのホームページには、「About FBN」がまとめてあります.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[1] Farmers Business Network「About FBN」</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.fbn.com/about">https://www.fbn.com/about</a><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">上では、<b>FBNのミッション</b>として、<b>情報を民主化すること、偏らないアナリティクスを提供すること、また、農民のビジネスのために競争力を創出することによって、農民を第一に据えるような農業の未来を創出すること</b>、が掲げられています.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">FBNについて紹介する動画もあります</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[2] Farmers Business Network「Farmers Business Network-Overview-」</span></div><ytd-video-meta-block class="title style-scope ytd-channel-video-player-renderer byline-separated" style="background-color: #f1f1f1; color: #030303; display: flex; flex-direction: column; font-size: 10px;"><div class="style-scope ytd-video-meta-block" id="metadata" style="background: transparent; border: 0px; display: flex; flex-flow: row wrap; margin: 0px; padding: 0px;"><div class="style-scope ytd-video-meta-block" id="metadata-line" style="background: transparent; border: 0px; color: var(--ytd-metadata-line-color, var(--yt-spec-text-secondary)); display: flex; flex-wrap: wrap; font-size: var(--ytd-thumbnail-attribution_-_font-size); font-weight: var(--ytd-thumbnail-attribution_-_font-weight); letter-spacing: var(--ytd-thumbnail-attribution_-_letter-spacing); line-height: var(--ytd-thumbnail-attribution_-_line-height); margin: 0px; max-height: calc(2 * var(--yt-thumbnail-attribution-line-height, 1.8rem)); max-width: 100%; overflow: hidden; padding: 0px; text-transform: var(--ytd-thumbnail-attribution_-_text-transform);"></div></div></ytd-video-meta-block><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=nx0rIzODEQA">https://www.youtube.com/watch?v=nx0rIzODEQA</a></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818;"><span style="font-family: arial;">(CromeにあるYoutube動画の字幕機能を使えば、不完全ですが日本語訳も視聴できます)</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">FBNを紹介した日本語記事もいくつか見られますが、特に目についたものを二つ挙げます.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[3] </span><span style="font-family: arial;">フォーブスジャパン</span><span style="font-family: arial;">「グーグルも支援のアグリテック企業の『農業を民主化する夢』」、2018年8月19日号記事.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://forbesjapan.com/articles/detail/22550">https://forbesjapan.com/articles/detail/22550</a><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">[4] </span><span style="font-family: arial;">フォーブスジャパン</span><span style="font-family: arial;">「</span><span style="background-color: white; font-family: arial;">次のユニコーン企業と評される、米国発のビジネスモデル図解4選」、</span><span style="font-family: arial;">2017年12月28日号記事.</span></div><div style="text-align: left;"><a href="https://forbesjapan.com/articles/detail/19168"><span style="font-family: arial;">https://forbesjapan.com/articles/detail/19168</span></a></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="background-color: white; color: #181818;"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=nx0rIzODEQA"><br /></a></span><span style="background-color: white; color: #181818;"><span style="color: #181818;"><span>このほか、米国の経営学の専門家が、FBNの設立経緯や、事業のねらいについて詳しく解説した記事として、以下があります.<br /></span></span><span style="color: #181818;">[5] Cole, Shawn, and Tony L. He. </span><a class="ext" href="http://store.hbr.org/product/farmers-business-network-putting-farmers-first/217025" rel="noopener noreferrer" style="color: #a41034; text-decoration-line: none;" target="_blank">"Farmers Business Network: Putting Farmers First."</a><span style="color: #181818;"> Harvard Business School Case 217-025, September 2016. (Revised August 2018.)<br /></span></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;">以下では資料[5]に大きく依存しながらFBNについてさらに説明を続けます.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><span><span style="color: #181818;"><br /></span></span></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><span><span style="color: #181818;">資料[5</span></span></span><span><span style="color: #181818;">]によると、FBNの事業の特徴としては、</span></span><span style="color: #181818;"><b>クラウドベースのデータ解析を通じて、偏らない情報を農民に提供して</b></span><span style="color: #181818;"><b>農民の意思決定能力の改善を図ることが挙げられます</b>.その具体例としては、</span><span style="color: #181818;">会員の農民が提供したデータを使ってFBNのスタッフが機械学習を行い、</span><span style="color: #181818;">種子の選択や耕作技能の改善などに関して農民がヒントを得られるように図ること、また、資材、栽培技能</span><span style="color: #181818;">などに関する情報を民主化して農民にいきわたらせることによって、農民を力を高めようとすること(エンパワーメント)が挙げられます.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;">FBNは、新規の会員農民を多く獲得して現在は会員が1万2千以上に上り、農業データアナリティクス事業の成功モデルとして見られています(上記の資料[3]、[4]を参照).</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;"><div style="color: black;"><span style="background-color: white; color: #181818; font-family: arial;">設立経緯についてですが、</span><b style="color: #181818;">FBNは、Amol Deshpande、Charles Baronによって2014年に設立されました</b><span style="background-color: white; color: #181818;">.資料</span><span style="color: #181818;">[5]に依りながら、この二人の経歴を簡単に述べます.</span></div><div style="color: black;"><span style="color: #181818;"><br /></span></div><div style="color: black;"><span style="color: #181818;">Deshpandeは、穀物メジャーのカーギルで働いてから、</span><span style="color: #181818;">ベンチャーキャピタル企業であるKleiner Perkins Caufield & Byers (KPCB)で働いた経験があります.</span></div><div style="color: black;"><span style="color: #181818;"><br /></span></div></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><span style="color: #181818;">一方</span></span><span style="color: #181818;">、</span><span style="color: #181818;">Baronは、大学卒業後</span><span style="color: #181818;">、</span><span style="color: #181818;">アメリカ合衆国下院歳出委員会、ワシントンのシンクタンク、親類の農場で働いており、その後、 </span><span style="color: #181818;">Googleのプログラムマネジャーに就いてから</span><span style="color: #181818;">、</span><span style="color: #181818;">ハーバード大学ビジネススクールで学びます.その在学中に、</span></span><span style="color: #181818; font-family: arial;">KPCBで農業投資に関する研究調査をおこない、農業部門の市場構造について理解を深める経験を得ます.</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">同大学を卒業してから、Baronは</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">シリコンバレーに行ってDeshpandeと出会います.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="color: #181818; font-family: arial;"><br /></span></div><div style="text-align: left;"><span style="background-color: white; color: #181818;"><span style="font-family: arial;">Baronは、上記[2]のYoutube動画で、FBNの紹介を語っていた人物です.</span></span><span style="color: #181818; font-family: arial;">以下は、Baronへのインタビュー記事です.</span></div><div style="text-align: left;"><span style="color: #181818;"><span style="font-family: arial;">[6] </span></span><span style="color: #181818; font-family: arial;">Successful Farming</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">「Q&A:Charles Baron, FBN Co-Founder」、</span><span style="color: #181818; font-family: arial;">2019年12月17日記事.</span></div><div style="text-align: left;"><div><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.agriculture.com/news/business/q-a-charles-baron-fbn-co-founder">https://www.agriculture.com/news/business/q-a-charles-baron-fbn-co-founder</a></span></div></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span><span><span style="color: #181818;">DeshpandeとBaronは、農業データ分析の問題に関わる農業分野の専門家</span></span><span style="color: #181818;">、</span><span style="color: #181818;">農業者と親交がありました.二人は、米国農民が直面する</span></span><span style="color: #181818;">農業データ利用の問題が深刻で、その解決に資するようなデータアナリティクス事業には市場ニーズがあることに気づき、</span><span style="color: #181818;">FBNの事業を構想するようになります.</span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;"><br /></span></span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial;"><span style="color: #181818;">次の記事では、二人がとらえた、米国農民が直面する問題点について紹介します.</span></span></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-29177559015599496592020-11-22T11:23:00.141-08:002020-11-27T17:35:45.710-08:00日本農業の将来に関する倫理<div style="text-align: justify;"> 香川大学に赴任してから、毎年、農学部で「応用生物科学領域の倫理」という授業を分担で担当しています。毎年度、この授業科目では2回の講義を担当しています。</div><div style="text-align: justify;"> 先日は2020年度におけるその1回目の講義で、「農林水産業分野の倫理」について語ることになりました。(年明けに2回目で、国際協力分野での倫理の問題を語る予定です)。</div><div style="text-align: justify;"> ただし、農林水産業の倫理とするとあまりに対象広いので、農業分野の倫理の問題に対象を絞り込ませてもらって講義を行いました。</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"> 農業分野の倫理を論じている文献については、正直私はあまり詳しくありません。しかし、<a href="http://a-rafe.org/28/2/135" target="_blank">昨年度の地域農林経済学会特別賞を受賞していた下記の著作</a>については、地域農林経済学会の理事会で詳しく説明を受けていたため、以前から特に関心を持っていました。今回の講義の準備にあたってこれを詳しく読ませてもらいました。</div><div style="text-align: justify;">[1] <a href="http://www.showado-kyoto.jp/book/b353278.html" target="_blank">秋津元輝氏・佐藤洋一郎氏・竹之内裕文氏編著『農と食の新しい倫理』昭和堂、2018年.</a></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> また、私は以前からSDGsに関心があったので、SDGsから農業に関する倫理をどうとらえるかという観点も今回の講義に盛り込みたいと考えていました。以下の特集記事は、農業とSDGsの関係について、事例を盛り込み詳しく論じてくれているので、大変参考になりました。</div><div style="text-align: justify;">[2] <a href="http://www.showado-kyoto.jp/book/b471483.html" target="_blank">『農業と経済』2019年9月号(vol.85 No.8) 特集「SDGs(持続可能な開発目標)時代の農業・農村、食品産業」</a></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 以上の2冊はどちらも昭和堂から出ています。これらに依拠させてもらいつつ、講義を組み立てました。その講義の流れを簡単に説明します。</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"><b>1.農業の近代化の意義と問題点、コスト</b></div><div style="text-align: justify;"> 今回の講義では、まず、農業の近代化、産業化は、食料と労働力の安価な供給に貢献する一方で、農村コミュニティの解体、循環型農業の衰退、環境・生態系の持続性の阻害、健康被害、化石燃料の大量消費、農業生産・農産物流通のエネルギー効率の悪化などのコストを伴うことを述べました。 以上の点に関する議論は、上掲[1]、[2]に含まれる以下の章、記事を特に参考にしました。</div><div style="text-align: justify;">・秋津元輝氏「農と食をつなぐ倫理と実践:考えと行動のための指針」、上掲[1]の第5章、pp. 115-144.</div><div style="text-align: justify;">・竹之内裕文氏「農と食を結びなおす:産業社会における農と食の倫理」、上掲[1]の第10章、pp. 251-283.</div><div style="text-align: justify;">・池上甲一氏「農林水産業からSDGsをどう読むか」、上掲[2]、pp. 6-19.</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"> 農業技術の進歩が農業就業者の絶対的減少をもたらすことは、日本の農業経済学の代表的なテキストである、<a href="https://www.iwanami.co.jp/book/b485274.html" target="_blank">荏開津典生氏・鈴木宣弘氏『農業経済学(第5版)』(岩波書店、2020年)</a>でも詳しく述べられています。近年顕著になった日本の農村コミュニティの解体は、その延長で生じたとも考えられます。</div><div style="text-align: justify;"> 他方で、日本での農業就業者の急激な減少は、農業の交易条件の悪化からもかなり影響を受けて引き起こされているとも考えられます。この見方は、以下の記事で論じられています。</div><div style="text-align: justify;">・山崎亮一氏「農業構造と生産力の担い手像」『農業と経済』2020年3月臨時増刊号「食料・農業・農村基本計画の真価を問う」、pp. 44-51.</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 農業の近代化に並行して、農業生産資材企業や、食品流通企業、食品加工企業が川上、川下から農業生産者をぐるっと取り巻く産業構造も作り上げられました。こうした企業がマーケットパワーを行使して、農業の交易条件悪化につながる価格条件、市場環境の形成を促しているとも見れます。こうした点を重視すれば、農業生産資材企業や、食品流通企業、食品加工企業に対しては、農業の持続可能性に対する責任が備わっていると考えられます。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>2.農業の近代化の帰着に関する倫理と行動</b></div><div style="text-align: justify;"> こうした農業の近代化、産業化に伴う問題点、コストが大きいと思われるならば、「その問題を悪化させてはいけない」「それらを是正しなければならない」という倫理が人々に芽生えるはずで、その倫理が確固としたものになれば、市民や企業の間に、問題悪化を食い止める行動、是正する行動が広がる可能性が高まると考えられます。こうした行動に取り組む事例が、最近、消費者団体や、SDGsへの関心が高い食品産業の企業などによって、続々と挙がっています。今回の講義ではそうした取り組み事例を以下に絞り込んで説明しました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>2.1 京都生協による「産直さくらこめたまご」の応援金制度、人口減少が著しく進んだ集落の維持・再生支援体制について</b></div><div style="text-align: justify;"> 私の講義中で、上記の京都生協の取り組み内容を、以下の記事に依拠して説明しました。</div><div style="text-align: justify;">・福永晋介氏「食、農、地域の持続可能な発展のために:京都生協のとりくみ」、上掲[2]、pp. 78-84.</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 「産直さくらこめたまご」の応援金制度は、卵1個につき組合員が1円の「応援金」を提供して、飼料米・鶏卵生産での循環型農業を支援しようとするものです。この詳細については、以下のプレゼン資料が大変参考になりました。</div><div style="text-align: justify;"> <a href="https://www.maff.go.jp/kinki/kikaku/nouchi/jyoho/pdf/06_sakura_kome_t.pdf" target="_blank">京都生活協同組合「京都生協のさくらこめたまごについて考えるー企業についての「CSR」と「消費者」にとっての「倫理的購買」―」</a></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>2.2 (株)伊藤園と、カルビーグループのSDGsに関わる取り組みについて</b></div><div style="text-align: justify;"> 今回の講義で、伊藤園、カルビーの取り組み内容を、以下の記事に依拠して説明しました。</div><div style="text-align: justify;">・笹谷秀光氏「産地を支え付加価値をつける:食品関連企業のSDGs」、上掲[2]、pp. 70-77.</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"><b> SDGsで挙がる17の目標のうちの2番目は「飢餓をゼロに」ですが、この目標に関わるSDGsの具体的なターゲットには、「女性家族農業など小規模生産者の所得倍増」、「持続可能な食料生産システムの確保と強靭な農業の実践」が含まれています。</b></div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"> 伊藤園の場合、茶葉生産地の衰退傾向に危機感を持ち、 大規模茶園化と機械化農業の支援、茶葉の全量買い上げ契約を農家と結ぶ、などの取り組みを進めました。伊藤園HPでの説明は以下の通りです。<a href="https://www.itoen.co.jp/csr/cultivate/prosperity/index.html" target="_blank">伊藤園「産地と伊藤園の共栄」</a>、<a href="https://www.itoen.co.jp/csr/cultivate/concept/index.html" target="_blank">「茶産地育成事業とは」</a></div><div style="text-align: justify;"> また、カルビーの場合、馬鈴しょの生産者の栽培技術向上や、労働負担の軽減に向けた支援の強化に取り組んでいます。カルビーHPでの説明は以下の通りです。</div><div style="text-align: justify;"><a href="https://www.calbee.co.jp/csr/value/agriculture.php">カルビー「農業の持続可能性向上」</a>、<a href="https://www.calbee.co.jp/csr/materiality/">「カルビーグループのマテリアリティ」</a></div><div style="text-align: justify;"> こうした取り組みが、日本の家族農業経営の衰退を食い止めながら、日本農業の持続性を高めていこうする取り組みでもあるため、上記のSDGsのターゲットに該当してくるわけです。</div><div style="text-align: justify;"><b> 近代化にまい進してきたにも関わらず日本農業が行き詰まり、そこに危機感を持った消費者団体、食品企業が農業再生に向けて支援強化に動き出していて、それがSDGsと親和性がかなり高い</b>ことが以上の事例よりうかがえます。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>3.SDGsブームにまつわる注意点</b></div><div style="text-align: justify;"> 上記のようなSDGsに関わる取り組みが純粋に「農業をこれ以上衰退させてはいけない」という倫理感に基づく面も確かにあると思います。</div><div style="text-align: justify;"> その一方で、うがった見方をしますと、以前から多くの企業は<b>CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)</b>に関する取り組みをPRして自らの企業イメージの改善を図ってきましたし、それを流行りのSDGsに合ったものに組み替えて取り組んでいる企業も一部には見られるのではないかという気もしています。私は、これがただの邪推で終わってほしいと考えていますが、どうしても企業の動機についてややすっきりしない面が残るように見えてくるかもしれません。難しい問題ですが、その点をどうとらえるかについて以下の記事が解説を試みています。</div><div style="text-align: justify;">・ 辻村英之氏(2019)「SDGs時代の食品産業:アグリビジネスにとってのCSRのあり方」、上掲[2]、pp. 20-29.</div><div style="text-align: justify;"> </div><div style="text-align: justify;"> 2000年代にCSRがブームになった時、環境問題に熱心であることを装った「<b>グリーンウォッシュ</b>」が散見され問題視されたそうです。今回の私の講義では、うわべだけのSDGsが今回のSDGsブームの中でも起こらないかについて注意が必要になることを述べました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> ※企業が他企業との取引関係上おこなう投資について関係特殊性、取引特殊性が強く備わると、その投資が過少になりやすく、その過少性への対処として企業間では垂直的関係が発展しやすくなることが、企業の境界の理論(Williamson、Hartなどに代表されます)で論じられています。上記の3事例のうち伊藤園、カルビーでは農家との垂直的関係の発展に進んでいますが、これは、これらの企業と農家の間では投資の関係特殊性、取引特殊性が顕著に備わっていたためかもしれません。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>4.講義のしめくくり</b></div><div style="text-align: justify;"> 今回の私の講義の終わりでは、農業の近代化の軌道修正を図ろうとする「農業のSDGs」に向けた取り組みは始まって間もないため、今後、社会でそれがどのように広まるか、真に農業の持続可能性を高めるものになるかに注視が必要であることを述べました。また、「 より多くの市民が「農業の近代化の問題点、コストの是正を図るべき」といった倫理を持ちながら、農業の持続可能性を高める行動に関心を持ち、そこに加われることを期待したい」と学生に訴えて、講義を締めくくりました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>講義を終えてみて</b></div><div style="text-align: justify;"> 受講学生の反応はまあまあではないかと思います。趣旨に賛同する学生の割合は高かったですが、農業の近代化のコスト、問題が現状のように大きくなったことについて「仕方がない」と率直な意見を述べる受講生も見られました。</div><div style="text-align: justify;"> 私自身、農業のSDGsに向けた取り組みが日本に広まって真に根付くかどうかについて半信半疑でもあります。ですが、このまま日本農業が座して死ぬを待つことになってほしくありませんので、まず目の前にいる若い学生に上記のような趣旨で訴えてみたいと考えました。自分自身を振り返ると、自分は農業に関する倫理やSDGsについて普段からの意識、心がけがかなり欠けていたと反省することが多く、もっと積極的に何かに取り組む必要があると痛感しました。</div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-11649065407739012752020-11-12T05:58:00.036-08:002020-11-17T11:24:53.524-08:002020年度後半の研究室3年生向けゼミ<div style="text-align: left;"> 本年度後期に私の研究室所属学生は、3年生4名と、4年生3名です。大学院生はおりません。<br /> 本年度はコロナ禍のため一つの部屋に集まって研究指導、ゼミを開くにも厳しい制約がかかりました。私にとって対面の教育は、これまでのところ、3年生のゼミ、4年生の卒論指導だけになりました。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"> 本年度の3年生向けのゼミでは、まず、農業経済の基本知識を深めてもらえるように、</div><div style="text-align: left;">河合明宣先生、堀内久太郎先生編著『アグリビジネスと日本農業』、放送大学教材、2014年</div><div style="text-align: left;">をテキストにして輪読をおこないました。</div><div style="text-align: left;"> 4年ほど前に購入してゼミのテキストとして使うのは2回目になりますが、日本農業の立ち位置について、食品産業、農産物流通、食料自給率、里山保全、持続可能性、資源・環境問題など様々な話題に触れながら解説・啓発してくれていて、二度目で読んでいても飽きないと感じます。河合先生とは私の学生時代に先生の集中講義を受講させていただいたご縁があります。</div><div style="text-align: left;"> この度、3年生4名には担当を割り当てて毎週レジュメを作って発表してもらい、その内容について私がコメント、解説する形で理解を深めてもらえるように試みました。学生には、テキストの内容、主張が新鮮に受け止められていたようです。農学部ですが文系科目も勉強したいという学生がうちの研究室に集まっていますので、密度の濃い農業経済の知識が求められていると感じました。</div><div style="text-align: left;"> </div><div style="text-align: left;"> 先日この輪読が終わりましたので、今後の3年生向けゼミでは、スマート農業技術の概要と、統計データ解析(計量経済学)入門を私から解説しつつ、学生に私の専門分野について少しずつ興味を持ってもらえるようにと期待しているところです。</div><div style="text-align: left;"> ゼミでのスマート農業技術の教材としては、本年度の第1クォーターで私は香川大学全学共通科目として「スマート農業の可能性を考える」というタイトルのオンライン授業を行い、教材を作成していましたので、それを使います。この講義の受講者数は180数名で、私のこれまでの授業担当の中では最多でした。学生の関心の高さに驚くとともに、緊張して教材の作成に励み、香川大学Moodleに教材のアップロードを重ねました。</div><div style="text-align: left;"> 一方、ゼミでの統計データ解析(計量経済学)入門の教材については、昨年度、香川大学公開講座で、「統計データ解析について学びながら農業・農村のこれからを考える」というタイトルの講座を開き、教材を作成していましたので、それを使います。この教材では、<a href="https://www.e-stat.go.jp/gis">地図で見る統計(統計GIS)</a>を活用して地理的データをマッピングする方法を詳しく解説しています。その他、Excelでの統計処理、<a href="https://www.lightstone.co.jp/stata/index.html">Stata</a>利用の基礎について触れています。</div><div style="text-align: left;"> 3年生4名には、以上の知識を土台にして、年明けより徐々に卒論のテーマ選びに入ってもらえればと考えています。</div><div style="text-align: left;"><br /></div><div style="text-align: left;"><br /></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-24363239606762185852020-10-29T09:35:00.006-07:002020-11-17T11:23:53.284-08:00スマート農業を進める際、情報処理のニーズと能力が合っているか?<div style="text-align: justify;"> スマート農業技術を導入する際、多くの場合では、センサ機器から大量のデータが生成されるので、そのデータの活用をいかに進めるかが生産管理上の課題に浮かび上がりやすくなります。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 経営組織論の文献を調べますと<b>、企業などの経営組織にとって、情報処理に対するニーズと情報処理能力を適合させる必要がある</b>ことが、ガルブレイス(1973)で論じられています。<b>当然、それらがうまく適合しないことによって、経営組織の業績や成果に対して負の影響が及びやすくなります</b>。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 私は、このブログで、施設園芸でのスマート農業の導入事例について紹介する記事をいくつか書きました。このうち、「<a href="https://mutolabagkagawa.blogspot.com/2020/10/blog-post_18.html">施設イチゴ栽培での環境モニタリングシステムの導入事例</a>」では、環境モニタリングシステムを採用した農業者が、栽培環境データに関する分析のニーズ、処理能力を上手く適合させていたことを確かめています。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> これに対して、「<a href="https://mutolabagkagawa.blogspot.com/2020/10/blog-post_67.html">施設花卉栽培での環境モニタリングシステムの導入事例</a>」では、環境モニタリングシステムを採用した農業者が、温度管理に関するデータ分析ではニーズ、処理能力を適合させられたものの、電照管理やCO2、飽差の管理に関するデータ分析ではそれらを適合させられない状況に置かれてしまいました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> これらの事例より<b>、栽培環境データ分析に関する農業者のニーズと処理能力は、管理対象項目(温度,電照、CO2,飽差等)や、統計解析に関する彼らの学習経験や、既往の栽培管理方針等に左右されてそれぞれ決まり、両者が適合しない状況が生じ得る</b>ことが確かめられます。また、後者の事例のように<b>その不適合によって環境モニタリングシステムの利用効果に対する農業者の評価が低められる場合がある</b>ことが示唆されます。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> こうした分析結果より、施設園芸での環境モニタリングシステムの普及を図る改良普及機関にとっては、生産者への聞き取りを通じて、<b>管理対象項目別に、様々なデータ分析に関するニーズ、処理能力を生産者がどのように備えているか、両者をいかに適合させられるかについて注意深く検討する必要がある</b>と考えられます。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;">引用文献:</div><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: inherit; text-indent: -10pt;">ジョン・ケネス・ガルブレイス</span><span lang="EN-US" style="font-family: inherit; text-indent: -10pt;">(1973)</span><span style="font-family: inherit; text-indent: -10pt;">『横断組織の設計』(梅津祐良訳)ダイヤモンド社.</span></div><div style="text-align: justify;"><br /></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-32492931685584540932020-10-29T08:41:00.009-07:002020-10-29T11:54:30.708-07:00水田センサの費用対効果の試算例<p><span style="text-align: justify;"> この記事では<b>稲作での水田センサ導入の費用対効果の試算例</b>を示します。</span></p><div style="text-align: left;"><b style="text-align: justify;"> 稲作での水田センサの導入効果に関する実証事例</b></div><div style="text-align: left;"><span style="text-align: justify;"> 稲作での水田センサの導入効果に関する実証事例がいくつも挙がっています。以下ではそのうち三つを挙げます.</span></div><p><span style="text-align: justify;"> ・</span><span style="text-align: justify;">石丸知道氏「水田センサを活用した飽水管理技と水管理の省力化」(</span>南石晃明編著『稲作スマート農業の実践と次世代経営の展望』(養賢堂、2019年、pp. 154-156)</p><p style="text-align: justify;"> ここでは、飽水管理区(土壌表面の足跡に水が残る程度の水を保つことを目指す水田)で水田センサを用いて水管理したとき、田面下1cmの水位を長期間維持できたことなどが示されています。</p><p style="text-align: justify;"> 他方で、農林水産省による水田センサ導入実証プロジェクトがH27年からH28年にかけて多くの地域を対象に行われていて、その結果をまとめたのが以下です。</p><p style="text-align: justify;"> <a href="https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/181120.html">農林水産省「水田センサ×技術普及組織による農業ICT導入実証プロジェクト」</a></p><p style="text-align: justify;"> このうち香川県の隣県の事例を二つ取り上げて紹介します。</p><p style="text-align: justify;"> ・岡山県での水田センサの利用効果の実証結果が以下に掲載されています。</p><p style="text-align: justify;"> <a href="https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/h_event/attach/pdf/sensor-33.pdf">農林水産省「岡山県:大型稲作経営体における水田センサ活用による水管理の省力効果及び導入課題の検討」</a></p><p style="text-align: justify;"> この事例では、「センサからの情報に基づき、必要なときだけ圃場に出向いて水管理を行った」→「圃場に出向く頻度が3~4割減少」→「時間のゆとりができ、作業効率が向上」という効果が得られたことが報告されています。この実証では、水位の計測、データの通知機能のみを備え、自動給水機能は備えていない水田センサが使われました。</p><p style="text-align: justify;"> ・愛媛県今治市で行われた水田センサ導入効果の実証結果が以下で報告されています。</p><p style="text-align: justify;"> <a href="https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/h_event/attach/pdf/sensor-35.pdf">農林水産省「愛媛県:水田センサによる水稲水管理作業の有効性確認と良食味米生産の実証」</a><br /></p><div style="text-align: justify;"> この事例で取り組まれた内容は、行われた順番に、以下の通りです。</div><div style="text-align: justify;">①良食味米を生産する農家と水稲生産法人のほ場に水田センサを設置</div><div style="text-align: justify;">②普及指導員が端末で水田センサ情報(水位等)確認し、農家に情報提供をおこなう</div><div style="text-align: justify;">③それに従って農家、法人がほ場で水管理作業する</div><p style="text-align: justify;"> これにより得られた成果としては、水田センサを導入した実証農家は、対照群に比べて米の収量が高く、品質が良くなった(476kg/10a、等級1等、タンパク含量6.8%)、ということです。</p><p style="text-align: justify;"> <b>以上の事例で、水田センサの導入効果は、水管理労働時間の削減と、収量・品質の改善に表れていました。これに基づいて水田センサ導入の費用対効果に関する試算を以下で進めます。</b></p><p><b style="text-align: justify;"> 試算の大まかな方針</b><span style="text-align: justify;">:農業者が水田センサを新たに導入して使用するときの費用増加を算出し、水田センサ導入に伴う労働費の節約額を見積もって、収量・品質の改善によって米の販売収入がどれだけ増えれば、水田センサ導入にともなう費用増加全体を回収できるようになるのかを考えます。</span></p><div style="text-align: justify;"><b> 設定条件:</b></div><div style="text-align: justify;"><b> 水田センサの機能</b>としては、以下の2通りを考えます。</div><div style="text-align: justify;"><b>①水位計測+水位データの収集・送信+通知のみの場合</b></div><div style="text-align: justify;"><b>②水位計測+水位データの収集・送信+通知+自動給水の場合</b></div><div style="text-align: justify;">・価格・料金の仮定は、最安クラスである、㈱ぶらんこ製センサ「ファーモ」を参考にします。「ファーモ」の紹介は以下のページをご参照ください。</div><div style="text-align: justify;"><a href="https://farmo.info/paddy.php">farmo「ファーモで始める、スマート水稲農業」(2020年10月27日閲覧)</a></div><p style="text-align: justify;"> ①の水田センサの本体価格は1台20千円で、②の水田センサは、1台55千円と仮定します。いずれでも通信費は、アカウント作成費(初期費)が16.5千円必要で、月別の料金は無料であると仮定します(以上の通信費はセンサ利用台数に関係なし)。</p><p style="text-align: justify;">・生産者の水稲作付面積は5haと仮定します。</p><p style="text-align: justify;">・水田センサは作付面積10aあたり1台設置され、使用年数、償却年数は共に4年と仮定します。</p><div style="text-align: justify;"><b> ①の水田センサ採用の費用対効果の試算例:</b></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> ①の場合、機材価格/4年+通信初期費*10a/(4年*作付面積500a)より算出すると、センサ機材費+使用費は、1年・10aあたり5.08千円です(小数点第3位以下四捨五入)。</div><p style="text-align: justify;"> 農水省の生産費統計によると、10aあたり水管理労働時間は6.3時間(H22年)でした。上で紹介した事例には3割程度の削減という事例がありましたので、以下では、①のタイプの水田センサ導入で水管理労働が2時間削減されると仮定します。</p><p style="text-align: justify;"> 農業労賃評価は、900円~1200円/時であると仮定します。上記の水管理労働の削減効果を評価すると、1.8~2.4千円/10aとなります。</p><p style="text-align: justify;"> よって、この場合、水管理の改善→収量・食味の改善によって、米の販売収入増加が少なくとも2.68~3.28千円/10a だけ期待できるならば(5.08千円と、1.8~2.4千円の差額)、水田センサ導入は費用対効果で見合う可能性が高いと考えられます。香川県の10aあたり米販売収入はここ数年9万円ほどです。よってこの販売収入増額分は、香川県の10aあたり米販売収入の3~4%分の増加に相当します。</p><p style="text-align: justify;"><b> ②の水田センサ採用の費用対効果の試算例:</b></p><p style="text-align: justify;"> ②の場合、機材価格/4年+通信初期費*10a/(4年*作付面積500a)より算出すると、センサ機材費+使用費は、1年・10aあたり13.83千円です(小数点第3位以下四捨五入)。</p><p style="text-align: justify;"> ②では自動給水機能が付くので、水管理労働の削減効果は①よりも高くなるはずです。以下では、②のセンサ導入で、水管理労働が10aあたり4時間削減されると仮定します。</p><p style="text-align: justify;"> 労賃評価が900円~1200円/時であると、以上の労働時間削減効果は、3.6~4.8千円/10aと評価されます。</p><p style="text-align: justify;"> 以上より、水管理の改善によって米の販売収入増加が少なくとも9.03~10.23千円/10aだけ期待できるならば(13.83千円と、3.6~4.8千円の差額) 、水田センサ導入が費用対効果で見合う可能性が高いと考えられます。前述の香川県の10aあたり米販売収入との比で考えると、その10~12%分の増額に相当します。よって、①のセンサに比べて、投資採算確保のためのハードルはかなり高くなると考えられます。</p><p style="text-align: justify;"><b> 終わりに:</b></p><p style="text-align: justify;"><b> </b>本記事と同様に、<i>水稲のスマート農業技術の導入効果の試算例を示した</i>記事「<a href="https://mutolabagkagawa.blogspot.com/2020/10/it.html">ITコンバインの費用対効果の試算例</a>」と、今回の記事をまとめて、改良普及・営農指導機関が検討すべき課題を挙げさせていただきたいと思います。</p><p style="text-align: justify;"> ITコンバインの使用によって、圃場別の収量や食味等に関するデータが得られ、また、水田センサの使用によって、時期・圃場ごとの水位(水温)のデータが得られます。こうしたデータをどう活用して、肥培管理、水管理の改善効果を高めていくかが、これらの機器の活用では重要な課題になるでしょう。</p><p style="text-align: justify;"> こうしたデータの活用は従来、農業者にとっては経験が少なく、不慣れになりがちです。得られたデータを農家間や圃場間で比較する、集団で検討するといった取り組みを強化して、データからの農家の学習、気づきを促す体制があってしかるべきと思われます。こうした取り組みを通じて、優れた生産者の栽培技能を他の生産者が参考にしやすくなるでしょう。</p><p style="text-align: justify;"> 先進事例の取り組み状況を紹介するなどしながら、営農指導機関がこうしたデータ検討の場をサポートすることも今後求められてくると思われます。</p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-7120553970987661282020-10-29T08:40:00.004-07:002020-11-20T00:07:56.811-08:00ITコンバインの費用対効果の試算例<p style="text-align: justify;"> この記事では、<b>ITコンバインの費用対効果の試算例</b>を示させていただきたいと思います。</p><div style="text-align: justify;"><b> 稲作でのITコンバインの導入効果について実証事例<br /></b> 稲作でのITコンバインの導入効果について実証事例がいくつも出ています。三つほど挙げます。</div><p style="text-align: justify;"> ・森拓也氏・稲毛田優氏「茨城県におけるITコンバインの活用事例」(南石晃明氏編著『稲作スマート農業の実践と次世代経営の展望』養賢堂、2019年、pp. 131-133)</p><p style="text-align: justify;"> ここでは、茨城県つくば市の農業法人の圃場別収量からITコンバインの使用効果を実証しようとしています。農業法人が耕作する圃場別にコシヒカリの収量を、Y社製のITコンバインを導入する前後それぞれで算出します。収量を導入前後で比較すると、圃場別の収量は、もともとあったばらつきが大きく減って、高位平準化されるようになったという結果が述べられています。</p><p style="text-align: justify;"> ・石丸知道氏「ITコンバインを活用した圃場別収量マップの作成と収量レベルに対応した増収技術」(南石晃明氏編著『稲作スマート農業の実践と次世代経営の展望』養賢堂、2019年、pp. 148-151)</p><p style="text-align: justify;"> ここでは、福岡県でのITコンバインの実証圃場で採られた収量改善策の例を示しています。ITコンバインの導入に伴う収量増加の効果は、ITコンバインによる収量・食味の診断と、肥培管理の改善をセットで導入することで実現可能になることが指摘されています。</p><div class="separator" style="clear: both; text-align: justify;"><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> ・農林水産省による㈱平塚ライスセンター(茨城県八千代町)を対象にした事例</div><div class="separator" style="clear: both;"> <a href="https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/jirei/PDF/2019jirei_body_Part6.pdf">農林水産省「水田作:ほ場管理システムと食味・収量コンバインの導入による 作業の効率化と水稲の収量・品質の向上」『農業新技術活用事例』</a>に掲載.</div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> 上の資料の説明を引用します。㈱平塚ライスセンターは、水稲52ha・麦25ha・大豆2haを作付け、従業員は6名(うちパート3名)で、H28年からクボタKSASを導入しました。</div><div class="separator" style="clear: both;"> このときKSASの導入により得られた効果は、以下のようになります。</div><div class="separator" style="clear: both;">①品種別に色分けしたマップにより作付状況が一目瞭然で確認可能。作業履歴(年内・過去)の振り返りが容易となった。</div><div class="separator" style="clear: both;">②収量・水分・タンパク質含有率を圃場毎に数値で確認可能。圃場によって異なる品質を、タンパク質含有率による仕分け乾燥で差別化→ 自信を持って「おいしいお米」をお客様に届けることが可能となった。</div><div class="separator" style="clear: both;">③蓄積された過去からの圃場毎の収量推移データから、土壌改良の効果を確認。圃場毎の施肥設計を見直し、収量・食味の改善が可能となった→目標としている収量・食味を達成した圃場増加が増加。平均収量は30kg/10a アップ。</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> 以下では、<b>こうした事例調査の結果を参考にして、ITコンバインを用いた栽培管理改善に関する費用対効果の試算を進めたいと思います。</b></div><div class="separator" style="clear: both;"> </div><div class="separator" style="clear: both;"><b> 試算の大まかな方針</b>:</div><div class="separator" style="clear: both;"> 農業者が「土壌分析をせず従来型コンバインを使い続ける場合」から、「土壌分析による施肥設計と、ITコンバインによる収量・食味診断を活用する場合」へ切り替えるものとします。この移行に伴う費用増加を算出し、収量・品質の改善によって米の販売収入がどれだけ増えれば、その費用を回収できるようになるのかを考えます。</div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"><b> 土壌分析の費用について</b>:</div><div class="separator" style="clear: both;"> JA全農では、肥料設計まで含む土壌分析料金が、1検体あたり約1万円(税込)です。そこで以下では肥料設計まで含む土壌分析料金が、1検体で1万円と仮定します。</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;">①土壌分析の頻度は、毎年から数年おきまで様々に考えられます。</div><div class="separator" style="clear: both;">②一般に、水田1枚の面積は様々で、また、作付水田のうち土壌分析の対象となる水田の面積割合も様々です。このため、1回の土壌分析での作付面積1haあたり検体数も変わります。</div><div class="separator" style="clear: both;"> </div><div class="separator" style="clear: both;"> そこで①、②の条件設定を変えながら、「1年・作付面積10aあたり土壌分析費用」を算出すると、以下のようになります。</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"><table align="center" cellpadding="0" cellspacing="0" class="tr-caption-container" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><tbody><tr><td style="text-align: center;"><img border="0" data-original-height="422" data-original-width="1583" height="132" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhoSnozG3T46J6iAtX6EY2GGYhwghJL4VFw5HxSdB3Y-kXmvpHU_cokru691kftNAu6hIRDXL_pkrU0kgpKPtQBAyT6D3V_JD4h8lyrZXh_P1BP4zCZlexRLbNJLjHJvwjnzdON5ntdxok/w499-h132/%25E5%259B%25B31.jpg" style="margin-left: auto; margin-right: auto;" width="499" /></td></tr><tr><td class="tr-caption" style="text-align: center;"><span style="text-align: justify;">表1.1年・作付面積10aあたり土壌分析費用</span><br /></td></tr></tbody></table><div style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhoSnozG3T46J6iAtX6EY2GGYhwghJL4VFw5HxSdB3Y-kXmvpHU_cokru691kftNAu6hIRDXL_pkrU0kgpKPtQBAyT6D3V_JD4h8lyrZXh_P1BP4zCZlexRLbNJLjHJvwjnzdON5ntdxok/s1583/%25E5%259B%25B31.jpg"><span style="font-family: arial;"></span></a></div></div><div class="separator" style="clear: both;"><b><br /></b></div><div class="separator" style="clear: both;"><b> 従来型コンバインからITコンバインに切り替えることによる機械償却費の変化について:</b></div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> 次に、従来型コンバインからITコンバインに切り替えることによる機械償却費の増額を、作付面積10aあたりで算出します。</div><div class="separator" style="clear: both;"> 設定条件:</div><div class="separator" style="clear: both;">①単純化のため、ITコンバインの価格が、従来型コンバインよりも50万円高い場合と、100万円高い場合の二通りを考えます。</div><div class="separator" style="clear: both;">②償却年数は両タイプのコンバインで共通で、4年、6年、8年の三通りを想定します。</div><div class="separator" style="clear: both;">③償却費は定額法で計算します。</div><div class="separator" style="clear: both;">④生産者の作付面積は、3haから20haまで5パターンを想定します。</div><div class="separator" style="clear: both;">⑤従来型コンバインからITコンバインへの切り替えに伴う10aあたり機械償却費の増額=価格差×10/(償却年数×作付面積a)、が成り立つとします。</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"> まず①の価格差に応じてケース1、2に分けて、それから②、④の条件を変えて、切り替えに伴う10aあたり機械償却費の増額を求めたのが以下の二つの表です。</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> <b>ケース1</b>:ITコンバインの価格が従来型コンバインよりも50万円高い場合</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><table align="center" cellpadding="0" cellspacing="0" class="tr-caption-container" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><tbody><tr><td style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjkSt1aMUAGKxzHDfK2x3nQ36TwMixl6oBntm-WV8KpZvVFbYvfY9QEApLXeC01GZYLy9MUfdiBLuSpAfvNM3m-Zzrtj1ihmI2IOcthlZL7qED1mE14zOBMJ2-qxLppyaWTfcysJWZwj_w/s1533/%25E5%259B%25B32.png" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><img border="0" data-original-height="551" data-original-width="1533" height="178" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjkSt1aMUAGKxzHDfK2x3nQ36TwMixl6oBntm-WV8KpZvVFbYvfY9QEApLXeC01GZYLy9MUfdiBLuSpAfvNM3m-Zzrtj1ihmI2IOcthlZL7qED1mE14zOBMJ2-qxLppyaWTfcysJWZwj_w/w495-h178/%25E5%259B%25B32.png" width="495" /></a></td></tr><tr><td class="tr-caption" style="text-align: center;">表2.ITコンバイン(価格差50万円)への切替えに伴う10aあたり機械償却費の増額<br /></td></tr></tbody></table><br /><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> </div><div class="separator" style="clear: both;"><b>ケース2</b>:ITコンバインの価格が従来型コンバインよりも100万円高い場合</div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><table align="center" cellpadding="0" cellspacing="0" class="tr-caption-container" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><tbody><tr><td style="text-align: center;"><img border="0" data-original-height="548" data-original-width="1632" height="166" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiculIkJ0H8lbVgu6sO-UVN_SFG7ubvLhbrS_ZNRhzF1TFXp1hAwd6HDMZtr2OdDeFetPY7k8qdK3-EmIywgR1kUosgQC56t_UOoUBUimdN9yusrfoO1JKLT3sD5M8HUtmOt_4j2VNtdiA/w496-h166/%25E5%259B%25B33.png" style="margin-left: auto; margin-right: auto;" width="496" /></td></tr><tr><td class="tr-caption" style="text-align: center;">表3.ITコンバイン(価格差100万円)への切替えに伴う10aあたり減価償却費の増額<br /></td></tr></tbody></table><div style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiculIkJ0H8lbVgu6sO-UVN_SFG7ubvLhbrS_ZNRhzF1TFXp1hAwd6HDMZtr2OdDeFetPY7k8qdK3-EmIywgR1kUosgQC56t_UOoUBUimdN9yusrfoO1JKLT3sD5M8HUtmOt_4j2VNtdiA/s1632/%25E5%259B%25B33.png"><b><span style="font-family: arial;"></span></b></a></div><br /><div class="separator" style="clear: both;"><b> </b></div><div class="separator" style="clear: both;"><b>費用対効果の検討例</b></div><div class="separator" style="clear: both;"><div class="separator" style="clear: both;"> 農業者の置かれた状況は様々ですが、とりあえず2つの条件を設けて費用対効果の試算を試みます。 </div><div class="separator" style="clear: both;"><b><br /></b></div><div class="separator" style="clear: both;"><b> 検討例1</b>: 作付面積が10ha、水田1枚が平均20aで、その1枚ごとに土壌検査を2年に1回行うほか、従来型コンバインよりも100万円高いITコンバインを購入して6年間使用する場合。</div><div class="separator" style="clear: both;"> この場合、表1、表3より、<span style="text-align: left;">1年・作付面積10aあたり土壌分析費用と機械償却費増額の和は、2.5+1.67=4.17(千円)となります。</span></div><div class="separator" style="clear: both;"> 肥料(肥培管理)費用の変化も考えられますが、さしあたって大きな変化はないと仮定します。</div><div class="separator" style="clear: both;"> すると、上の計算より、ITコンバイン導入で米の販売収入が10aあたり4.17千円以上増えると期待されるならば、費用対効果でITコンバイン導入が見合う可能性が高いと考えられます。</div><div class="separator" style="clear: both;"> 近年における香川県の米生産での10aあたり販売収入は9万円前後です。それに当てはめると、ITコンバインの導入による収量・食味の改善で少なくとも5%程度の販売収入増加が見込める必要があることになります。</div><div class="separator" style="clear: both;"> これは農業者にとってややハードルが高いと感じられるでしょうか。</div><div class="separator" style="clear: both;"><br /></div><div class="separator" style="clear: both;"> <b>検討例2</b>: 作付面積が5ha、水田1枚が平均10aで、その1枚ごとに土壌検査を3年に1回実施するほか、従来型コンバインよりも100万円高いITコンバインを購入し、8年間使用する場合。</div><div class="separator" style="clear: both;"> この場合、表1、表3より、1年・作付面積10aあたり土壌分析費用と機械償却費増額の和は、3.33+2.5=5.83(千円)となります。</div><div class="separator" style="clear: both;"> 上と同様に、 肥料(肥培管理)費用は大きな変化はないと仮定します。</div><div class="separator" style="clear: both;"> すると、ITコンバイン導入で米の販売収入が10aあたり5.83千円程度増えると期待されるならば、費用対効果でITコンバイン導入が見合う可能性が高いと考えられます。 </div><div class="separator" style="clear: both;"> 前述した香川県の米生産10aあたり販売収入に当てはめると、ITコンバインの導入による収量・食味の改善により、販売収入増加が少なくとも6~7%ほど期待される必要があると考えられます。前の例1よりもハードルが若干上がると考えられます。</div></div></div></div></div></div></div></div></div></div></div></div></div></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-90576315571992565132020-10-29T08:01:00.002-07:002020-10-29T09:44:21.015-07:00施設イチゴ栽培での環境モニタリングシステムの導入事例<div style="text-align: justify;"> 私は、2019年から2020年にかけて、香川県内のある施設イチゴ栽培を対象に、環境モニタリングシステムの導入によってそこではどのような効果が得られているかについて、当時研究室所属の4年生、山口遥可さんと共に調査しました。本記事では、その調査結果を要約して説明させていただきます。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 調査対象とするA氏は、香川県東讃岐地区内で施設面積40aほどのイチゴ栽培を手掛けています。A氏は、行政機関の補助を利用して2018年からB社製の環境モニタリングシステムを全ハウスに導入しました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> A氏は2015年頃に香川県農業改良普及員から、イチゴの平均単収でオランダは日本を大きく上回り、それにはオランダ農業でICT活用が進んでいることが関わることを教えられます。当時、A氏は施設園芸でのICT活用にあまり知識がなく、ハウス内の環境をよく計測していなかったこともあり、自分のイチゴ栽培でのICT活用に興味を持つようになったそうです。</div><div style="text-align: justify;"> そして、イチゴ施設栽培で単収を高めるためには、CO2濃度、温度、飽差(注1)などを総合的に管理し、イチゴの光合成に適した栽培環境を作り出すことが必要であることを指導員や専門書から学び、自らもそれを実現しようとします。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> そこで<b>A氏が新たに導入した栽培管理方針の概要</b>は以下のようになります。</div><div style="text-align: justify;"> ①(香川県は温暖なこともあり)暖房機を導入せず、谷換気のみでハウス内の温度を管理する。冬場の谷喚気の設定温度は11時から14時半までは26℃に、それ以外の時間は29℃に設定する。春先から秋にかけては外気温が高くなるので、逆にハウス内の設定温度をこれらよりいくらか下げて栽培環境を整える。</div><div style="text-align: justify;"> ②ハウスでCO2施用機を使用してCO2濃度を管理する。ハウス内のCO2濃度が大気中のそれ(約400ppm)を切ることが絶対ないように、余裕をもって時間帯ごとにCO2濃度をかなり高めの目標値に維持する。</div><div style="text-align: justify;"> ③ハウス内の飽差が急激に変化しないように谷喚気でのハウスの開閉度合いを細かく調整する(注2)。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> A氏は、後述するように2018年にB社製の環境モニタリングシステムを導入してからも上記の管理方針を続けて実行しています。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 環境モニタリングシステムの導入以前は、温度等の変化の現れ方において、A氏のハウス間では細かな違いがあったそうです。この違いを把握するためには、その測定データの履歴が必要になります。</div><div style="text-align: justify;"> 環境モニタリングシステムを導入する以前、A氏は、CO2濃度や温度などが設定値から乖離しているかを確認するために1日あたり1時間程度の見回りを行っていましたが、今後の経営規模拡大を視野に入れるときその負担をさらに大きく増やすことは避けたかったようです。</div><div style="text-align: justify;"> 環境モニタリングシステムが未導入のままでは、見回り時間を抑えつつハウスの特徴や差異を把握して栽培管理精密化を進めることは難しくなると考えて、A氏は、2018年にB社製の環境モニタリングシステムの導入を決めます。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"><b>環境モニタリングシステムの導入によって得られた効果:</b></div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;"> 環境モニタリングシステムの導入以降、A氏は、ハウス内で従来から使用する温度センサの表示温度が、B社製の環境モニタリングシステムが示す温度と2~3℃ずれていることを知ります。これは、従来から使用する温度センサはハウス内の高い位置に設置され、直射日光の影響を受けやすいためであることにA氏は気づきます。A氏は、新たにその乖離分を補正して温度調整を行うことによって、上記の①における温度管理の精度を引き上げることが可能になりました。</div><div style="text-align: justify;"> また、導入以降にA氏は、環境モニタリングシステムによるCO2濃度の測定値が、上記の②での設定値を下回っていないかをスマートフォンで随時確認できるようになり、前者が後者を大きく下回っていれば設定濃度を直ちに引き上げることで、②におけるCO2管理の精度を高めることが可能になります。</div><div style="text-align: justify;"> この他にも、換気後に飽差が緩やかに変化しているかをスマートフォンで随時確認できるので、A氏は飽差を従来よりも制御しやすくなったそうです。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><table align="center" cellpadding="0" cellspacing="0" class="tr-caption-container" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><tbody><tr><td style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhn2IWF8nGvFgX6ktBGZ650sYlB-o0PjdNbRxKrgFA6RHVJtjbvXJH0B4r1BPHMJBB75iX2P6s84K6pIS2Ut6yb3gbUH-2kX9mR3nLzaDXLNGY2V7E0DkvHJdWwZbom0REysuOTU_-MMVQ/s715/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F2%2540.png" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><img border="0" data-original-height="410" data-original-width="715" height="229" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhn2IWF8nGvFgX6ktBGZ650sYlB-o0PjdNbRxKrgFA6RHVJtjbvXJH0B4r1BPHMJBB75iX2P6s84K6pIS2Ut6yb3gbUH-2kX9mR3nLzaDXLNGY2V7E0DkvHJdWwZbom0REysuOTU_-MMVQ/w400-h229/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F2%2540.png" width="400" /></a></td></tr><tr><td class="tr-caption" style="text-align: center;">環境モニタリングシステムによる計測データのスマフォ画面上での表示<br /></td></tr></tbody></table><br /><div style="text-align: justify;"> こうして、環境モニタリングシステムの導入以後、A氏にとって、上記の①~③の栽培管理に関する不安が減り、ハウス見回り等の作業時間を削減することも可能になりました。A氏は、こうした効果を高く評価して、自身の環境モニタリングシステムの導入効果に高い満足感を示していました。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;">(注1)「飽差」は、斉藤(2015)に従うと、飽和水蒸気量と絶対湿度の差であり、「空気中にあとどれくらい水蒸気が入る余地があるか」を意味します。植物が気孔を開いて蒸散やCO2吸収を行うには、飽差が3~6 g/m3である環境が適すると言われています。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;">(注2)ハウス内での急激な飽差の変化は、結露の発生を通じて作物に病害を引き起こしやすいですが、それを避けるためのハウス換気方法が斉藤(2015)で説明されています。</div><div style="text-align: justify;"><br /></div><div style="text-align: justify;">引用文献:</div><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">斉藤</span><span style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">章</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">(2015)</span><span style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">『ハウスの環境制御ガイドブック』農山漁村文化協会.</span></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-63567386285887830702020-10-29T07:58:00.003-07:002020-10-29T10:08:56.695-07:00施設花卉栽培での環境モニタリングシステムの導入事例<p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"><span style="text-indent: 10.5pt;"><span face="メイリオ" style="text-indent: 0px;"> 2019年から2020年にかけて私は、香川県内のある施設花卉経営を対象にして環境モニタリングシステムの導入効果について、当時研究室所属の4年生、山口耕生さん</span></span></span><span style="font-family: arial;"><span style="text-indent: 10.5pt;"><span face="メイリオ" style="text-indent: 0px;">と調査しました。本記事では、その調査結果の概要を説明させていただきます。</span></span></span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"><span style="text-indent: 10.5pt;"> 調査対象は、香川県東讃地区内に住む</span><span lang="EN-US" style="text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="text-indent: 10.5pt;">氏の花卉</span><span style="text-indent: 10.5pt;">経営です。C氏は切り花を比較的広い面積で生産しており</span></span><span style="font-family: arial; mso-font-kerning: 12.0pt; text-indent: 10.5pt;">、ハウス・品種ごとに作業進行の行うタイミングや基準など栽培管理方針を細かく定め、それを厳しく守ってきました。以前からのC氏による温度、C</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">O2</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">,飽差の管理方針に関しては、以下の特徴がみられます。</span></p><p style="text-align: justify;"></p><ol><li><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">暖房機と天窓で温度管理する。設定温度は、時期、品種、生育段階ごとに予め細かく決めてある。</span></li><li>ハウス<span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">で</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">CO2</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">施用機を使用し、その</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">CO2</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">濃度の設定値は常時</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">400</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">~</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">500ppm</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">にする。</span></li><li><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">飽差(注1)は、一定の範囲内に厳しくコントロールせずに、たまにその値を確認するにとどめる。</span></li></ol><p></p><p style="text-align: justify;"><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社の営業担当者から勧められて、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">2018</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">年に</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社製の環境モニタリングシステムを</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">試験的に導入しました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> 環境モニタリングシステムの導入</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">以前、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏のハウスでは日射の当たり方や、暖房機や天窓の稼働による温度変化の仕方においてハウス間で微妙な差異があったそうです。しかし、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏にとっては、</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">そうした差異の生じ方を詳しく突き止めることは難しくなっていました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> また、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏のハウスでは暖房機、電照器具が故障するときがあり、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は故障発生から数時間経ってそれに気づくことが多かったそうです。気づいてから適切に栽培管理の修正対応を進めるためには、故障の発生時点や、発生以降にハウス内の環境が目標からどのようにずれていたか等を知ることが重要になります。環境モニタリングシステムを</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">導入しないままではそれが非常に難しくなっていました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社製の環境モニタリングシステムの場合、</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">ハウス内の環境測定値をEXCEL</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">ファイルに記録し、その推移グラフを利用者の端末画面に表示することが可能です。</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">システムの</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">導入以降、この機能を使って</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、ハウス、暖房機の機種ごとに、設定温度からの実際の温度のずれ方を把握できるようになり、暖房機の温度設定や天窓のセンサ感度を調整することによって温度管理の精度を引き上げることが可能になったそうです。これより過剰な暖房稼働を避けられるため、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は暖房費を抑制することができました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> この他、導入以降に</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、暖房機や電照器具の故障発生時に、温度や光量がいつからどのように目標からずれていたかを把握することが可能になります。故障に気づいてからいかに対処すべきか、例えば栽培を中止すべきか等を判断しやすくなる効果も得られました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> また、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社製の環境モニタリングシステム</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">ではスマートフォン等の端末機器で</span><span style="font-family: arial; mso-font-kerning: 12.0pt; text-indent: 10.5pt;">ハウス内の状況を確認できるので、</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">ハウスの見回り頻度を抑えられる効果も得られました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> こうして</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、前述のハウス管理、器具類の故障時の対応に関する課題の解決がひとまず可能に至ったそうです</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> ところで、C氏が栽培を手掛けている切り花品目の市場を見ると、</span><span style="font-family: arial; text-indent: 14px;">消費者の購買行動上の習慣のために、年間のうち</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">特定の時期に限って急に需要が大きくなる傾向があ</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">りました。</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">以前から、ハウスごとに栽培環境に応じて電照期間を調整して、この需要ピークの直前に一気に切り花を多く出荷できたらという期待を持っていました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社製の環境モニタリングシステム</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">は「ハウス内環境のデータ分析に最適」等の謳い文句で販売されていました。C氏は、この特徴</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">を活かしながら</span><span style="font-family: arial; mso-font-kerning: 12.0pt; text-indent: 10.5pt;">、開花時期の予測や、開花時期の調整のために再電照の開始時期を何時に設定すべきかを把握するための分析を行えたらと期待していたようです。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> ところが、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏にとっては、環境モニタリングシステム</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">で作成された栽培履歴データの</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">から必要なデータを抽出し、それを適切に組合わせて</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">栽培学的な検討や解釈を進める手法については不慣れだったようです。</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏はD社製の環境モニタリングシステムの</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">導入後もなお、望んでいた、「</span><span style="font-family: arial; text-indent: 14px;">開花時期の調整のために再電照の開始時期を何時に設定すべきかを把握するための分析」は行えないままになってしまいました。上記のようなデータ分析</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">を進めるための分析能力が不足する状況に置かれたままになったことがこの大きな要因でした。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> 記事「<a href="https://mutolabagkagawa.blogspot.com/2020/10/blog-post_18.html">施設イチゴ栽培での環境モニタリングシステムの導入事例</a>」</span><span style="font-family: arial;"><span style="text-align: left;">では、環境モニタリングシステムを導入して</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">CO2</span><span style="text-align: left;">,飽差の管理精密化を、イチゴの光合成促進に活かそうとした農業者の事例を紹介しました。対照的に、</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">C</span><span style="text-align: left;">氏には、</span></span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社製の環境モニタリングシステムを導入した後でも、</span><span style="font-family: arial; text-align: left;">そうした意思がなかったそうです</span><span style="font-family: arial; text-align: left;">。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"><span lang="EN-US" style="text-align: left;"> CO2管理</span><span style="text-align: left;">に関しては、</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">CO2</span><span style="text-align: left;">施用を積極的に増やすと、切り花の開花が遅くなり、これまで遵守してきた栽培管理</span><span style="text-align: left;">のサイクルが崩れて困ると考えられたからだそうです。</span></span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"><span style="text-align: left;"> 一方、飽差管理に関しては、</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">C</span><span style="text-align: left;">氏のハウスは近代的な鉄骨構造を持ち、設定温度の近くで温度を安定させるため天窓を自動で開閉させる機能が備わっていました。飽差調整を精密化させるためには、飽差の緩やかな変化を促すような天窓開閉方法の導入も必要になります。しかし、温度と飽差を同時に理想的な形で調整できるような天窓開閉方法は、一般に非常に見出しにくいです</span><span style="text-align: left;">。</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">C</span><span style="text-align: left;">氏は、温度調整に向けた天窓開閉を優先させ、飽差調整に向けた天窓開閉を放棄することにしたそうです。</span></span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"><span style="text-align: left;"> 以上の事情により、</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">C</span><span style="text-align: left;">氏は、</span><span lang="EN-US" style="text-align: left;">CO2</span><span style="text-align: left;">濃度、飽差の管理については、光合成促進にそれらを活かす意思はなく、それらの値がおおよそ想定の範囲内にあるかを環境モニタリングシステムで</span><span style="text-align: left;">たまに確認する、という対応にとどまっています。</span></span></p><p style="text-align: justify;"><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社製の環境モニタリングシステム</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">の導入に関する全体的評価として、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、初めに述べた温度管理の精密化を促す役割を評価して「それを持っていて損ではない」と述べています。しかし、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、上記のように電照管理に関するデータ分析の面では分析能力が不足し、環境</span><span style="font-family: arial;"><span style="text-align: left;">モニタリングシステムに備わる</span></span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-align: left;">CO2</span><span style="font-family: arial; text-align: left;">濃度、飽差の測定機能を十分に使えない状況に置かれていました。これらについては</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">C氏も懸念や不満があるようで、D社製の環境モニタリングシステムの導入効果に関する全体的な評価をやや下げているようでした。</span></p><p style="text-align: justify;"><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> C</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">氏は、こうした状況に懸念を感じており、データ分析能力の強化に向けたサービスや指導を、</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">D</span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">社や改良普及・営農指導機関が提供してくれることを望んでいました。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> </span><span style="text-indent: -10pt;">(注1)「飽差」は、斉藤(2015)に従うと、飽和水蒸気量と絶対湿度の差であり、「空気中にあとどれくらい水蒸気が入る余地があるか」を意味します。植物が気孔を開いて蒸散やCO2吸収を行うには、飽差が3~6 g/m3である環境が適すると言われています。</span></p><p style="text-align: justify;"><span style="text-indent: -10pt;">引用文献:</span><span style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">斉藤</span><span style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">章</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">(2015)</span><span style="font-family: arial; text-indent: -10pt;">『ハウスの環境制御ガイドブック』農山漁村文化協会.</span></p>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-7121341439124574650.post-6171171151600760772020-10-29T07:54:00.008-07:002022-01-10T18:43:35.677-08:00スマート農業の導入・普及に関する農業者のとらえ方(高松市でのアンケート調査結果より)<p><span><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;"> 本記事では、私の研究室で分析して得られた、<b>高松市におけるスマート農業の導入・普及に関するアンケート調査の結果</b>について説明させていただきます。</span></span></p><p><b style="font-family: arial; font-size: large; text-indent: 10.5pt;">第1節 はじめに</b></p><p><span style="font-family: arial;"><span style="text-indent: 10.5pt;"> 農業技術イノベーションの普及を説明する代表的な理論としては、例えば、</span><span lang="EN-US" style="text-indent: 10.5pt;">E.M. </span><span style="text-indent: 10.5pt;">ロジャース『イノベーションの普及』</span><span lang="EN-US" style="text-indent: 10.5pt;">(2003)</span><span style="text-indent: 10.5pt;">が挙げられます。この理論に従えば、イノベーションが人々に普及していく過程で、人々はイノベーションに対して以下の段階を経ながら態度を形成するとされます。</span></span></p><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">①知識:イノベーションの存在に気付く</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">②説得:そのイノベーションに対する良い印象や悪い印象を抱く</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">③決定:そのイノベーションを採用するかどうかを決める</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">④導入:採用を決定した場合に実際に導入して使ってみる</span></div><div style="text-align: left;"><span style="font-family: arial; text-indent: 10.5pt;">⑤確認:事後的にそのイノベーションを採用して良かったか、採用しないという決定がよかったのかどうかを振り返って確認する。</span></div><p class="MsoNormal" style="mso-char-indent-count: 1.0; text-indent: 10.5pt;"><span style="font-family: arial;">以上の段階の進行に対しては、採用者がどのような情報源に接しているか、元々どのような革新性を備えているかが大きく影響しやすいことが、前掲のロジャース(2003)によって指摘されています。</span></p><p class="MsoNormal" style="mso-char-indent-count: 1.0; text-indent: 10.5pt;"><span style="font-family: arial;"><b>私の研究室では、スマート農業に関する高松市内農業者の検討・採用等の態度形成に関して、こうしたイノベーション普及理論を適用して実態把握をする必要があると考えて、その内容を盛り込みつつアンケート調査を実施することにしました</b>。</span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;"><b> </b>アンケート調査の進め方としては、</span><span style="font-family: arial;">高松市内の認定農業者</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial;">361</span><span style="font-family: arial;">名を対象とし、2</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial;">019</span><span style="font-family: arial;">年</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial;">11</span><span style="font-family: arial;">月にアンケート調査票を郵送し返送してもらいました。</span><span style="font-family: arial;">農業経営の概況、スマート農業技術の採用経験や認知、その情報源、今後の検討や採用の意向について尋ねています。有効</span><span style="font-family: arial;">回答は</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial;">91</span><span style="font-family: arial;">件(有効回答率</span><span lang="EN-US" style="font-family: arial;">25</span><span style="font-family: arial;">%)でした。</span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;"> 調査票作成、郵送にご協力いただいた高松市職員の皆様方、また、回答・返送にご協力いただいた市内の農業者の皆様方に感謝いたします。また、当時</span><span style="font-family: arial; text-indent: 14px;">研究室所属の大学院生であった加藤真也さんには、本調査の実施への参加・協力について感謝します。</span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;"> 以下では調査結果を簡潔にまとめて述べていきます。</span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial; font-size: medium;"><b>第2節 経営概況について</b></span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;">・まず回答者の年齢分布は高齢層に偏る傾向がみられています(表2-1)。</span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;">・回答者の販売額規模は</span><span style="font-family: arial;">1千万円未満に偏る傾向がみられています(表2-3)。</span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;">・回答者にとって「売上が最も多い部門」は米麦作から園芸作に全体的に散らばる傾向がありました(表2-4)</span><span style="font-family: arial;">。</span></p><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjOdCz-K2-ctaPd2PP3iZZsHa9eQrJlcFnSp8TYMj4KqxdedwQJBcTKnEANRKCklgrDIyp7FnvgMGtI6Us123jmMT5sewUjhdR5Unh6X34E8mqbwp6U0ZB9fziv7FJSZ3ZvUoeNN_apAHw/s1591/%25E9%25AB%2598%25E6%259D%25BE%25E5%25B8%2582%25E3%2581%25AB%25E3%2581%258A%25E3%2581%2591%25E3%2582%258B%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259E%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25BE%25B2%25E6%25A5%25AD%25E3%2581%25AE%25E5%25B0%258E%25E5%2585%25A5%25E6%2599%25AE%25E5%258F%258A%25E3%2581%25AB%25E9%2596%25A2%25E3%2581%2599%25E3%2582%258B%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B1%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25AA%25BF%25E6%259F%25BB%25E7%25B5%2590%25E6%259E%259C-02.jpg" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1591" data-original-width="1268" height="831" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjOdCz-K2-ctaPd2PP3iZZsHa9eQrJlcFnSp8TYMj4KqxdedwQJBcTKnEANRKCklgrDIyp7FnvgMGtI6Us123jmMT5sewUjhdR5Unh6X34E8mqbwp6U0ZB9fziv7FJSZ3ZvUoeNN_apAHw/w662-h831/%25E9%25AB%2598%25E6%259D%25BE%25E5%25B8%2582%25E3%2581%25AB%25E3%2581%258A%25E3%2581%2591%25E3%2582%258B%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259E%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25BE%25B2%25E6%25A5%25AD%25E3%2581%25AE%25E5%25B0%258E%25E5%2585%25A5%25E6%2599%25AE%25E5%258F%258A%25E3%2581%25AB%25E9%2596%25A2%25E3%2581%2599%25E3%2582%258B%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B1%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25AA%25BF%25E6%259F%25BB%25E7%25B5%2590%25E6%259E%259C-02.jpg" width="662" /></a></div><p></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;">・</span><span style="font-family: arial;">回答者に農業経営における課題を尋ねると、「省力化、軽労化」が最も強く重視され、次に「品質向上」「高付加価値化」「コスト削減」が続きました(図2-1)。</span></p><p class="MsoNormal"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi9Z3Mn1kTaco0YJiiDX3yOesbP3LSXa-9quwhnTdJx3YDVm8te7YskhWHgC5CfPtyld4KAj0FYHYy2AtDEEldXLsfa0o8a20Lka8kV5QGz17IgccyomI7qGXs8xCwJFYLSFqV2AyCSdDw/s1827/%25E9%25AB%2598%25E6%259D%25BE%25E5%25B8%2582%25E3%2581%25AB%25E3%2581%258A%25E3%2581%2591%25E3%2582%258B%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259E%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25BE%25B2%25E6%25A5%25AD%25E3%2581%25AE%25E5%25B0%258E%25E5%2585%25A5%25E6%2599%25AE%25E5%258F%258A%25E3%2581%25AB%25E9%2596%25A2%25E3%2581%2599%25E3%2582%258B%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B1%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25AA%25BF%25E6%259F%25BB%25E7%25B5%2590%25E6%259E%259C-03.jpg" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em; text-align: center;"><img border="0" data-original-height="1827" data-original-width="1354" height="887" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEi9Z3Mn1kTaco0YJiiDX3yOesbP3LSXa-9quwhnTdJx3YDVm8te7YskhWHgC5CfPtyld4KAj0FYHYy2AtDEEldXLsfa0o8a20Lka8kV5QGz17IgccyomI7qGXs8xCwJFYLSFqV2AyCSdDw/w656-h887/%25E9%25AB%2598%25E6%259D%25BE%25E5%25B8%2582%25E3%2581%25AB%25E3%2581%258A%25E3%2581%2591%25E3%2582%258B%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259E%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25BE%25B2%25E6%25A5%25AD%25E3%2581%25AE%25E5%25B0%258E%25E5%2585%25A5%25E6%2599%25AE%25E5%258F%258A%25E3%2581%25AB%25E9%2596%25A2%25E3%2581%2599%25E3%2582%258B%25E3%2582%25A2%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B1%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588%25E8%25AA%25BF%25E6%259F%25BB%25E7%25B5%2590%25E6%259E%259C-03.jpg" width="656" /></a><span style="font-family: arial;">・回答者の間での</span><span style="font-family: arial;">インターネット接続率と、</span><span style="font-family: arial;">スマフォ、パソコン等の端末利用率</span><span style="font-family: arial;">は</span><span style="font-family: arial;">一般の高齢世帯とほとんど変わらない高さになりました(表2-5、表2-6)。</span></p><span style="font-family: arial;"><p class="MsoNormal" style="text-align: justify;">・スマート農業技術が出回る以前からも、いくつかのICT手法が農業分野で少しずつ普及が進みつつありました。そうした従来からあるICT手法の実施状況について尋ねると、経理情報の管理や、市場情報の収集や、生産計画の作成ではすでにパソコンやインターネットの利用が比較的進んでいる傾向が伺えました(図2-2)。</p></span><p></p><p class="MsoNormal"></p><table align="center" cellpadding="0" cellspacing="0" class="tr-caption-container" style="float: left; margin-right: 1em; text-align: left;"><tbody><tr><td style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjOc6vcVIPeYSRUX2dEe69SX1SN-LGpAd7-GbIXigg-akAMXcD03wQb8szCJBc1s0f6cLfMlVXfA-T1A3gCJwztHTcYBiNZbnrJJiD-xCx5LAzZN2aMSZg5KVgMYeyECpkvoMCqq3HfDhg/s1811/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F3.png" style="margin-left: auto; margin-right: auto;"><img border="0" data-original-height="1383" data-original-width="1811" height="501" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjOc6vcVIPeYSRUX2dEe69SX1SN-LGpAd7-GbIXigg-akAMXcD03wQb8szCJBc1s0f6cLfMlVXfA-T1A3gCJwztHTcYBiNZbnrJJiD-xCx5LAzZN2aMSZg5KVgMYeyECpkvoMCqq3HfDhg/w657-h501/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F3.png" width="657" /></a></td></tr><tr><td class="tr-caption" style="text-align: center;"><br /></td></tr></tbody></table><span style="font-family: arial;"> </span><div><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・また、普段から重視している農業技術の情報源について尋ねると、県改良普及センターの指導、JAの営農指導、知人の農業者に最も大きく依存する傾向がみられました(図2-3)。</span></div><p></p><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjaukA_ZFuSk2VaYoW4xEUd_y6TeaEIAcFK5P0cJ2OfGcO2_9iHeaxis9MYovJdU3Du3__DCcJF-xvShtWmry8XC-BsIEg9OuTf46WEDHf1ivcWX3g76NOobrwvophFELxqZ9pEuy0vR-U/s1827/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F4.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1271" data-original-width="1827" height="459" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjaukA_ZFuSk2VaYoW4xEUd_y6TeaEIAcFK5P0cJ2OfGcO2_9iHeaxis9MYovJdU3Du3__DCcJF-xvShtWmry8XC-BsIEg9OuTf46WEDHf1ivcWX3g76NOobrwvophFELxqZ9pEuy0vR-U/w661-h459/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F4.png" width="661" /></a></div><br /><span style="font-family: arial;"><br /></span><p></p><p class="MsoNormal" style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial; font-size: medium;"><b>第3節 耕種農業での栽培管理の精密化に向けた新しい技術の採用</b></span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;"></span></p><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・耕種農業での栽培管理の精密化に向けたスマート農業技術が多く出回り始めています。本調査では、その主な種類を挙げて、それぞれについて生産者に関心、知識、採用経験の有無を尋ねました。その回答結果を図3-1に示しました。</span></div><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"> 水田作では水位計測による水管理(上から1番目)に最も関心が高く、園芸作では環境計測に基づく収量・適期予測(上から2番目,3番目)に最も関心が高いことがわかりました。</span></div><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"> 今回の調査で施設園芸を販売額1位の部門に挙げた16経営体のうち、環境計測・環境制御技術を採用済みの経営体は半数を占めていました。このことより、高松市内の施設園芸では既に</span><span style="font-family: arial;">環境計測または環境制御技術</span><span style="font-family: arial;">の採用が進みつつあることが伺えました。</span></div><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg7T6opgADAP5BzdY43bCjWyMoYHn6KPocSrNDwTVSLjZoEODfXHH0_6VDgSptptiV06vwztzDFtuVh-jd4p5XwZyyy0aFLM5giQCxqpwKAaAfBRpeZiEY4rnAzp8wlT4vZoWp19BZA0d8/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F5.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="2048" data-original-width="1726" height="828" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg7T6opgADAP5BzdY43bCjWyMoYHn6KPocSrNDwTVSLjZoEODfXHH0_6VDgSptptiV06vwztzDFtuVh-jd4p5XwZyyy0aFLM5giQCxqpwKAaAfBRpeZiEY4rnAzp8wlT4vZoWp19BZA0d8/w664-h828/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F5.png" width="664" /></a></div><p></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial;"> </span></p><p class="MsoNormal" style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・</span><span style="font-family: arial;">栽培管理の精密化に向けたスマート農業技術の情報源について尋ねた結果を、図3-2に示しました。</span><span style="font-family: arial;">生産者は普段は県改良普及センター、JAの営農指導を重視する傾向が強いことを上で述べましたが(前掲、図2-3を参照)、栽培管理の精密化に向けたスマート農業技術に関しては、メディア、メーカーが情報源としてより強い役割を果たしていることが伺えました。</span></p><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjHZXTjbduC_xj7Vum6-Hef50WODMmSAiNx0150NXpAA7DbhmuDK55IBd7mjYw2nFASuO8GhWqFd3-qc_dYQ4Poit4ONAOE78-hQEq24uimcnMtDwNRBSJLOR3THEE9u05M2zRWtO5VfA0/s1989/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F6.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1265" data-original-width="1989" height="422" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjHZXTjbduC_xj7Vum6-Hef50WODMmSAiNx0150NXpAA7DbhmuDK55IBd7mjYw2nFASuO8GhWqFd3-qc_dYQ4Poit4ONAOE78-hQEq24uimcnMtDwNRBSJLOR3THEE9u05M2zRWtO5VfA0/w663-h422/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F6.png" width="663" /></a></div><span style="font-family: arial;"><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial; text-align: justify;"><br /></span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial; text-align: justify;">・栽培管理の精密化に向けたスマート農業技術に対する今後の態度・姿勢について尋ねた結果を、図3-3に示します。上から4番目の「関心がある技術について詳しく検討したい」については、回答者の約7割が同意していました。</span><span style="text-align: justify;">栽培管理の精密化に向けたスマート農業</span><span style="text-align: justify;">技術の説明を要望する意向、その特徴や効果を検討する意向が比較的強いことが伺えます。</span></p></span><p></p><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjRNezvnaUuEoEgI5k1O-__P1ROgMWKN4sPcSPv7tkxt2WpEpkhl_wvWaTCT015YorrLkNiYbFitUo2Q_AVfYlKUgBAcRjoSzqbflatlp4AyXN08Qqo6k_1LRmNTk2GRruGshUyUS_-sxo/s2006/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F7.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1283" data-original-width="2006" height="443" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjRNezvnaUuEoEgI5k1O-__P1ROgMWKN4sPcSPv7tkxt2WpEpkhl_wvWaTCT015YorrLkNiYbFitUo2Q_AVfYlKUgBAcRjoSzqbflatlp4AyXN08Qqo6k_1LRmNTk2GRruGshUyUS_-sxo/w664-h443/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F7.png" width="664" /></a></div><br /><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial; font-size: medium;"><b>第4節 農作業の省力化・軽労化に向けた新しい技術の採用</b></span></p><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・農作業の省力化・軽労化に向けた新しいスマート農業技術も</span><span style="font-family: arial;">多く出回っています。その主なものを挙げて、それぞれについて関心、知識、採用経験の有無を尋ねた結果を、図4-1に示しました。<br /></span><span style="font-family: arial;"> ドローンを使った薬剤散布を採用している回答者が数名見られますが、それ以外の技術の採用例はほとんどなく、この分野のスマート農業技術はほとんど普及していないことがわかりました。</span><span style="font-family: arial;"> </span></div><div style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"> 回答者の間で関心が高い技術をみると、ドローンを使うもの(薬剤肥料散布用,生育診断)が1位と3位に挙がり、草刈り・除草用ロボットへの関心が2位に挙がり、水田での自動給水装置への関心が4位に挙がっていました。</span></div><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjKUjy_tDxEmh9c_1aJe9QFgg5sUH-syXSp8zot74yPJreUoo7OhS537gYOZXNaLgkpcq6pt1o4n4_wuJBhsteNEhgZqiawUkNJN83h_MoMEbv-Pb6AZdnAeuzBxSVhSCNTZa9Ru6c9Ry4/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F8.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="2048" data-original-width="1872" height="732" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjKUjy_tDxEmh9c_1aJe9QFgg5sUH-syXSp8zot74yPJreUoo7OhS537gYOZXNaLgkpcq6pt1o4n4_wuJBhsteNEhgZqiawUkNJN83h_MoMEbv-Pb6AZdnAeuzBxSVhSCNTZa9Ru6c9Ry4/w662-h732/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F8.png" width="662" /></a></div><br /><p class="MsoNormal" style="text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・</span><span style="font-family: arial;">農作業の省力化・軽労化に向けた新しいスマート農業</span><span style="font-family: arial;">技術に関する情報源を尋ねた結果を、図4-2に示します。回答者のおよそ半分がこの</span><span style="font-family: arial;">情報源として</span><span style="font-family: arial;">ネット、雑誌等の記事、パンフを挙げています。県やJAからの説明もメーカーからの説明と並んで比較的多く挙がっていました。</span></p><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiz4yZMPLrdmrEzYIrrUr23GTTsaZw7bAMKBbo1a5Alg_-ek5kjmX96FocTS4LdfI3Hlhqeme2R5pT7-Cazq0Kma-zefB_e9ZOGd_oXPCDmhLtdx9V2p_xT-K2rUt3UstofEWMUCQBFuz4/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F9.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1181" data-original-width="2048" height="385" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiz4yZMPLrdmrEzYIrrUr23GTTsaZw7bAMKBbo1a5Alg_-ek5kjmX96FocTS4LdfI3Hlhqeme2R5pT7-Cazq0Kma-zefB_e9ZOGd_oXPCDmhLtdx9V2p_xT-K2rUt3UstofEWMUCQBFuz4/w664-h385/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F9.png" width="664" /></a></div><span style="font-family: arial;"><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial; text-align: justify;"><br /></span></p><p class="MsoNormal"><span style="font-family: arial; text-align: justify;">・省力化、軽労化に向けたスマート農業技術</span><span style="font-family: arial; text-align: justify;">に対する今後の態度・姿勢について尋ねた結果を、図4-3に示します。</span><span style="font-family: arial; text-align: justify;">早急に導入したい意向は4割ほどにとどまり、「特徴や効果を詳しく検討したい」に同意する人が6割強にのぼっています。</span><span style="text-align: justify;">省力化、軽労化に向けたスマート農業技術について</span><span style="text-align: justify;">説明を受けることへの要望も、5割ほどと比較的高くなっていました。</span></p></span><p></p><p class="MsoNormal"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg5odhKIYIf0kOG0Wy7IMIul7LM5js4ZVBb-v9QgpLsNU_ELpH60gQWgVRbnMggjd2jpKdb1Ztnvv2p1i63J3GywSJ_9h-kf77WPN4VfYE80uAY8SGKI92cUD_Jofta-QNxkWsjjq1FmOg/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F10.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1185" data-original-width="2048" height="388" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg5odhKIYIf0kOG0Wy7IMIul7LM5js4ZVBb-v9QgpLsNU_ELpH60gQWgVRbnMggjd2jpKdb1Ztnvv2p1i63J3GywSJ_9h-kf77WPN4VfYE80uAY8SGKI92cUD_Jofta-QNxkWsjjq1FmOg/w670-h388/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F10.png" width="670" /></a></div><br /><span style="font-family: arial;"><p style="font-family: メイリオ;"><b style="font-family: arial;"><span style="font-size: medium;">第5節 農作業記録の「見える化」に向けた生産管理システムの採用</span></b></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・農作業記録の「見える化」に向けた生産管理システムの典型例を挙げて、それぞれについて関心、知識、採用経験の有無について尋ねた結果を、図5-1に示しました。典型例を4つ挙げたのですが、どの技術も</span><span style="font-family: arial;">採用経験がある回答者は見られませんでした。しかし、作業工程の記録・管理を生産管理用アプリを使って進めたり、それを自動記録したりすることについてはやや関心が高い傾向が伺えました。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEieVN5HO9fUYp9YeFw5Rfw4VB8x5fmAuczoJc5enWvrP9fUFCpgSfxiDOTIXrKQqrVwVtXFFz0gIv5tSiwpPfXVb8z6SDyJtP0LTHTOoTkrM8mR9GBhDPJt1fbrvEqjgrrZ9N_3RxHWUIc/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F11.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1075" data-original-width="2048" height="348" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEieVN5HO9fUYp9YeFw5Rfw4VB8x5fmAuczoJc5enWvrP9fUFCpgSfxiDOTIXrKQqrVwVtXFFz0gIv5tSiwpPfXVb8z6SDyJtP0LTHTOoTkrM8mR9GBhDPJt1fbrvEqjgrrZ9N_3RxHWUIc/w662-h348/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F11.png" width="662" /></a></div><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・</span><span style="font-family: arial;">農作業記録の「見える化」に向けた生産管理システムに関する</span><span style="font-family: arial;">情報源を尋ねた結果を、図5-2に示しました。この情報源としては、ネット、雑誌等の記事が大部分を占めていて、県やJAの指導機関、ベンダー企業を情報源とする人は少なくなりました。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhpI_BEeyweGI_ckUSJD-tXy0TPeyMLvPX9x2x2ng2vDqx6ORkBHOsFemG88xU3g4QWaaYZ9YZKd7XIIUenruaa1I1O6hrIXc3tzD3rafeU0t0W9kbRJqLQP9m0MOKHq8jRCosHfSseg0s/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F12.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1141" data-original-width="2048" height="373" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhpI_BEeyweGI_ckUSJD-tXy0TPeyMLvPX9x2x2ng2vDqx6ORkBHOsFemG88xU3g4QWaaYZ9YZKd7XIIUenruaa1I1O6hrIXc3tzD3rafeU0t0W9kbRJqLQP9m0MOKHq8jRCosHfSseg0s/w667-h373/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F12.png" width="667" /></a></div><span style="font-family: arial;"><br /></span><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・生産</span><span style="font-family: arial;">管理システム</span><span style="font-family: arial;">に対する今後の態度について尋ねた結果を、図5-3に示しました。生産管理システムの</span><span style="font-family: arial;">特徴や効果について指導機関に説明してもらうことを要望する回答、また、生産管理システムを自分の経営改善につなげたいという回答が、全体の5割程度に上っています。ただし、いずれでも、「ややそう思う」が「そう思う」を大きく上回っているので、これらの要望はあまり強くないと考えられます。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div style="text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgwr7kx7AOErpGHdCvzdZkvRqVnq5KkpkPUGINWBWbObpYBGnJv2opAJl-_Zo_0S3wrq7fn4BOwiovc7QVxUmzKJG1gKEOTrBz2p70Wh-eoY14xQjSxxg4mfA4O0IolJc6Nv-rGpl-35ZE/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F13.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1181" data-original-width="2048" height="385" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgwr7kx7AOErpGHdCvzdZkvRqVnq5KkpkPUGINWBWbObpYBGnJv2opAJl-_Zo_0S3wrq7fn4BOwiovc7QVxUmzKJG1gKEOTrBz2p70Wh-eoY14xQjSxxg4mfA4O0IolJc6Nv-rGpl-35ZE/w667-h385/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F13.png" width="667" /></a></div><span style="font-family: arial;"><br /></span><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・</span><span style="font-family: arial;">生産</span><span style="font-family: arial;">管理システム</span><span style="font-family: arial;">に対する否定的な見方の例をいくつか示して、それぞれの賛否について尋ねた結果を、図5-4に示します。生産</span><span style="font-family: arial;">管理システムで蓄えたデータを経営改善につなげられるかどうかを疑問に感じる意見、また、従来の紙媒体による記録でも支障を感じないという意見に、それぞれ回答者の3割程度が賛同していました。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgvnOY68LiKnXTi7Iw7Th_ff9sHgCLZCSivTDnikcHKXNo9QdYiEWDL5Qgr-29d2OBE98z_etwQz1ZWLbttWwwp1rRcGviswS5c1xmAsQ0o27Dsxxcbeq3tOvX9RdWtxe5zhCYtPWd3knY/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F14.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1340" data-original-width="2048" height="435" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgvnOY68LiKnXTi7Iw7Th_ff9sHgCLZCSivTDnikcHKXNo9QdYiEWDL5Qgr-29d2OBE98z_etwQz1ZWLbttWwwp1rRcGviswS5c1xmAsQ0o27Dsxxcbeq3tOvX9RdWtxe5zhCYtPWd3knY/w665-h435/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F14.png" width="665" /></a></div><br /><span style="font-family: arial;"><br /></span><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial; font-size: medium;"><b>第6節 人材育成における ICT利用について</b></span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・ </span><span style="font-family: arial;">ICT を活用した人材育成手法として典型的なものを5つ示して、それぞれに関する関心、知識、採用経験の有無について尋ねた結果を、図6-1に示します。①のように</span><span style="font-family: arial;">端末機器を使って技術やノウハウの記録を取るという手法について採用経験があるという回答が、10件を超えていました。また、この手法に関する関心が最も高い傾向が伺えました。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhejGxO-nikWd5AHQYv-zs2PpVIG9B0xcpYESugKKESvdVK3L6itubpqNO2CGUN0ujaCBDUK8iRjDhB1sCwKKCYb-BI3fTMfp0258w4FzlE5e8yX2wOgqRZrzwM5vuE883y8Os83yVBtUY/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F15.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1303" data-original-width="2048" height="417" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhejGxO-nikWd5AHQYv-zs2PpVIG9B0xcpYESugKKESvdVK3L6itubpqNO2CGUN0ujaCBDUK8iRjDhB1sCwKKCYb-BI3fTMfp0258w4FzlE5e8yX2wOgqRZrzwM5vuE883y8Os83yVBtUY/w656-h417/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F15.png" width="656" /></a></div><span style="font-family: arial;"><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・上記のようなICT を活用した人材育成手法に関する情報源について尋ねた結果を、図6-2に示します。この情報源としては、インターネット、雑誌等の記事が多くなり、県やJAの指導機関からの説明もやや多くなりました。</span></p></span><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgy0EWwUu2lvRvNMemDKXaXY4MCgF_1FXZDoPToPEn8-HdyzwsbPFZesNP462X3dp1Hw-iUaBsYwoketihK_TU8P8vOt6WPzu35IhKlMKt1SzGeTwUKIHPqh2LFmsfvffUtM9fS7yc68oQ/s2284/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F16.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1084" data-original-width="2284" height="310" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgy0EWwUu2lvRvNMemDKXaXY4MCgF_1FXZDoPToPEn8-HdyzwsbPFZesNP462X3dp1Hw-iUaBsYwoketihK_TU8P8vOt6WPzu35IhKlMKt1SzGeTwUKIHPqh2LFmsfvffUtM9fS7yc68oQ/w653-h310/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F16.png" width="653" /></a></div><br /><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・上記の</span><span style="font-family: arial;">ICT を活用した人材育成手法に対する今後の態度について尋ねた結果を、図6-3に示します。ICTを活用した新しい人材育成手法や特徴や効果に関する説明を要望する回答者、また、その特徴や効果について検討する意欲を持つ回答者はそれぞれ4割程度でした。第3~5節で見てきた技術に比べて、</span><span style="font-family: arial;">ICT を活用した人材育成手法に対する関心は</span><span style="font-family: arial;">低くなっていると言えます。これには調査対象に家族経営が多く、雇用が少ないことが影響していると考えられます</span><span style="font-family: arial;">。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh7TxcjjGd6aQBh-Rvzt4YfFFD-uqGStUNXQ3f4MFJARgTqO2p4LNyk_hZruJbrAFRud4KRMR5fssOrv5q3FFyj163_cW3mtrf5fKFpwtWsIocYZUcPwDg88432gZb5eoFuCvyUo35TIJM/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F18.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1066" data-original-width="2048" height="349" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEh7TxcjjGd6aQBh-Rvzt4YfFFD-uqGStUNXQ3f4MFJARgTqO2p4LNyk_hZruJbrAFRud4KRMR5fssOrv5q3FFyj163_cW3mtrf5fKFpwtWsIocYZUcPwDg88432gZb5eoFuCvyUo35TIJM/w668-h349/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F18.png" width="668" /></a></div><br /><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・ICT を活用した人材育成手法によって得られる効果の印象について尋ねた結果を、図6-4に示します。人材育成上の効果(技能が伝わりやすい、習得期間の短縮)については同意する割合が高いことが確認されています。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiNAwMC7gzlxULC4_exs2-dY2MHxSNq0o9o-PzzTOTE9ISJAsAdOpMNvClNVTdaLDHtebg7cD6UOfxy64NNyv8z3KOwd320WemIIRAu5xKHWSVC5NWQ3k5X4ahctLfGUn7pCRzT68C2Ng0/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F17.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1322" data-original-width="2048" height="433" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiNAwMC7gzlxULC4_exs2-dY2MHxSNq0o9o-PzzTOTE9ISJAsAdOpMNvClNVTdaLDHtebg7cD6UOfxy64NNyv8z3KOwd320WemIIRAu5xKHWSVC5NWQ3k5X4ahctLfGUn7pCRzT68C2Ng0/w669-h433/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F17.png" width="669" /></a></div><span style="font-family: arial;"><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></p></span><b style="font-family: arial; font-size: large;">第7節 スマート農業の将来像と普及施策について</b><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;">・スマート農業の将来像について尋ねた結果を、図7-1に示します。農業者の間で技術能力の格差が拡大することを懸念する見解と、農業に魅力を感じる若い人が増えるというプラスの影響に期待する見解(好意的な評価)とが、第1、2位で拮抗するという結果になりました。同時に、スマート農業に対して農業者自身も適応することが必要だという考えも、比較的多く見られました(第3位)。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjGcurDuvDpmupoyQOpjg12xSvKPufU4VT6TIbNIGLs-JZcKt8Pyh60rNAHsY2pwW8JCkkon8b3uG7kfN6d_phkLzImw1be6ttU0PVxxJlVATuKFcKWN2F-QzMCZ9MCMjtBvOs_nLEMJTc/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F19.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1080" data-original-width="2048" height="357" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjGcurDuvDpmupoyQOpjg12xSvKPufU4VT6TIbNIGLs-JZcKt8Pyh60rNAHsY2pwW8JCkkon8b3uG7kfN6d_phkLzImw1be6ttU0PVxxJlVATuKFcKWN2F-QzMCZ9MCMjtBvOs_nLEMJTc/w674-h357/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F19.png" width="674" /></a></div><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;"><br /></span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"> ・本調査では、スマート農業に関する施策への賛否についても尋ねています。ここでは、政府によるスマート農業推進を支持するかという点への賛否のほか、高知県のようにセンサ機器で収集したデータを活用した栽培管理指導を進めることへの賛否について尋ねました。高知県の指導システムについては、以下の資料が詳しいです。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;"><a href="https://www.nogyo.tosa.pref.kochi.lg.jp/download/?t=LD&id=6625&fid=42202">安芸農業振興センター「環境制御技術導入による安芸地域の施設園芸の活性化 -ナスでの取組成果を中心として-」</a><br /></span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ; text-align: justify;"><span style="font-family: arial;"> この資料に掲載されているPDCAサイクルの図を回答者に示しながら、センサ機器でのデータ収集→そのデータの分析→その分析結果に基づく栽培管理指導、という指導システムを香川県でも進めることに賛成するかを尋ねています。以上の</span><span style="font-family: arial;">二つの賛否に関する回答結果を、図7-2に示しました。この結果より、どちらについても賛成する回答が比較的多いことがわかりました。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg1OGP8IKHsOqOrKpbCiTbpgtXScsTuxPrU3Se3LhdB84UOGo3AShAGhPTNKOn68PM-tyWGvpvmkDXGd2e1tdjZ3ZwEAxxCR7NEEocxMM-Oi3X3Pqg0_AxxOOfkbKU6M-6J-MVr3q_fC2A/s2134/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F20.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="659" data-original-width="2134" height="205" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg1OGP8IKHsOqOrKpbCiTbpgtXScsTuxPrU3Se3LhdB84UOGo3AShAGhPTNKOn68PM-tyWGvpvmkDXGd2e1tdjZ3ZwEAxxCR7NEEocxMM-Oi3X3Pqg0_AxxOOfkbKU6M-6J-MVr3q_fC2A/w661-h205/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F20.png" width="661" /></a></div><p></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><br /></div><span style="font-family: arial;"><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;">・高松市内でもスマート農業技術に関する講習会、マッチングイベントがここ数年開かれてきました。この講習会、マッチングイベントについての不満点を尋ねて得られた結果を、図7-3に示します。イベントの周知・案内が少ないことへの不満、イベントで取り上げられる技術の種類が少ないことへの不満が比較的多く挙がりました。農業者とITベンダー、メーカーとのマッチングがこうした講習会、イベントの開催目標に掲げられていますが、その目標はよく達成されていないことが、開催者側の反省すべき点として浮き彫りなりました。</span></p></span><p></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg3wQyuxW5jtOO6oWEAU1rUoHkasR6AfHXl9gKHocYFD4BN9KQJa9rV6e7oASGXImrYgrNYVOb5O8ry94f8VETFWPzDHrhDGZObGOgm_CferQBomrL2fGmzKWw1oJKAUFGgiFY419Eh15o/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F22.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1122" data-original-width="2048" height="363" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg3wQyuxW5jtOO6oWEAU1rUoHkasR6AfHXl9gKHocYFD4BN9KQJa9rV6e7oASGXImrYgrNYVOb5O8ry94f8VETFWPzDHrhDGZObGOgm_CferQBomrL2fGmzKWw1oJKAUFGgiFY419Eh15o/w664-h363/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F22.png" width="664" /></a></div><br /><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"><span style="font-family: arial;">・今後の講習会(マッチングイベント)に対して要望したい点を挙げてもらった結果を、図7-4に示します。事前</span><span style="font-family: arial;">案内を強化すること、取り上げる技術の種類と事例紹介を充実させることが、今後の講習会(マッチングイベント)の準備では優先すべき課題になるかと思われます。また、スマート農業に関する入門的説明や、農業者の関心に応じたQ&Aでのガイダンスなども、今後必要な対策になると考えられます。</span></p><p class="MsoNormal" style="font-family: メイリオ;"></p><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjUY6nepkElOXCWHRYbMN49G_BwbuPaS09SYaIIVcHQDROxjO1W7xryibkJow4x08ShKVyl_IBWxWD-SwpV-PfcNt-imVTCXHDPccQ7VCPGizBEhquVMvaz4t3-VTIu5MprsYsXSgvT4x0/s2048/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F23.png" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="1482" data-original-width="2048" height="476" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjUY6nepkElOXCWHRYbMN49G_BwbuPaS09SYaIIVcHQDROxjO1W7xryibkJow4x08ShKVyl_IBWxWD-SwpV-PfcNt-imVTCXHDPccQ7VCPGizBEhquVMvaz4t3-VTIu5MprsYsXSgvT4x0/w656-h476/%25E7%2594%25BB%25E5%2583%258F23.png" width="656" /></a></div><br /><div><br /></div><div><br /></div></span></div>武藤幸雄http://www.blogger.com/profile/12362750811136956733noreply@blogger.com0