2021年1月28日木曜日

学生調査実習③:キウイフルーツ生産・流通のDX(Orchard & Technology様による)

 1月14日の講演内容に関する説明の続きです.

 1月14日の調査実習の後半では、Orchard & Technologyの末澤克彦さんから、キウイフルーツ生産・流通で日本が置かれた現状、そこをDX(デジタルトランスフォーメーション)でどのように改善しうるかについて、講演をいただきました.Orchard & Technologyという会社の概要については、そのHPをご覧いただければと思います.
末澤さんが代表取締役を務めている、キウイフルーツ生産・流通のコンサルティング等に係る会社です.

 前に紹介した以下の記事で、末澤さんがキウイの現状を述べていましたが、それについて今回はさらに詳しいお話を聞くことができました.
ITメディア「(前編)キウイの収穫量・時期、AIがピタリと当てます──日本の農業をデータで改革、ある農家の野望」2019年10月16日号
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/23/news001.html

 末澤さんのお話によると、近年キウイの国内消費量が大きく伸びる一方で、国産キウイ産地はその波に乗れず、NZ産が市場を席捲しています(春から秋にかけてNZ産が日本のキウイ市場の96~98%のシェア、2018年のNZ産キウイ輸入量は約10万トン).
 また、労働時間当たりキウイ生産量で見てNZは日本の約5倍、栽培面積当たりキウイ生産量で見てNZは日本の約2.7倍という格差がみられます.

 末澤さんは、NZがこうした優位な状況を確立した理由として以下を挙げられました.

 ①NZではキウイ栽培技術の標準化、客観化が進んでいる.対照的に日本では果樹の栽培技術の模範としては、他人が真似しにくいような高い難易度の技術がイメージされやすい.

 ②NZのキウイ生産ではコントラクター企業が広く展開している.そこでは高品質キウイ生産に向けたモニタリング、栽培管理の改善指導を行う企業も存在して、その指導サービスが普及している.対照的に日本は家族経営の枠内(他人をできるだけ雇わない)でキウイ生産を行う. 

 ③NZではキウイ栽培が適地で行われる.対照的に日本ではミカン栽培の不適地で消極的にキウイを栽培する. 

 ④NZではキウイの一元的マーケティングが進み(Zespriへの統一)、キウイのコモディティ化を防ぐガバナンスが確立している.対照的に日本では県単位、産地ごとに小規模ブランドが乱立して、産地がお互いに疲弊しかねない市場構造になっている.

 こうした状況を踏まえ、日本のキウイ生産・流通がNZにもっと対抗できるためには、選果情報等の管理や連携が必要で、そこでキウイ生産でのDX化が求められてくると、末澤さんは考えているそうです.

 末澤さんとしては、Orchard & Technologyの事業として、オリジナルの優良キウイ品種の栽培権利を農家に貸与して、それを用いる農家に対してはオンラインで栽培指導をおこなうことを構想されています.この指導は、下記の記事にありますように、機械学習を用いた「開花日、肥大、収量、品質、収穫時期」等に関する予測サービスや、栽培環境データの閲覧・分析サービスを農家に提供するという形をとるものです.このサービスシステムの構築では、キーウェアソリューションズの久保さんが大きく貢献されたそうです.

ITメディア「(後編)キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は」2019年10月16日号

 Orchard & Technologyとしては、農家の販売収入からロイヤリティを払ってもらって、事業を成立させたいとのことでした.すでにこの事業が動き出しているそうです.

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